雨の日の子猫
雨の日の夕方。
俺、白沢涼太は傘をさして住宅街を帰宅するところだった。
すると、公園で一人の女性が木の前で助けを求めていた。
「何なんだよ…」
「あの子を助けてください!」
「あ?」
木を見上げると、一番上の辺りで白い子猫が枝にしがみついてニャーニャー鳴いていた。
「あいつ、なんであんなところに…」
「お願いします! あの子を助けてください! 助けていただいた暁には、謝礼をいくらでも払います!」
「…や、やってやろうじゃねぇか」
ほとんど足を引っかける所のない木をよじ登っていく。
そしてついに、子猫のそばまで何とかたどり着いた。
「おい、こっち来い。今降ろしてやっから」
「ニャー…」
子猫は怯えて動けない様子だ。
「早く来いって。怖えーのは俺も同じだ。だから早くしろって!」
俺はそろそろと腕を伸ばした。
あと少しで届きそうだ。すると、
「あー!?」
子猫は地面にダイブした。
必死に腕を伸ばすも掴めず、子猫はそのまま地面に着地した。
下で女性が子猫を抱きかかえて頬擦りしている。
女性は俺のことなんてすっかり忘れて公園を出て行った。
それを見て俺は唖然とした。
「どうやって降りればいいんだよ…畜生…」