約束は守る
今回は、お留守番組の魔王様とキラキラ様のターンです。
~VIPルーム~
一人の男子学生が黙々と何かを書いたり、PCのキーボードを素早く打っていると、扉が開いた。その男子生徒は扉を見向きもせずに作業を続けた。
「おはよう、貫。相変わらず早いなぁ」
「お前は、珍しく早いな。文人」
黙々と作業していた男子生徒は、貫で。扉を開けたのは文人だった。貫は文人の挨拶を軽く受け流す。文人はそんな貫を横目にソファーに座った。
「まあね。蝶々誕生の日だしねぇ。でも意外だったな~、貫が迎えに行かないなんて」
「・・・。やらなきゃいけない仕事は山ほどあるからな」
「ふ~ん。なんだかわかんね~な。もっとご執心なのかと思ってた」
どこか挑発するような文人の口調に貫は、今日初めて視線を紙とPC画面から逸らし、ソファーで寛ぐ文人に移した。
「・・・。美波未海を選んだことは、何度も言うが・・・」
「はいはい。彼女の能力と俺らに対する考えでしょ?でもさ、あの子、大丈夫かな~。上花の派閥のどこにも入っていないらしいじゃん?いじめられちゃうかもよ」
「必要なら対処する。・・・まあ、ひとり、そんな状態をみたら黙ってないのがいるがな」
貫は、その人物を思い浮かべ、はぁ、とため息をつきながらペンを置いた。そんな貫を横目に文人はクスクスと小さく笑った。
「ああ、太一のこと?まあ、確かに、何故か、あいつ、すぐに未海嬢に懐いたし、かなりご執心だよな~。珍しいこともあるもんだな」
「まったくだ。少し目に余るな。まあ、もともとアイツの票は当てにしていなかったから、全員一致で蝶々が決まるなんて願ってもないことだったが・・・」
「なぁ、そこなんだけど、確かに、あの子、面白い子だったけど、よく桃矢まで納得したな?」
「ああ、そのことなら簡単だ」
太一のことでため息をついていた貫だが、桃矢のことに関してはさも当然のように文人にそう言い、手元に置いておいた2枚のプリントをソファーの方にひらりと飛ばした。
文人は、飛んできたプリントを床に落ちる前にキャッチすると、さっそく読んでみる。1枚目には、未海の過去の受賞歴が書かれていた。速読甲子園というものがあるらしく、そこで小学校・中学校とすべての部門で優勝している。2枚目は、思いっきり個人情報だが、未海の成績だった。学年末テストの総合順位は、廊下にいつも貼りだされるが、各教科ごとの順位は公開されないため文人は初めて、未海の成績を目にして驚いていた。
「世界史、満点一位?・・・え、お前は?」
「・・・99点。二位だ」
「うわ・・・しかも現国、同立一位!?・・・いや~。理数系はもっぱらダメダメだけど、確かにこの結果見たら、実力主義の桃矢も頷くかぁ」
貫は、しみじみとプリントを見つめる文人の傍らに立つと、先ほど用意したA4の用紙を手渡した。
「そうゆうことだ。彼女の才能は本物だ・・・で、お前は、これを貼ってこい」
「なにこれ・・え?まじで、こんなんですますの?」
「約束は守る」
「へーい」
そして、未海が目を覚ました頃、学園の昇降口の掲示板にA4の高級紙が張られた。
― 2年E組 美波 未海を本日付で聖花学園の蝶々と任命する。 極花一同 ―
次回から未海の波乱の学校生活が始まります。展開が遅くてすみません。