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聖花学園の蝶々  作者: 月宮蛍
出会い編
4/27

これは悪夢でしょうか

 自習の終わりを告げる先生がチャイムのなる30秒前に教室に入ってきました。みなさん、そわそわしています。もちろん、私も。先生の号令で礼をすると、一人の女生徒が全速力で教室外へ飛び出していきました。上花の女子のみなさん(私とアリア以外)は、入り口付近で待機中です。中・下花の女子の半分もいます。男子の皆さんと残りの中・下花の女子半分は、すみやかに第一食堂か第二食堂へ、向かいます。実際に見たことはないですが、十中八九ほかのクラスもこのような状況なはず・・・そんな中、例外中の例外、私とアリアは未だ教室内の机に座ったままです。


「・・・」


残された私たちと女子の皆さんの間にはピリピリしたムードが流れています。あぁ、すいません、アリアだけは、退屈そうに足をぶらぶらさせながら「ごはん、早く食べたいなぁ」と呟いています。

パタパタ パタパタ 

駆け足の音が廊下に響きます。みなさん、興奮を抑えようと必死です。まるで、100M走のスタート直前!みんなが待っているもの・・・それが帰ってきました!!全速力で駆け出して行った女子が、ダンッと教室の引き戸に右手を勢いよくついて、声高らかに言い放ちました。


「第2食堂です!!」


入り口付近で待機していた女子の皆さんは、弾かれたように、走りだしました。そんな一部始終を見終わると、私とアリアが立ち上がります。


「今日は、第1食堂!」

「はいはい、バイキングね。いっぱい食べよ~」


第一食堂は、バイキング形式の食堂で、第2食堂は、レストランのようなオーダー形式の食堂です。どちらもとっても美味ですし、その日の気分で選べるのですが、私達のお昼を選ぶのは、気分ではありません。極花なのです。先ほどの状況は、極花たちがどちらの食堂にいくのかというのを知るためにできたものなのです。私もそれを知り、極花たちの行く食堂と反対の方へ行くことで彼らを避けることが出来るのです。アリアも基本的には私に付き合ってくれます。まあ、「本日のメニュー」等の限定ものにはめっぽう弱いですが・・・


「お、この春野菜のマリネおいしそう」

「ほんとだぁ。パンにもあいそう」

 食堂には、ずらーっとおいしそうな料理が並んでいます。さすがです、聖花学園、舌の肥えた生徒たちも納得の料理を作るシェフを雇っています。アリアがお皿にマリネを載せ、私が焼き立てのクロワッサンをバケットからとった時でした。なにやら会場がざわざわしました。しかし、私は特に注意を向けませんでした。たまにあるのです。誰かの誕生日などで豪華なケーキが出てきたり、どこかの有名コンテストで優勝したコックが顔を出したり・・・そんなときの雰囲気に似ています。


「なんで、ここに極花の人たちが・・・」

「第2食堂だと・・・」


そんなヒソヒソ話が聞こえました。思わずバッと顔をあげました。みなさんが注目している方に少し長めの茶髪をワックスできれいにまとめた長身の男性と自然なブロンドの170センチにも満たない笑顔が似合う男の子がこちらを見ています。おそらく彼らが極花なのでしょう。しかも見ているだけではなく、こちらにゆっくり向かっています。


し、自然に出ていきましょう。彼らはおそらく・・・マリネやパンに興味があるのでしょう。こんなところにいつまでも居たら、挨拶などをしなければなりません。隣でそれなりにびっくりしているアリアのお皿にクロワッサンを載せ、自分のお皿を使い終わった食器を置くテーブルの上にそっと載せ、「私、教室に戻る」とアリアに耳打ちをして早足になってしまう衝動を抑えてできるだけ自然に出口へと向かいます。

もう少し、もう少し・・・


「ふぅ、いったいなにが・・・はやくここを離れないと!」


無事に食堂から出た私は、押し殺していた息を吐いて駆け足で食堂から移動しようとしました。

ガシッ

 腕を掴まれました。動けません。こんな乱暴というか馴れ馴れしいことをするのは、アリアしかありえません。きっと、後を追ってきたのでしょう。私はわざとらしく目を閉じて呆れたように眉をさげ腕をいきなり掴んできたアリアに言ってやりました。


「もう、アリア、何度も言ってるでしょ?私、極花と同じ空間にいるのは勘弁・・」

「心外♡」

「・・・・え、だれ」

「ほんとに心外」


 目を開けると、腕を掴んでいるのは、私の予想とはかけ離れていました。まずですね、性別が違います。髪色も違いますね。目の前の方は、黒髪です。身長も先ほどの極花であろう茶髪の男性より低めですが、男性の中では高身長です。そうですね共通点を挙げるなら、美形なことでしょうか・・・そんなことを突然の展開にパニックに陥り考えていると、彼の後ろからもう一人出てきました。


「もう、離してあげろよ」


 み、見覚えがあります。てゆーか・・・


「と、図書室の変わったイケメンさんッ!?」


「「ぶっ」」


二人は吹き出すと大笑いし始めました。廊下に笑い声が響きます。こ、困ります、ほら食堂のほうから人の姿がちらほらと・・・目立ってしまうではないですか―!!!

「あの、あなたたちはいったい何者・・・「きゃーーーーーー」


私の問は、聞きなれた黄色い声によって掻き消されました。いつの間にか周囲には、人、人、人!ひえ~~さっきの極花の人達までがキタ――――!!もう内心、\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?状態です。


「未海!」

「あ、アリア~~」


食堂の方から人の間を掻い潜ってアリアが私たちを囲っているサークルの最前列に来て心配そうに声を上げています。私はなんとも情けない震えた声で彼女に助けを求めます。そんな中、「なぜ、常盤様と桜野様が?」「極花の方たちが!?」「あの子は誰ですの!?」という声が出てきました。・・・・ん?ちょっと待て。待て待て待て。こ、この図書室の変なイケメンさんも、私の腕を未だ離す気配のないイケメンさんも、もしかしてもしかしなくても、さっきのお二方と同じ極花?? と、とゆーことは、極花が1人、2人、3人、4人・・・全員集合―ッ!!!!!????


「・・・ぁあああのぉぉぉぉ、わたくし・・・なにかしたのでしょうかぁ・・・謝ります!何でもします!だからだから・・・」

カクカクと震える足が体を支え切れなくなり、床へと跪く私は、泣きながらこの場からの解放を求めた。それはもう必死に・・・

「大丈夫?」

すっと頭を撫でたのは、図書室の・・(以下略)人でした。しかし、いまは、その誰かを落ち着けるためのさりげない優しい行動も、まわりを騒がせる行動となんだ変わりません。


「すみません!この子に何の用ですか??極花の皆様が寄ってたかってこの子を囲むということは、よほどの事情があると思いますが、勘弁してあげてください。未海はこんな風に人に囲まれることが特に苦手なのです」


 床に座り込む私とその腕を掴む黒髪美形男子と頭をなでる図書室の美形変人の間にアリアが見かねて駆け寄ってきてくれました。もう大好きです、私の白馬の王子様はきっと、きっとアリアです。


「余程の用事・・・うーん、まあたしかにここでは話しづらいのは確かだし、付いてきて」


 先ほどまで腕を掴んでいた男性はゆっくりと私の腕を離しながらそう言った。アリアは私の肩を抱くと「大丈夫?あんたなにしたの?」と心配しながらも呆れたように声をかけて立たせてくれます。


「なにが、なんだか・・・これは悪夢でしょうか」


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