速戦即決
「我が指揮を執る!皆の者、準備は万端か!」
腐二君がジャラジャラと無駄にシルバーアクセサリーを付けている、黒いマントを翻しながら先頭に立って叫ぶ。
「りょ、了解です」
M子ちゃんは背筋を伸ばして、軍隊のように敬礼をする。
「…はい」
ピーシーちゃんはいつもと変わらず、パソコンの画面を見ながら、小さく呟いた。
「俺は寝てるっす」
気の抜けた声が先生から発せられ、先生はその場に寝転ぶ。
「レッドウルフ!我の耳に貴様の返事が聞こえんぞ!」
腐二君が誰かに対して怒っていた。
「状況を考えてみろ、今から敵に向かい戦闘を始める!つまり、その前にリーダーから始まり、リーダーでしめる返事をするというのが当たり前であろう!」
ちょっと腐二君の言っている事が理解できない。
「レッドウルフ!貴様から返事を待っている!そうしなければ戦闘が始まらん」
腐二君はいったい誰に対してその言葉を伝えようとしているかが分からないし、そもそも伝えようとして、その言葉遣いなのかも分からん。伝えたければ、しっかりとした日本語を使うべきだ。
溜め息をついた時、何かが空を切ってオレの横を通り抜けた。髪が揺れ、上半身に嫌な寒気と、冷や汗がでてきた。
「クソッ…」
後ろにいたのはさっきまで元気良く先頭に立って叫んでいた腐二君だった。
前に視線やると、あの大きかった猫が次は体毛が黒くなり始め、爪も伸び、瞳は赤く光りだした。
視線を後ろに戻すと頭から血が滴り、腐二君の足元を赤く染めていき、右腕が力なく重力に逆らわず下へと垂れている。
喧嘩を何度もしてきたオレにはすぐに分かった腕の骨が粉砕して―――
「痛ッ!」
首元に何かがめり込んできた。痛い、という言葉では伝えきれないほど、今まで受けてきた痛みより、痛い。
「って、なにしやがるんだ!ピーシー野郎!」
首元への痛みは、腐二君も今日喰らった時がある手刀だった。
「レッドウルフは…お前だ」
胸倉を掴んで睨んでいるのにもかかわらず、眉一つ動かさずピーシーちゃんはそう言った。
「なに…?」
レッドフルフ…赤い狼…紅い狼…紅狼…狼紅…オレの名前じゃん。
「レッドウルフ!返事をするという事は、我の仲間になり、共に戦うという事を示す!貴様は戦うジャスティスはあるか!」
またわけの分からん事を…でも、腐二君はオレのことを後輩と呼び、信じてくれている。
なんとなくだが、ここでオレが返事しないといけないと思った。
本当になんとなくだ。別にこいつらの事を信用してるわけでもない。こいつらといて楽しいとも思わない。なのに、オレはこのクラスに入りたいと思っているのか?
「狼紅さん。焦らなくてもいいですよ」
M子ちゃんが優しく微笑みかけるようにオレを見ている。
「早く…決めろ」
ジト目でオレを睨んでくるピーシーちゃん。
「一緒のクラスの癖に矛盾してるじゃねぇか。分かった。一緒に戦う」
「その言葉を待っていたぞ!」
腐二君が立ち上がり、満面の笑みで左腕を前に差し出し、叫んだ。
―――聖なる都の力を受け、天地創造の力を有する物
「―――我が手中にッ!!」
周りの大気を吸い込みながら腐二君の手の中に光り輝くゴルフボール程度の玉が出来た。腐二君がそれを握ると、形は日本刀に近いが、明らかに数倍は大きい発光体の日本刀が創られた。それを軽々と振り回し、最後に折れた右腕を無理矢理動かし、発光体を両手で持つと、猫を睨む眼光が鋭くなった。
「我がいる限り、貴様は悪事を働かせられぬ。いざ、推して参らん!」
腐二君はそう言い放ち、黒くて、口の牙からでてくる唾液は荒い息と共に出て、もはや猫と言い難い異形となした猫に向かって走り出した。猫との距離が一メートル程になったとき、猫が横から猫パンチをしてくるが、その攻撃を予測していたかのように、腐二君は上空に跳び、猫の頭に向けて振り下ろす。
まずそれより、腐二君の中二病ジャンルが分からない。
確か中二病は主に三つに分けられるはずだ。DQN系、サブカル系、邪気眼系の三つで、DQN系は反社会的な行動や不良を演じて、格好いいと思い込んでいる。だが根はまじめだったり臆病だったりするので、本当の不良にはなりきれない。喧嘩や犯罪行為に対する虚言が多い奴で、サブカル系は流行に流されずマイナー路線を好み、他人とは違う特別な存在であろうとする。だが別にサブカルが好きなわけではなく、他人と違う趣味の自分は格好いいと思い込んでいるとかいう奴で、邪気眼系は不思議な・超自然的な力に憧れ、自分には物の怪に憑かれたことによる、発現すると抑えられない隠された力があると思い込み、そんなすごい力がある自分を格好いいと思い込んでいる。また、そういった設定のキャラクター作りをしている奴だ。
あいつはDQN系ではないと思うが、他の二つは持ってそうだな。でもまぁ不思議な力は持っているようだが、発言が痛々しい。
「そっちに行ったぞ!レッドウルフ!」
「…え?」
考える事をやめて、腐二君の方を見てみると、腐二君は地面にさっき創りだした発光体が刺さって抜くのに大変そうだ。
そんなことより、オレの目の前にあの猫が上空から前足をオレに向けて叩き落していた。
「はぁ…小鳥狼紅…死亡フラグ『破壊』」
上空からではなく脇腹に痛みが走った。隣にいるピーシーちゃんが蹴りを入れてきたのだ。
「二回目だよなぁ、ピーシー野郎」
「助けて…あげた」
確かに、上にいた猫が遠くにいるが…。
「お前がなにしたってんだよ!」
「うるさいっすね~」
欠伸をしながら起きて、眠そうな目でこちらを見ながら先生が言った。
「お前もお前だよ!こんな緊迫してるときに寝てるってどういうことだよ!」
「戦闘中に中二病の事について真面目に考察してる人には言われたくないっす」
「なんで知ってる」
「声に出してましたよ」
隣にいたM子ちゃんが少し笑いながら言った。
「それに君を助けたのは紛れも無い彼女っすよ」
そう言って、先生はピーシーちゃんの頭をポンポンと叩くが、すぐにピーシーちゃんが払いのける。
「ひどいっすねー。まぁ彼女の能力を簡単に言えば、〔指定した人物の出現しているフラグを破壊する〕ていうやつっす。限度は一日十回って少ないっすけど。でもこの能力はこれまでの能力を逸脱してるもんで、『危険ナンバーヒューマン』に指定されてるっす」
『危険ナンバーヒューマン』
全ての人類の能力はすべてある組織が確認している。確認した中、あまりにも危険すぎる能力または、殺傷能力の高い能力を持つ『ナンバーヒューマン』のみに適用されるものである。
「彼女の能力は未来を捻じ曲げる能力でもあるっすから、指定されたんすよ。まぁ他にも理由が―――痛いっす!!つねるのだけはやめてくださいっす!」
「余計な事…言うな。小鳥…忘れろ」
ピーシーちゃんと目を合わせた瞬間、殺されるかと思うほど殺意に満ち溢れていた。だが、どこか哀愁を漂わせていた。
別にピーシーちゃんのことは詳しく知らなくても良かったので「分かった」とだけ言った。
「あ、きてるっすよ」
また間が抜けた声でヘラヘラと笑顔で先生は言った。
猫が狂ったかのように頭を振りながら大きな足音と共に向かってきた。
「我が貴様の相手だ!」
横から跳んできた腐二君が猫の首元に日本刀の形をした発光体でなぎ払う。猫はその衝撃により白目になり、飛んでいった。数メートル吹っ飛ぶと、『なにか』にぶつかり、地面に落ちた。
「彼は〔中二病ワードを現実のものにする〕能力っす。ちなみに俺は〔空間を自由自在に扱う〕能力なんで。俺と彼も『危険ナンバーヒューマン』に指定されてるっす。でも彼女は違うっすよ」
M子ちゃんの方を見てみると、猫のもとへと走っていた。
あ、転んだ。
「彼女の能力は〔『ナンバー』『マスターナンバー』の能力を消す〕能力っす」
M子ちゃんは起き上がって、少し涙をぬぐってからまた走り出して、猫の近くに行くと猫の周りに手でなにかを書き始めた。それは道路の白いチョークを使って書いているみたいだった。
数十分後、大きな魔方陣のようなものが猫を中心に書かれた。
「汝、あるべき姿に戻ってください!」
どこか聞いたことがあるようなワードを聞き流していると、急に魔方陣が爆発した。
いや、爆発というよりは白い煙が一気に音と共に出てきたと言った方が正しいかもしれない。
白い煙が晴れていくと、魔法人の中心には小さい可愛らしい猫が眠っていた。
▽▲▽▲▽
「今日はお疲れさまでしたっす。そして今日は新しくクラスメイトも増えて、とてもよかったっすね!」
日が傾き始めて、教室内が夕日色に染められている。カラスが鳴き始めて、小さな子供だったら帰宅の準備を、主婦だったら夕食の準備を、本校舎にいる生徒なら既に帰宅を、人それぞれの時間帯だろう。そんな時間オレは旧校舎の通称Sクラスにいる。三人のクラスメイトと先生と共に。
窓から差す夕日の色は今まで見てきた色の中でとても輝いて、とても暖かだった。
誕生数11を持つあなたは、並はずれた感受性を宿す神秘的なパワーの持ち主です。
11は、数秘術においてマスターナンバーと呼ばれる特殊な数字の一つであり、他の数字を持つ人に比べ非常に鋭い感受性と洞察力を持っており、人の本心や真理を理屈ぬきに見抜いてしまいます。
自覚している人とそうでない人がいますが、11の人の感受性は霊的であり、直感ですべてを察知してしまうことができるのです。
マスターナンバーとは、「試す数字」とも呼ばれ、この数字が誕生数や姓名数などに出現した場合、強力な影響が与えられると考えられています。
誕生数22を持つあなたは、心に描いた夢を実現させる人です。
卓越した才能と実行力を兼ね備えているマスターナンバー22は、マスタービルダーとも呼ばれ、大工の棟梁を意味しています。
その名が示す通り、22の人は目標を定めると用意周到に準備をして行動し、必ず達成させてしまい、この物質界に想い描いた夢を実現させるのです。
22の人に不可能はほとんど無いと言っても過言ではなく、頭脳明晰で合理的、大胆な行動力と忍耐力もあるため、あらゆることをこなしてしまいます。
33以上のマスターナンバーは現在あまりにも強大な力なのでいないといわれております。
マスターナンバーのまとめ。
他の1~9の数字のように自分の進む道を追い求め、より高くを目指すという目的の他に、目に見えないスピリチュアルな高度の情報を探求する使命や、その学びを取り入れて実践できる潜在能力の存在を暗示しているといわれます。
マスターナンバーの学びは他の数字に比べると高度なレベルになり、その大部分が、受け取り方にもよりますがストレスに満ちた環境を通してもたらされます。
振動数の高い数字であり、この数字を持つ人の多くはドラマチックな人生を歩むことになりそうです。
マスターナンバーの非凡な才能は、世界の根本的な成り立ちの理由や、物や人間の存在の理由や意味など、見たり確かめたりはできないけれども実在する物事の存在を決定する根本的な原理について研究する形而上学的、あるいは哲学的、普遍的な概念に根ざして考え行動したときに活性化され、その時、この数字を持つ人はマスターナンバーのレベルで動いていると言えます。
そして、忍耐強く努力を継続したときに、この力が大きく発揮されるのです。