今昔之感
▽▲▽▲▽
オレは溜め息をつきながら、本校舎の最上階にある家庭科室に向けて歩いていた。
ピーシーちゃんに「ついてきて」と言われた後、町へ向かう前に連れてこられた、本校舎の中で唯一知っている特別教室の一つである。
家庭科室に行けば高確率で、あのうざい先生がある行動をとっているという。
話を戻して、何故オレが家庭科室に向かってるかというと、中退するために先生と話しに来た。というわけではない。
腐二君が鬼の形相で、先生を呼んでくるように言ってきたのだ。最初は断ろうと思ったのだが、断る前にあいつは走ってどこかへと行ってしまい、途中で投げ出すのも胸糞が悪いので、仕方なく先生を呼びに行くのだ。
家庭科室に先生がいる理由は、別に家庭科の先生という訳ではなく、ただ、全生徒先生公認の呆れている行動をしているのだ。
突然だが家庭科室によった時、先生から無理矢理聞かされた話をしよう。
ここの高校は名高い進学校には少し劣るが、進学校で頭がいいというのにはかわりは無い。
そんな高校に一陣の風が舞い込んできた。
電波な美少女の転校生、頭脳明晰智勇兼備な金持ち美男子だが裏がありそうな転校生、未来からの使者、クラスで突然殺し合いをしてもらう、などという非現実なものでなく、生徒よりも先生の方が喜ぶことだった。
それは、あの有名なハーバード大学を現役で歴代トップの人達と並びながら卒業をし、マスターナンバーの中の最強とも呼ばれる能力を所有して、歴史に名を刻む人とも言われた人が、朝のテレビ放送で大胆にこの白峰高校の先生になるといったのだ。
そりゃあ、世界全土に天変地異が起きるのではないかと思うほど、全人類は仰天した。
その生徒を教えていた教授は、朝から飲んでいたコーヒーを噴出し、真っ白なワイシャツが茶色に変わり、白峰高校に向かってイヤホン越しにニュースを聞いていた校長は、夢を見ていると勘違いをして、地方新聞の片隅に小さな記事で『道端で突然「夢だ!」と叫びつつ自分を殴り始める大人!!』という見出しを載せたという。
校長の暴れている姿をたまたま通りかかった記者が見つけて、取り押さえた後に取材をして、校長が「白峰高校の校長なんです」と言った瞬間、記者は納得した顔をした後、質問攻めをしたという。
その日校長は病院に行き、自分で殴った傷を治してもらい、朝はところどころに包帯を巻き、松葉杖をつきながら、登校したという。
その日の白峰高校は問い合わせの電話がひっきりなしに鳴り、校舎内に無断で入り、先生や生徒に取材をしようとする輩もでてきたため、一旦落ち着くため一週間の臨時休校に陥ったという伝説がある。
まさに、白峰高校の歴史に名を深く刻み、これからも、もっと深くたくさんの傷跡を残す男は、その 一週間後、白峰高校に一陣の風のごとく先生になったのだ。
そしてその先生が、オレの担任であるあのうざい先生なのだ。
その先生が最初に起こした事件は、小さな盗みだった。
盗みといっても、家庭科の授業時に生徒が残してしまった料理や、処分をしなければいけないお菓子を夜に家庭科室に忍び込んで、つまみ食いをしていたのだ。
最初の頃は上手く偽装工作をして、ばれなかったのだが、日が経つにつれて食べる量が増し、偽装工作に手を抜き始めたのだ。
エプロンを忘れて朝早く家庭科室に取りに来た家庭部一年の女子生徒が第一発見者だった。昨日先輩と作りすぎてしまい、今日の放課後処分するはずだった料理が机に出されており、皿の上にあったてんこ盛りの料理が綺麗に無くなっていたのだ。
最初は先生が代わりに処分をしてくれたのだと部員は思っていたのだが、放課後先生に聞いてみると、まったく身に覚えが無いという返答だった。
もちろん料理を食べたのは、家庭部員でも家庭科の先生でもない。一陣の風のごとく白峰高校にやってきた先生だ。
その日の夜、部員の話を聞いた家庭科の先生が見張りをしたのだが、先生は巧妙な手段を使っていともたやすく家庭科の先生に気づかれずに、料理を食べていったという。
それから、何度も見張りをしているが、毎回朝になったら皿の上にあった料理が無くなっているという状況が何日も続いた。
そうなると、生徒たちはありもしない噂を家庭科の部員を発信源にたちまち全校生徒に広がっていった。
例えば、家庭科室に潜む大食い少女。
真夜中、昔に貧乏で餓死をしてしまった少女の怨霊が毎晩毎晩食べに来てると言うよくある学校の怪談。
例えば、校内に潜む人。
実は校内に、裏道または屋根裏のような隙間があり、そこに住んでいる人がいるという怪談話より数百倍恐ろしい噂も広がったりした。
その他にも十人十色のようにたくさんの噂が校内を駆け巡った。
家庭科の先生以外は馬鹿らしいと思い、無視をしていたのだが、ついに事件が起きた。
家庭科室に行くのを拒む生徒が現れたのだ。
白峰高校は進学校でもあるので、全員といっていいほど素行が良い生徒ばかりなのだが、そんな生徒が授業を拒むとなると親からのクレームが来ると思った校長は、全学年を一時間自習に変更した後、緊急会議を開いた。
緊急会議を始めようとした瞬間、ある先生が発言の許可をもらうために手を上げた。
校長は「どうぞ」とだけ言って、発言するように促す。
「ぶっちゃけ、やったの俺っす」
明るい口調で話したのは、白峰高校の歴史に名を刻んだであろう男だった。
「授業を見学してた時に、たまたま味見した料理があまりにも美味しくて、忘れられそうになかったので食べちゃったっす」
たった数分でお開きとなった緊急会議も異例のことだった。
ほとんどの先生は笑って水に流し、校内放送で謝罪をすると、生徒も笑って許したという。
先生への処罰は、すぐさま校内見学をやめて、仕事をすることとなった。
しかしその後、その先生に憧れや恋心を抱く生徒が、家庭科室にわざとお菓子を置くということもあった。
これにて先生の事件は終わりを迎え、その後は先生として大活躍をして、落ち着いてきたという。
とまぁ、ちょっとした自慢話を聞かされていたわけだ。
脳の思考を、記憶を掘り返すという作業から視界の処理に変換すると、目の前に家庭科室の扉があった。
旧校舎とは違い、しっかりとした取っ手に手を掛けて開けると、案の定先生がお菓子を頬張りながら携帯を弄っていた。
しかも、そのお菓子は生徒の手作りであるクッキーだ。
「不思議っすよね。こんな『箱』で周りとの関係を築いてるんすよ。狼紅君はどう思うっすか?」
突然に問いかけられた質問。
先生の声は低く、暗いものだった。
「どうも思わねぇよ。てめぇが箱だと思う『箱』は違う奴にとっては『宝箱』だって言う奴もいるんだよ」
何故か先生の気持ちが痛いほど分かった。だからあえて嘘をついた。
「狼紅君は前者っすか、それとも後者っすか?」
「どっちでもねぇよ」
「そうっすかね?」
先生の瞳はいつもより輝きが無く、深い深い穴のような目だった。
「人なんて忘れるのが当たり前の生物。間違いを犯す生物。周りを蔑む生物。そして、ただの物質の塊なんすよ」
背中の鳥肌が立った。先生の瞳を見ていると、何もかもがみすかれているような感覚になった。
すると、先生は急に唇の両端を上げて立ち上がる。
「この話は置いといて、何か用があって来たんっすよね」
明るい声に戻り、笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「そうだった。腐二君…じゃなくて、先輩が呼んでた」
さっきの質問はあまり詳しく聞かないほうが言いと思った。何故かは分からない、あえて言い訳を言うなら、オレの直感がそう思ったのだ。
「それじゃあ、できるだけ早く言ったほうが良いみたいっすね」
クッキーを一つ口に放り込んだ後、机の上にあったクッキーの袋を軽く閉めて、背伸びをする。
「んじゃ、行くっすよ」
「えっ!?ちょっ!」
先生はオレの腕を掴み、オレを引きずりながら町へと向かって行った。
廊下には一つの走る音と引きずる音がこだましていた。
ナンバー6を持つあなたは、誠実でやさしく周囲に癒しを与える人です。強い責任感を宿しており、人の役に立つことに喜びを感じ、献身的に相手に尽くします。平和であることを望む理想主義者であり、他者との争いはできるだけ避けて穏やかな方法で問題解決を図るでしょう。
ナンバー7を持つあなたは、精神世界をとても大切にする人です。物事の結果よりも概念そのものに関心を抱き、本質を見抜く直観力を備えています。人生のより深い理解を常に探し求め、たいていは領域を絞って探究する研究者であり技術者、発案家です。
ナンバー8のあなたは、卓越した決断力と行動力の持ち主です。どんなに周囲が混乱していようと直感的に全体像を見てとり、やるべきことを本能的に察知すると共に次の展開を予測して迷いなく前進していく行動力を持っています。また、私情を交えず他者を客観的に見ることができる人で、ほとんど一瞬のうちに相手がどのような人かを見抜きます。
数秘術において9は最後の数字であり、物事の終わりを表すと共に、すべてを受け入れるという意味を持っています。そのため、関わる人や環境によって、9の人はそれぞれ全く違った性格をしています。9は全ての数字の要素を含んでいるため、とても繊細で複雑な内面を持っており、あらゆる人の長所を直感的に読み取ることができると言われています。
※宇宙数秘術より抜粋
次はマスターナンバについて書きます!