命令一下に反発
無言でピーシーちゃんは綺麗な姿勢で廊下を、下駄箱に向けて歩いている。
ホームルーム中なので生徒とはすれ違わないが、先生とは二、三度すれ違った。
先生たちはオレ達を見かけるたびに、わざとらしく視線を合わせようとしなかった。
まるで関わることを恐れているようだった。
理由は知らないが、少なくとも先生たちは俺達Sクラスの顔と名前などを、覚えているようだ。
オレは溜め息をついた後、ただただ無言で歩き続けるピーシーちゃんの背中を追った。
廊下には二人の足音が響いていた。
ピーシーちゃんの後を追っていると、町中にでており、周りには高層ビルから大きなショッピングモールが建ち並んでいた。
既に「町」という概念を覆しているのだが、十年位前にはしわしわのおじいさんおばあさんが、縁側で日向ぼっこをしていて、田畑がたくさんあるようなド田舎の中のド田舎だったらしい。
「こっちだ」
どこからか腐二君の声が聞こえたので、周りを見渡してみると、路地裏から腐二君とひぃ子ちゃんが顔をひょっこりと出していた。
ピーシーちゃんは軽く頷いた後、腐二君のところへ歩いていった。
オレもその後を追いかける。
「やっときたか、待ちわびたぞ」
腐二君がオレの肩を掴み、顔を覗き込みながらニヤニヤしている。
まるで息を荒げた豚が、目の前にいて生暖かい鼻息が顔全体を包むような気持ち悪さだ。
オレは若干顔を遠ざけながら、視線を逸らしていた。
「後輩か~」
次に腐二君は純粋無垢な好奇心旺盛な子供のようなキラキラした曇りが一切無い瞳になった。
ここまでくると、少女漫画のような大きくてキラキラしている目を連想してしまう。
「離れろ、腐二く…じゃなくて…先輩」
我慢が出来なくなったので、腐二君の胸を押しながらそう言うと、腐二君が静止してしまった。
数秒後、今までと比べられないほどの、強い力で肩を握り返すと、前後に大きく振り始めた。
「今先輩って言ったよね!超うれすぃ!」
既にキャラが崩壊しているような気がする。いや、こっちが本当の性格なのかもしれない。
鼻息が荒くなってきやがった。
前後に振られるたびに脳が揺れて、腐二君に近づくと顔全体に荒々しい鼻息があたる。
流石に気持ち悪くなり始めたので、やめてほしいと思った瞬間。
「黙れ」
ピーシーちゃんの手刀が腐二君の後ろ首に深々と入っていった。本当に深々と。三センチぐらいはめり込んだと思う。
腐二君は「アベシ!」という、どこぞの雑魚キャラの断末魔を叫びながら、オレの方へと倒れこんできた。
オレはその時ある事を誓った。今日の夜、流れ星に腐二君の脊髄が損傷してない事を祈ろうと。
「後五分」
ピーシーちゃんが、もしかしたら殺人罪を犯したかもしれないのに、無表情で淡々と話した。
少し背中に寒気が走ったような感覚がした。
「そ、それじゃあ、私が最初に行きますね」
控えめに手を上げながら、ひぃ子ちゃんが発言する。
ピーシーちゃんは軽く頷くだけだった。
「えっと…今からなにすんの?」
ついてきたものの、未だ目的が分からない。
オレが質問をしているのに、二人は何も答えず、一人は安らかに眠っていた。
「来た」
小さな声だったが、オレとひぃ子ちゃんにはしっかりと聞こえる芯の通った声でピーシーちゃんが言うと、ひぃ子ちゃんが「い、行ってきます」と言って、振り返り、おぼつかない足取りで路地裏から出て行った。
その瞬間白いものが、ひぃ子ちゃんの顔を覆った。
大きな金色の瞳、一本一本が天使の羽を連想させる白い毛、白く輝く牙と爪、を有した小さい猫だった。首輪をしていないところから、きっと野良猫なんだろう。
「あわわわわわ、死ぬ死ぬ」
両手を上げながら、ひぃ子ちゃんはその場でぐるぐると回りだした。
どっかの露出度が高い民族舞踊かよ。と心の中で毒突いていると、ピーシーちゃんが音をたてないように立ち上がり、ひぃ子ちゃんの顔にくっついている猫の尻尾を掴もうとするが、猫は軽い身のこなしで避けてしまう。
猫は華麗に着地を決めて「にゃ~」と舐めきった鳴き声をして、猫一匹通るのが限界の狭い通路に入ってしまった。
ピーシーちゃんは小さく舌打ちをした後、鞄からパソコンを取り出し、地面に座りながら、パソコンを弄り始めた。
パソコンの画面を見てみるとここら辺一帯の地図が表示されており、青く点滅している複数の丸と赤く点滅した一つの丸があった。
地図の表示から赤い点滅した丸がさっきの猫なんだろう。
「発信機、追いかける」
少し口元を上げながら、ピーシーちゃんは言った。猫よりピーシーちゃんのほうが一枚上手だったようだ。
「は、はい」
ひぃ子ちゃんが少し涙目になりながら、弱くガッツポーズをした。
そんなにあの猫が恐かったのだろうか。
ピーシーちゃんが走り出し、それにひぃ子ちゃんがついていく。
「あ、あの、ついてこないんですか?」
立ち止まっているオレにひぃ子ちゃんが振り向きながら言った。
「悪い、オレはついていけない。オレは高校に入ったら妹のために、変わろうと思ってるんだ。妹が胸を張って自慢が出来る良い兄貴になりたいんだよ。でも、いまやってることってなんだよ。授業なんてろくにせず、町の中にきたらただの野良猫を追っかけて、おかしいだろ。悪いが、こんな変なクラスにはついていけないし、つるむきもない」
「好きにしろ」
ピーシーちゃんは冷たく言い放ち、走っていった。
ひぃ子ちゃんはオレとピーシーちゃんを交互に見た後、オレに一つお辞儀をして、ピーシーちゃんを追いかけていった。
二人の背中は小さくなっていき、人込みの中に消えていった。
オレは高校に戻ろうと思った時、腐二君が視界に入ってしまい、一応オレでも良心というものがあるので、このまま、格好からして痛そうな少年を寝かせているわけにはいかないので、背負って高校まで来て、教室の机を二つつなげたその上に寝かせている。
ここの高校は無駄に広いので、職員室や保健室がどこにあるのかが分からない。
この高校を自主退学して、滑り止めのために受けた私立高校に編入することは出来るんだっけか。
別に私立にいったって、そこで真面目に勉学に勤しんで、良い成績をとってれば妹の兄貴とはいえるだろう。
「ううぅ…」
腐二君が目覚めたようだ。死んでなくて良かったな。
オレは机に深々と座りながら、今後のことについてまた考え直してみる。
「今、堕天使が舞い降りた」
腐二君は机の上に立ち上がり、両手を広げた後、右手で左肘を掴んで、左手で顔を隠しながら言った。
そういや、腐二君はこういう人だったよな、こじらせてしまった痛い少年という性格を忘れていた。
「俺は、どのくらいの間昏睡していた?」
「えー、かれこれ一時間ぐらい」
腐二君は急にオレの襟を掴み、引っ張ってきた。
「おい!やめろよ!」
流石にこの行動は苛ついたので、声を張り上げてみると、腐二君はオレの襟を離して、オレの真正面に立ち、オレと視線を合わせた。
「これからは命の危険が伴う仕事だ。覚悟はあるか?」
この台詞、口調、雰囲気、全てが今までの腐二君とは違った。
まるで本当の「先輩」のようだった。
1を持つあなたは、生まれつき情熱、勇気、独立心、決断力、威厳、
忍耐力、野心を持っており、考えるよりも行動することを好みます。
また、1という数字は、創造性、意志の強さ、自己中心、支配も意味し、チームワークよりも一人で独創性を活かす環境の方が、より大きな成果を上げやすい傾向があります。
2を持つあなたは、鋭い感受性の持ち主です。
他者の気持ちを敏感に察知し、どのような人とでもうまく合わせていく柔軟性を持ち合わせています。
内面的には好き嫌いが激しい傾向ですが、他者と争ってまで自分の目的や目標を得ようとは考えません。
3を持つあなたは、いかなる環境にもすぐになじむことができる順応性の塊のような人です。
どこまでも楽観的であり陽気で前向きで、何でも都合の良い方に論理展開し、多くのことに興味を持つ、そんなあなたは、すべての誕生数の中で最も与えられた人生を謳歌する人といえるでしょう。
4を持つあなたは、アイディアを形にする建設的な人であり、自己の能力を高めようと努力する卓越した向上心を持つ人です。
現実的で、物事を冷静に分析し計画を立てて慎重に進めようとします。
抜群の問題処理能力も備わっているため、特に仕事の場においては正確で質の高い生産性を発揮するでしょう。
5を持つあなたは、好奇心旺盛で多芸多才な人です。
自由でいきいきと自分らしく生き、活動的で慣習にとらわれないため、大胆な冒険に出ることが多くあるでしょう。
頭の回転も速く、衝動的に興味の対象へ飛び込みますが、順応性があるのでどのような環境にもすぐに慣れ、状況の変化にもすぐに対応できる柔軟性と機敏な知性を持っています。
※宇宙数秘術より抜粋
次回は6から9を紹介します。