不可解な先生って怖い
「おめぇら、その男から逃げろ!」
元に戻った刹那、後方からの声は聞き覚えのあるものだった。良い記憶が無いやつだ。
黒い服装を身に纏った遊園地で会った男だった。
先生が口を開こうとするが男はオレの隣を通り過ぎ、先生の口を片手で塞ぎながら地面へと叩き落とす。
男は先生の両腕に足を乗せて片手で首を掴む。
「質問をする。今から変な行動をすれば首を切断するからな」
「あぁ、それは怖いっす」
ヘラヘラと笑いながら先生は言う。
「行動してるということは、あれが近いんだな」
「そうっす。早くて一週間で始まる」
「目的はなんだ」
「ご存知の通り『一匹狼』の解放っすよ」
「違う! おめぇの行動には不可解な点がいくつもある」
先生は目を瞑り、静かに低く声を出す。
「それは内緒っす」
「ふざけんな!」
男が先生の頬を殴る。
――聖なる都の力を受け、天地創造の力を有する物
「――――我が手中にッ!」
連先輩の声と共に男がこちらに吹き飛ばされ、先生がため息をつきながら立ち上がった。
「よくやった、我が生徒達」
「先生の命令どおり町民は一時の安らかな眠りについてる」
連先輩がいつものマントをつけて先生の隣に立ちながら言った。
「連先輩! その先生に近づくと危ない!」
オレが連先輩に叫ぶが、きょとんとした表情のまま動かない。
「……あ、先生が人を殺めること? そんなの重々承知だよ」
「くそっ! 一匹狼はそこの壊れた妹を持って逃げろ!」
逃げたくても足が折れてる状態じゃ無理だ。
そのことを伝えようとしたとき、近くにあった店から爆音と煙と一緒に千春先輩が現れ、遅れながら男と一緒にいた女性が現れた。
「そいつは無視をしてもいいから、一匹狼を優先しろ!」
男が女性に向かって言うと、一つ頷き女性は妹とオレを抱え上げ走り、男は連先輩と千春先輩、そして先生に向かって走り出した。
△▼△
女性に抱え上げられたまま自分のアパートに戻ったのだが状況がまるで掴むことができない。
リビングのテーブルに向かい合って座っている女性は一つ深呼吸をして話を切り出した。
「妹さんは部屋で泣いてる間に、貴方達に説明をしてもよろしいですか」
テクテクとリビングの開けっ放しのドアからミチが歩いて、オレの隣の椅子に座った。