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【BL】王と宰相

作者: ありま氷炎
掲載日:2026/09/27

「お前までついてくることはなかったのだぞ」

「老い先短い私が残っていてもしかたないでしょう」


 療養という名の幽閉のために辺境に向かう馬車に乗りこんだのは、王の右腕と称された宰相だった。


「老い先とはのう。どの口が」


 宰相はまだ四十歳を過ぎたばかり、老いという言葉はまだまだ似合わない年齢だった。

 王は五十を過ぎており、二十年以上王に君臨していた。

 王位を継承した際に、若干二十二歳だったアルベルトを宰相に採用した時、多くの者が反対した。

 それを押し切ってアルベルトに宰相の地位を与え、それから二十年、国は潤い続けた。

 しかし、ここ数年、王の奇行が目立つようになり家臣たちが不安を覚え始めた。

 決定的だったのは、王太子の妻である妃に横恋慕して奪おうしたことだった。

 これは王太子を激怒させ、彼に行動を起こさせた。

 王は退位に追い込まれ、今、辺境地に送られようとしている。

 ちなみに、王は独身であり、王太子は歳の離れた弟であった。


「陛下。どうしてそこまでして退位したかったのです?」

「……何を言っているのだ。アルベルト」


 のんびり辺境に向かう馬車の中、アルベルトが前国王に問う。


「突然責務を放りだして、売春宿にいったり、売春婦を招いたり、最後にはユリア様を手籠めにされようとしたり……何をしたかったのですか?」

「何をって、まあ、私も男であるからな」


 前国王は豪快に笑う。


「そうですか。まだ隠すつもりですか?陛下、いえ、ジェルマーノ様」


 アルベルトは前国王の膝に手を乗せる。


「やっとこの時がきました。私の想いをあなたに伝えられる時が。奇行に走り始めた時、不安にもなりましたが、全部裏を取りましたから。あなたはシロです。ユリア様に限っては、あなたならよかったのに、怖気づかれてしまい、残念だったとお言葉もいただいてます」

「ユリアが、そんなことを」


 前国王、ジェルマーノは右手で額を覆って、溜息をついた。


「二十年前、あなたに見いだされ、宰相に抜擢された時から、お慕いして申してました。どうか、私の手をとっていただけませんか?」

「……わしはもう老人だ。お前の想いはわかっていた。だからこそ、諦めてほしかったのだ」

「私は絶対にあきらめませんよ。体を動かせなくなったら、どうにか事を成そうと思ってましたから」

「アルベルト!」


 ジェルマーノは顔を真っ赤にして叱咤する。


「大丈夫です。あなたの意志は尊重します。少しずつ慣らしていきます。あなたのことならなんでも知ってますから。ジェルマーノ」


 アルベルトはそれ以上ジェルマーノと距離を詰めようとしなかった。

 けれども、元宰相の妖艶な微笑みに、前国王は囚われてしまい、心の距離はすでに詰められてしまっていた。


(終)

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