第三十四話『信長の秘策──小姓頭昇進試験!?』
「小姓頭の座を──試験で決めるとな?」
清洲城、大広間。
信長のその一言に、小姓たちは一斉にどよめいた。
「ま、まことにございますか信長さま!? そのような大役を、試験で……」
「黙れ。出世したくば、口ではなく“実”で示せ」
信長の言葉は、城の柱すら震わせる威圧をもって響いた。
「これより五日間、“小姓頭昇進試験”を行う」
「課題は三つ──草履温め、即興武術、女中からの信頼度調査じゃ」
「し、信頼度……!? それ試験か!?」
利家が目を見開き、日吉丸はぷるぷる震えた。
「わし、もしかして“ラッキースケベ”で減点されるやつやないか!?」
「日吉丸ぁ、心当たりがあるんやな……」
◇◆◇◆
──第一試験:草履温め選手権──
「さあ、持ってこい!」
信長の号令と共に、各小姓が用意した草履を提出。
温度・柔らかさ・香り(!)まで審査対象に。
「これは……ぬくい。だが、やや湿っぽいな。蒸れとる」
「こちらは……柔らかすぎて形が崩れとる!」
信長の厳しい目が光る中──
「こちらの草履、適度な温度、乾燥、そして……おや? 味噌の香り?」
「……味噌は、安眠効果があるゆうて、ねねが足袋に擦り込んでくれたがね」
「面白い。加点」
「おおおっしゃあああ!!」
◇◆◇◆
──第二試験:即興武術対決──
「刀を抜けい!」
木刀を手に、対峙するのは利家。
日吉丸の顔がひきつる。
「なんであんたと!? 本気で来る気やろ!?」
「当たり前や! わしは“おしのに告白する資格”のために、ここで勝つんや!!」
「や、やめーや! それ戦の目的違うやろ!!」
木刀が交わる音、ドンッ!と鳴る足音、だが動きは滑稽。
勝敗は五分と見られるが……
「最後に相手の武器を吹き飛ばした日吉丸の勝ちじゃ」
「うおおおおっっしゃあああああ!!」
「ちっ、今日のわし、味噌汁食いすぎて重たかったわ……」
◇◆◇◆
──第三試験:女中信頼度調査──
「さて、ここが問題じゃな」
信長の横で巻物を広げた千鶴が、厳しい目で告げる。
「女中二十名から“いっしょに朝を迎えたい男子”を匿名投票していただきました」
「選び方の基準エグない!? えっそれ朝て……!」
「結果、日吉丸──十八票」
「な、ななななにいいい!?」
「信頼度高すぎやろぉぉぉ!!」
「ちょ、千鶴っ!? あんたも投票しとるやろ!!」
「私は“情緒安定のための科学的支持”に基づいた判断を──」
「理屈ちゃう! それ完全に好意や!!」
──三試験終了。
信長は、すっと日吉丸の前に立ち、草履を差し出した。
「おまえが、“小姓頭”だ」
「──はいっ!!!」
日吉丸、新たな肩書きを背負って、ドタバタ城中ラブコメ戦線、次なる嵐へ突入するのであった──。




