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豊臣ハーレム『豊臣秀吉、愛と政の合間にて──天下を取ったらハーレムがついてきた件』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
【第一章】『草履と初恋──日吉丸、恋と野望の始まり』
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第二話『わし、働きもんやで!』

 朝から、日吉丸は縁側で草履を擦っとった。

 母・なかが編んだ藁を、自分の手でほどき、油を染み込ませ、くたびれた鼻緒を直す。


 「そんなとこで、ひとりで何しとるん?」

 振り向けば、お鈴が味噌壺を抱えて立っとった。頬には米ぬかの粉、袖口は豆腐の汁で濡れている。


 「草履のメンテやて。足が大事やろ? 天下人になるんやで、まず足元からや!」

 「はいはい、よう言うわ。そんなこと言いながら、いつも転んどるくせに」

 お鈴はくすっと笑う。だけど、その笑顔の奥に、ちょっとだけ不安そうな影も見えた。


 「……そんなに夢中になって、どこか遠くに行ってまいそうで、少しだけ心配なんよ」

 「心配せんでもええがね。わしは逃げも隠れもせん、まっすぐ天下に向かって走るだけや!」


 その声があまりに大きくて、通りすがりのじい様連中が振り返った。


 「おいおい、またあの子が騒いどるわい」

 「日吉丸か。あいつ、最近は女の子連れて歩いとるらしいのぉ」

 「ほう、ようモテるなぁ。顔はアレやのに」


 「な、なんやと!?」


 お鈴がむっとして立ち上がった。頬がぷくりと膨れている。


 「わたしは連れて歩かれとるんやない! 一緒におるだけやて!」


 「お、お鈴! 落ち着きぃ!」


 「もうっ! あんたがモテるとか、そういう噂立てられると、あたし……なんか、ややこしいんやってば!」


 真っ赤になって俯くお鈴の姿に、日吉丸はただぽりぽりと頭をかいた。


 「……でも、ありがとな。そんなふうに思ってくれとるん、ちょっと、嬉しいがね」


 春の陽ざしが、縁側にさしていた。

 小さな村の片隅で、草履職人の少年と豆腐屋の娘が、互いの心をそっと探っていた。



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