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豊臣ハーレム『豊臣秀吉、愛と政の合間にて──天下を取ったらハーレムがついてきた件』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
【第一章】『草履と初恋──日吉丸、恋と野望の始まり』

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第十話『わし、モテるで!……たぶん』

 草履事件から二日後。


 信長から「面白い田舎者」として目をつけられた日吉丸は、侍女や小姓たちの間でもじわじわと話題になり始めていた。


 「なんかさ、あの草履の子……ちょっと元気で可愛くない?」


 「うち、昨日声かけられたわ。『おはようさんです!』って」


 「素直すぎて、逆に腹立たんのよねぇ……」


 女中部屋の片隅では、そんな噂話が飛び交っていた。


 一方、当の本人である日吉丸は、そんな話にまったく気づかず、いつも通り小走りで雑務をこなしていた。


 「へいっ、米俵は裏の蔵へ! 薪は水場の横! 草履は忘れず、胸ポケットぉっ!」


 城中をせわしなく動き回る姿は、どこか子犬のようで、見ている方は思わず笑ってしまうほどだった。


 その日の昼下がり。


 「ほい、お茶やで! こぼさんようにな!」


 同じく小者見習いの女中・おりんが、お盆に乗せた茶器を運んでいた。


 彼女は城勤めの娘の中では小柄で、よく緊張して動きがぎこちなくなる子だった。


 「だ、大丈夫……こぼさないように……っと……きゃっ!!」


 突然の段差に足を取られ、盆が傾いた。


 「あっぶな──!」


 反射的に日吉丸が身を投げ出す。


 ざばっ!


 熱い茶が日吉丸の着物に降り注いだ。


 「うおおっ!? 熱っつ!! ……けど、まあ、誰にもかからんかったで、セーフや!」


 「ひ、日吉丸さま!? ご、ごめんなさいっ!!」


 顔を真っ赤にして震えるお凛。


 「ええってええって、着替えればすむ話やがね」


 その場に居合わせた侍女の一人が、笑いながら言った。


 「ちょうど替えのが女子用しかないけど、それでよければ」


 「女子用ぉっ!? ……いや、しゃーない! 着るで!」


 というわけで。


 数刻後。


 「──な、なんでわし、裾こんなヒラヒラしとるんや……!」


 袖の広い、白と薄桃のあわせ着。

 腰紐が妙に締まってて、胸元もゆるい。

 それを着て現れた日吉丸の姿を見て、女中たちがどっと笑った。


 「うそ、かわいい……!」


 「ちょっと、普通に似合っとる……!」


 「男子やのに、なんかええ匂いしそうってなるの、ズルくない!?」


 日吉丸は顔を真っ赤にして、袖で顔を隠した。


 「うわぁぁぁ! 笑うなやぁぁぁっ!!」


 そのとき、後ろから声が飛んできた。


 「おまえ……城でモテる気ぃあるんか?」


 振り向くと、そこには信長がいた。


 「の、のぶ……信長さま! ちがっ……これには深ぁ〜い事情が……」


 「ふっ、まあいい。女子の衣でも似合えば、それも才覚のうちだ」


 くるりと背を向けて去っていくその背中を見つめながら、日吉丸は思わず天を仰いだ。


 「わし、これから……なんか、どえらいことになりそうやて……」


 その予感は、正しかった。

 この日を境に、清洲城の“ハーレム物語”は、静かに幕を開けていたのだった。



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