退屈
私の調査対象の鳥の巣頭が、城壁の修復工事に出掛けてしまって、少し、退屈。
仕方ないので、エド様を調査。
留学、というくらいなので、大学にでも入るのかと思っていたら、幼少児クラスで勉強している。栄国語は、お兄様や鳥の巣頭や、オーリという女の人に教わってきて聞く、話すはなんとか。書く、読む、が、今一つらしい。
そう言うと、私のお兄様は凄いわ。ブリア国に普通に留学したし、読み書きもばっちり。フール語やイリア語、属州の方言や、北方、遊牧民の言葉まで、、、、完璧じゃないの???まあ、、、小さい頃から一緒のシーハン義姉様も、ばっちりなんだけどね。
鳥の巣頭は読み書きしてたわ。しかも、、、意外と字も上手。
癖字の書記官の文章も何なく読んでいたし、、、、何者?
まあ、いい。気を取り直して、エドを観察。
科挙を取って、役人になろうという意欲満々な子供たちに囲まれて、ニコニコしながら授業を受けている。指名されて教本を読んだり、質問されたり、本当に他の子と同じ扱い。分からないところは、隣の子に聞いている。
・・・・・何しに来たのかしら、、、この人、、、、
もう一度、お昼頃に覗いてみたら、学生用の食堂で、同級生の子供たちと一緒にご飯を食べていた。食べ終わると、五目並べをして遊んでいる。覗き込んでいる私を見かけると、にこやかに笑って手を振る、、、、
・・・・・ほんとに、、、、、
毎日観察に行ったが、あまり面白くない。
「どうしたの?スイラン?」
「・・・・お兄様、そろそろ、1か月になります。工事現場で真面目に働いているかどうか、観察に行ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、トーマ君?いいよ。長旅になるから侍女も連れて行きなさい。将軍には言っておくから。ふふっつ。退屈したんだね?」
「いえ、視察でございます。」
「そうだね!視察!我の代わりによろしく頼むよ。許可証は出しておくからね。」
*****
お泊りのお出かけなんて久しぶりです!何年ぶりでしょう!
兄上にくっついて、属州の首長の結婚式に出掛けて以来かしら、、、、うふふっ
側付きの官女を10人、将軍の他に護衛を30人連れて出発!馬車が6台。何台かは荷物用なのですって。行に2日、滞在2日、帰りも2日、、、、結構な長旅?
馬車は王都を抜け、、、、ない。なかなか。
「まあ、公主様、先ほど出発したばかりではありませんか。」
ようやく抜けたかな、、、庶民の家並に替わる。庶民用の市場がある。店もある。
だんだんと、畑とかが見えてくる。もうしばらく行くと、牛が草を食んでいた、、、
「牛ね?牛!痩せてるわねえ、、、、美味しいのかしら、、、、」
「まあ、公主様、あれは農耕用の牛でございますよ。」
「あら、、、、そうなの?働いている牛は、あんなに瘦せているのね、、、、」
そうか。働くと痩せるのか?
そう言えば、農民も、宮城を行き来する男たちの半分くらいしかない。
鳥の巣頭は、、、、元々《《きゃしゃ》》な体つきだったのに、、、もっと痩せているのかしら?
想像してみると、、、ほぼ骨と皮だ、、、、大丈夫なのかしら?
いや、、、改修工事の現場になんかいないのかもしれない。もう、とうに、遊牧民族の長とかが迎えに来て、さらば!とかいって、砂漠のかなたに消えたかも???
あの、、、鳥の巣頭と見た、だだっ広い、、、どこまでもどこまでも続く砂漠、、、、
うとうとしていたらしく、お昼でございますよ、と、肩を叩かれた。
先に出立したものが準備してくれていた天幕で、お昼ご飯を軽くいただく。
座りっぱなしも、、、疲れる。
行けども行けども畑ばかりだ。時折、小さな集落があるくらい。
城壁ははるか遠くに見える。
お昼ご飯を食べたので、また眠ってしまった。
途中のほどほどの大きさの町で、一泊。
このあたりの長の屋敷を明け渡してもらったようだ。
翌朝は街道をそれて、北へ向かう。夕方には工事現場に到着する予定らしい。
馬を休ませたり、休憩したりして、陽が沈む前には着いた。
馬車から見ていると、5.60人のむさくるしい男たちが、汚い身なりでレンガを運んだり、積み上げたりしている。監督するのであろう役人らしい男が、書類をもって立っている。
・・・・・こんなところに?
将軍が馬から降りて行って、その役人に何か聞いている。ぺこぺこしていた役人は、この先を指さしている。
「この現場ではないようで、もう一つ先の現場にいらっしゃるようです。参りますか?明日にいたしますか?」
将軍が、馬車の窓越しに聞いてきたので、まだ陽もあるので、行ってみましょう、と答える。
4里ぐらい進んだあたりで、次の修復現場に着いた。
例によって、将軍が下りていき、役人と話している。
その間、仕事をしている男たちを眺めていた。茶髪の鳥の巣頭、、、すぐに見つけられるだろうと思っていたが、みんな手ぬぐいをかぶっていたりするので、髪の色まではわからない。ひょろひょろの、、、鳥の巣頭、、、どこかしら?
しばらくして、将軍が一人のガタイのいい男を伴なって、馬車に向かって歩いてくる。何か楽しそうに話している。
やっぱり、、、、いなかったのかしら?
馬車に近づいたその男は、被っていた薄汚い手ぬぐいを取って首に回すと、
「公主様、ようこそ!お久しぶりですね?」
と、笑った。え???
「お前!は、、、、」
「は?」
「裸で挨拶なんて!無礼者!!!」