出発
最近、どこに行くにもハオランの妹さんが付いてくる。
接待のつもりなんだろうか?まあ、、、別に気にならないからいい。
書庫にこもっていても、自習室で物を書いていても、庭を散歩しても付いてくる。
今日は、、、まさかだったけど、城壁の見学にも付いてきた。
本人も初めてだったらしく、楽しそうで何より。
フールのチョコレートを上げたら、嬉しそうに食べていた。もっと取っておけばよかったかな?小さい子は、甘いものが好きだから。
「そんなに、《《もるたる》》っていうのが知りたいなら、現場に行ってみたら?今日は嫌よ。」
スイランが言った言葉が、すとんと腑に落ちる。行く?そうだね!
今日の見学は有意義だった。
王都に一番近い城壁だったが、そこから100里のところで、修復作業しているらしい。見逃せないよな。
「ハオラン、僕、城壁の修復作業に行きたいんだけど。いいかな?」
「修復工事の見学か?いいぞ。」
「・・・いや、、、、修復工事現場で働きたいんだ。」
「・・・・・??」
「実際に作業に従事したほうが、本を読むより早い。」
「はあ、、、、おまえはやっぱり面白いな。いいぞ。お前の弟がいい仕事をするようで、宰相が喜んでいたからな。どのくらいだ?」
「・・・雪が降り出す前まで仕事があるらしいから、それまで。」
「・・・2か月か、、、まあ、、、、、良いぞ。」
「ああ!ありがとう!!」
僕は早速、作業員として城壁の修復工事現場に向かうことにする。嬉しい。
「エドは?」
「奴は予定通り、学校に通うらしいぞ。見学に行っていたんだが、どうも、栄国語の読み書きに不安があるようで、法科の幼少児クラスに通うらしい。奴らしいな。」
「ぷぷっつ、らしいね。しかし、法科では、、、付いていけるかな?栄国の法科の教育水準は、、、、高すぎるよね?」
「ああ、幼少児をあまくみると、後悔するな。まあ、奴なら大丈夫だろう。」
*****
出発前に、エド君の教室を覗いてみる。
小さい子たちに交じって、一人だけ大人が机を並べている、、、、
分からないところは、素直に隣の子供に聞いている。そういうことが出来るのが、、、、あの人の凄いところだと思う。
分からないことは、知ってる人に聞く。
出来ないことは出来る人にお任せする。
一度信用した人は信用する。
ブリアの学院にいる頃は、、、
努力嫌いな怠惰な奴かと思っていたが、、、、
授業参観のように、教室の後ろでそっと見ていたが、、、その僕を、そっと見ている子がいる。思わず、笑ってしまう。
しかし、さすがに工事現場には来ないだろう。
振り向いて、声を掛ける。
「くーにゃん、僕は城壁の修復工事現場に行くことになったんだ。しばらくいないけど、お元気で。」
急に話しかけたので、柱の陰に隠れそびれた彼女は、コクコクと頷く。
ハオランに聞いていたんだろう。
さて、出発。




