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目的

後宮の催事は、一週間続いた。

国元に持ち帰るものがほとんど無くなる。

毎度ありがとうございます。


あとは、栄国国内で絹製品だのお茶だの、鼈甲の加工品だのを仕入れて、来た道を戻りながら売りさばいていく予定。

ブリア国内で注文を受けてきた反物なんかも仕入れる。ここの絹は絶品だから。


僕は、栄国の学校にエドと入ることになっているが、弟が、、、どうも商売の道に入る気がないらしく、気が乗らないというので、ハオランに頼まれていた財務管理の仕事に放り込むことにした。どちらかと言うと、僕より向いているかも。

ハオランに了承を求めると、快諾してくれた。事務官補助の制服が早速用意された。


帰り道の仕入れは、もともと隊長と隊員たちで十分なのだ。


「ああ、あとね、今、領地で染めている絹で、室内履きとか、小物とか、寝間着とかを作ったらどうかな、って、言付けてくれる?ドレスに仕立てるには、いまいちだから。」

「ああ、いい考えですね。伝えます。他には?」

「うーーん、何かあったら、次の催事で伝えるよ。この国は、手紙はてんで信用できないからね。」

「はい。了解。じゃあ、坊ちゃんも体に気を付けて。ルーカス坊ちゃんも長丁場になりそうですかね。」


商隊を見送って、手を振っていると、、、今日も小さな視線を感じる。つい、笑ってしまう。


ここのところ、毎日だ。


屋敷で見るふわりとした栄国式のドレスではなく、姑娘のようにパンツスタイルで、髪も邪魔にならないように両脇でくるくるお団子に丸めてある。それでも、使っている生地は最高級品の絹だな、、、年相応な、13歳の好奇心丸出し、って感じ?



*****

メインイベントの催事も上々に終わり、後は、この国の学校が始まるまでの少しの間、城壁を見に行く許可は取ってある。


この国には、騎馬民族と砂漠の砂の脅威から国を守るための長い長い城壁が築かれている。もう、千年にもわたって、建築と修復が繰り返されている。この国を、正に守ってきたのだ。北の果てには天然の要塞とも呼べる山脈が連なっており、北の国からの侵入を拒んでいる。その延長に築かれている。


僕は、、、、ハオランについてきたのは、この城壁を研究したかったから。


城壁は、当然ながら、軍の管理下にあるので、中々近寄れない。ましてや、観察なんかしていたら、怪しい奴だと拘束されるだろう。


建築方法と、改修方法、なぜこんなに長い間、強固なままでいられるのか。


国内や、イリアやフールでの建築は見てきた。建物や橋、水道橋、古代に舗装された道路、、、、、

栄国の城壁は、、、千年物。別格だと思う。



そのかわり、、、、

ハオランは、異国人の僕の視点で、今の栄国の統治を見てほしい。と。


賢王とよばれた先帝の統治。ハオランの祖父だね。


現帝に継がれるときに出た条件は、ハオランが18歳になったら譲位すること。

その代わり、、、後宮に女を集めるのを拒まないこと。退位後も、その生活を維持できること。

宰相は絶対に動かさないこと。



政治は、、、なんと、当時10歳のハオランがすでに議会に出ていたらしいし、宰相は手堅く政治を仕切ってくれたので、回る。

ただ、、、、自由にしていいという女の数がハンパなく増えてしまい、国費を圧迫しているらしい。年に何人かは、実家に帰るか、下賜されるんだけど、いなくなった分くらいは、また、献上されるらしい。


僕の弟が使われているのはこの資産運用。金額が違うから、桁が、、、、全然。この前会ったら、スゴク楽しいらしい、、、

「国家秘密かもだけど、、、、お金のやりくりが大変で、、すごく楽しいよ。」

宰相は、いい人材なら出身問わず起用しているらしく、財務管理、政務関係の事務官は、本当にいろいろな人がいる。弟の金髪碧眼も、誰も気にしていないらしい。

ここがしっかりしているから、《《あの》》州代表の議会でもなんとかなっているんだろう。


僕たち兄弟は、もともと商人の父の影響で、公用語はもちろん、イリア語、フール語、栄国語、、、、寝言で言えるほど教育された。領地では、亡命者や移民なんかを積極的に受け入れていたから、先生には事欠かなかったし。母に社交も仕込まれた。

帳簿はもちろん、商売にはなにが役に立つか分からないから、と、父はいつも楽しそうだった。


無駄な経験はない、っていうのが口癖。


学院でハオランと知り合えたのは、ラッキーだったのかもね。

あ、エドともね。



それにしても、、、、

賢王と呼ばれた人の大誤算???


ハオランでなくても、不思議だ。

実際、、、実の父が、酒と女にしか興味がなく、金使いたい放題。挙句に政治になんの関心もない、、、、僕も父がそんなんだったら、、、、尊敬はできないな。


息子の出来の悪さに辟易して、政治から目をそらさせるときによく使う手段だよね?


と、エドが言っていたが、、、ハオランには申し訳ないが、、、本当に、、、この人しかいなかったの???と、思うほど、聡明さ、から、遠くにいる人らしい。


先王の思惑はどこにあるのか?

思惑ねえ、、、

実は現帝が切れ者で、何か目論見があるとか???



出発までの数日間、書庫で歴史書などを眺める。

たまたま、弟を伴なって、書庫を訪れた宰相に挨拶をする。

「ほお、君がな、、、」

「・・・・・?」

「池の睡蓮が綺麗に咲いて居たなあ、、、君は見たかい?」

「ええ、、、素晴らしい庭ですね。」

「君は知っているか?イリアの睡蓮の花言葉、、、、まあ、いいか。」


足早に去っていく後ろ姿を見送る。弟が、軽く頭を下げる。

花言葉ねえ、、、意外にロマンチストだなあ、なんて思う。








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