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催事

今日から、宮中の市が始まりますわ!

年に2回の、後宮に住まう女たちのお楽しみ!

私ももちろん大好き!!お天気も良くて良かったわ!


母上と一緒に一番乗りです。

もちろん、屋敷に呼びつけることも出来るのですが、このごった返した開放感が楽しい。後宮から基本的には出ることの叶わない女たちが、この日だけは、市を歩き回れるんですもの!と、言っても、母上の女官と護衛、私の女官と護衛が付くので、総勢30人ほどの集団にはなってしまいますが、、、、

それでも!この日ばかりはワクワクします。


母と並んで、あちらこちらと見て回ります。


絹の室内履きが可愛い。一つ買い。


女官たちも今日は、きゃあきゃあ言いながら見て回り、手に手に思い思いの物を取っている。

薄桃色の絹の反物を、母上が買って下さった。嬉しい。

献上品で反物は沢山いただくが、自分で見て選ぶのは本当に楽しい。


毎年、私のお気に入りのお店は、中ほどにある雑貨屋さん。ブリア国やイリアやフールの物をまんべんなく取り揃えており、商品には外れがない。

早速、店を眺める。宝飾品に、陶器に、、、、

今回も簪がたくさん並べられているが、、、私が気に入ったのは、、、大きな濃い緑の石がはめ込まれたもの。お値段も、、、びっくりするほどいい。先ほど違うお店で見た大きなサンゴとどちらにしようか迷っていると、、、、


「いらっしゃいませ。公主様、お目が高いですね。」


笑って声を掛けられた。

「貴方の、薄っすら緑掛かった瞳に、よくお似合いになると思いますよ?」


顔を上げると、、、なんと!茶髪鳥の巣頭?

なんで、こんなところに?

そして、、、いつの間に私の瞳を覗いたというの???


鳥の巣頭は、そっと箱からその緑の石のついた簪を取り上げると、私の結い上げた黒髪にひょいと刺した。


へ?


「うん、やっぱり、お似合いです。僕からプレゼントしますよ。」

と、こともなげに言って、笑った。


え?


後から押し寄せた女官たちに、愛想を振りまいている。

押し出されるように、母の元へ行くと、

「あら、よく似合うわ。いい買い物ができましたね。」

と、微笑まれてしまった。


何?何者なの?あの鳥の巣頭、、、、


気を取り直して、店内の陶器売り場に行ってみると、金髪碧眼の男の子が店番をしていた。あんまり、愛想がよくないみたいで、客も少ない。かわいい顔なのに。

よくわからない巨大な壺や裸の女の人の像や、、、あと、生地が厚めの手つきのカップなんかを売っている。売れるのかしら?少し心配になる。


文鎮に使えそうな、寝そべった猫の、変わった柄の陶器を一つ選んだ。


「兄さん!どうするの?お代頂いていいの?」


なんと!金髪の男の子は、鳥の巣頭に聞いている。

兄さん????


「ん?ああ、差し上げて!」

女官たちの対応に追われていた鳥の巣頭が、私の姿を見て、そう言う。


はい、と、不愛想に手渡された。


なんか、、、怪しくない?さっき、兄さんて呼んだわよね?

金髪碧眼の男の子の兄が、、、茶髪鳥の巣頭だなんて、、、、そんなことあるのかしら???しかも、、、この子も栄国語で話しているわ、、、

高貴そうだし、、、、、



*****


「お兄様!大変でございますわ!」


兄上の執務室には、いつも通り義姉上しかいない。

不在期間の議事録を読んでいたらしい兄上は、飛び込んできた私に驚いたようだが、いつものように、にっこりと笑った。側使えの女官はドアの外に置いてきた。


「おや?素敵な簪を見つけたんだね。よく似合うよ?」

「・・・ああ、、、、」

そのまま市から真っすぐここに来てしまったので、頂いた簪はそのままだった。

今は、、、、それどころじゃない!


「兄上、、、ブリアの王太子の従僕なんですが、、、」

「え?じゅう、、、、ああ、トーマ君のことかい?」

「そう!彼です!あれは絶対にブリアの間者です!!間違いありません!」

「・・・・・ほう、、、、」

「兄上のことも欺こうとしているに違いありません!!」

「おお、、、それは、、、大変なことだね?」

「そうです!市にも潜り込んでおりました!びっくりいたしました!

弟、とかいう、高貴そうな男の子も連れておりましたのよ!!もう!」

「・・・・・ほう、、、、」

「どういたしましょう?見張ったほうがよろしいかと。」

「・・・うーーーん、、、どうしようかなあ、、、我も忙しいし、、、そうだね、それなら、スイラン、お前が見張ってくれるか?護衛と許可書を出そう。」

「はい。必ずや、正体を暴いて見せますわ!!」

「ああ、頼もしいね。よろしく頼んだよ。」

「はい。お任せください!」


私は兄上の命を受けて、首を垂れる。


「この簪も、その男がよこしましたの。何かたくらみがあるに違いありませんわ!」


「・・・・ほう、、、でも、スイラン、、よく似合っているよ?」


よし。


絶対に怪しいあの男の正体を暴いてやる。

私は意気揚々と、兄上の執務室を後にした。




「・・・スイラン様、お元気になって何よりでございますね。貴方がご不在中は、とても静かにお過ごしでしたから、、、」

「ああ。外出の許可証と、護衛をすぐに手配しよう。楽しそうで何よりだね。

しかし、、、簪、、、、とはね、、、ふふっ」












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