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朝議

翌日の朝議をエドと見学に行く。

見ているところは、昨日、覗いたあの隠し窓だ。


「全然別の会議みたいだな。」

「ああ、みんな揃っているみたいだしな。」

いや、、、本来は揃っていて当たり前なんだけどな。


さっさと退席してしまった皇帝陛下に替わって、不機嫌そうに議事を進めるハオランを眺める。

傍らには、シーハンが控えている。

議会で王に王妃が付きっ切りとか、、ブリア国では考えられないことなんだろうけど、、、シーハンは微動だにせず、議場に集っている男たちを見ているようだ。


「栄国語、聞き取れそうか?」

「ああ、先生が良いからな。」

と、エドが笑って見せる。


「じゃあ僕は、催事の用意を手伝いに行ってくるからね。夕刻までには戻るから。」

「ああ。」

エドと国元から付いてきた近衛団長を隠し部屋に残して、出かける。


今日から、宮中での市が始まる。


早朝からうちの商隊も出店の準備をしている。

大きなテントを張って、テーブルを組み立てたり、商品を効果的に並べたり、、、

今、うちの領で父が取り組んでいる布地の製作はだんだんと軌道に乗ってきたが、絹織物の質は、栄国の産地には足元にも及ばない。一応反物で持ち込んではいるが、上位妃には見向きもされないだろう。代わりに、、、、栄国にはない染を施してみたり、、、例えば、濃淡でグラデーションを付けて見たり、、、まあ、発展途中だ。


金物の町で作らせた銀の簪に、自領で宝石を装飾を施したものを、今回は大量に持ち込んでいる。これは、ブリア国からの栄国の妃たちへのおみやげ品だが、、何せ皇帝陛下の妃は100人以上いるらしく、用意も大変だったが、売り上げも上がった。エドに感謝だな。

そのほかに、販売目的の簪がある。これは、額が違うものから、庶民でも手に入りそうなものまで。安いのは、入ったばかりの下働きの者も買える値段だ。


僕が王都の学院とアカデミアに通っている間は、弟のルーカスが商隊を仕切っていた。隊長、と呼ばれる父の片腕が、隊員を取りまとめしてくれている。


ルーカスは母に似て、金髪碧眼。髪は同じようにくるくるだが、高貴そうに見える。

僕は僕で、この自分の茶髪に茶色い瞳を気に入っている。目立たないし、顔も覚えられないという素晴らしいメリットがある。


上位妃は大概、朝が遅いようだ。


御寝坊な妃が来るのは、お昼過ぎだろう。


大体の段取りが整ったので、みんなに着替えを促す。高貴な方を迎えるのに、あまりに粗末な恰好では、高額商品は売れないから。

各々、こぎれいな恰好に着替える。お昼ご飯を交代で食べるように言う。


僕も、腕まくりしていたブラウスに、ベストを着て、ラペルピンを付ける。タイは、、、まあ、いいかな。


みんなにあとは任せて、弟と市をぶらぶらする。


もちろん国内からもたくさんの出店がある。州ごとに特産品を持ち込んでいる。

絹織物は、やはり絶品だ。とろけるような滑らかさが、見ただけでわかる。

簪も様々だ。鼈甲や、象牙、、、、宝飾品もサンゴやメノウ、、、、、

海に近い州からは、豪奢な貝ボタンなんかも出ている。

あとは、北の国から持ち込まれた毛皮。コートや、敷物。

砂漠の向こうからは、複雑な織の絨毯、、、、

もちろん磁器も。



「絹の室内履きかあ、、、いいかもしれませんね。」

並べられた絹製品を眺めて、弟が言う。

「ああ、うちで出す色味は独特だから、そう言った加工品のほうが受けるかもなあ。」


食べる物もたくさん並んでいる。

南国のオレンジとかレモンとか、、、その加工品とか。

魚の干物や、干し肉まで売っている。

御菓子類は沢山。隣国のお菓子もたくさん出品されている。


僕と弟は、出店で甘辛い肉が挟んである包子を買って、通りを外れた東屋で食べた。

フワフワの生地が、肉汁を吸って、美味しかった。


「僕は、、、兄さんみたいに、、、商人には向いていない。」

「・・・・・」

「16になったら、王城の事務官登用試験を受けようかと思うんだ。」


包子の包んであった油紙をもてあそびながら、弟が言う。


「そう?お前はなかなかいいセンスを持っていると思うけどね?まあ、お前の人生さ。誰も何も言わないよ。したいようにすればいい。」


父親は平民から商売を拡大して、他国と取引できるほどの力を付けた人だ。苦労はしたらしいが、、、、先の戦争で国に貢献したらしく、爵位と領地を頂いてはいるが、、、。

頂いた土地は大河の隣のやせた土地で、穀物も育たないようなところだった。

母も訳ありの平民だ。貧乏も気にしない、明るい人だ。

さっさと嫁に行った姉2人も、僕ら兄弟も、のびのびと育てられた。教育だけは厳しかったが、、、、


小さい頃からキャラバン隊についていくのが大好きだった。


・・・・弟も好きなのかと思っていたよ、、、、まあ、好きに生きればいいと思う。










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