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暗闇に咲く花の如く  作者: 蓮華
6/8

メロウの町 5

✿✿✿


地下が通じていたのは、館から湖を越えた先にある洞窟だった。リエフが木々の隙間から館を覗けば、遠目に引いていく小隊の中に自らの師を認め、心配に息が詰まる。


「…町に戻らないと」


迂回路から町までは遠くは無い。

木々の間を縫って地を蹴れば、いつもより速く景色が流れて行った。


(……!風の精霊…)


賢女からの後押しだと、瞬時に理解出来た。

あの1団が町に戻るより早く、シフォンを家へ返さなければいけない。

…今日この館にシフォンが居た事実を、無かったことにしなければならない。

その一心で、リエフは丘を駆け下りた。


「おーい!リエフ!」


町の裏路地まで入り込み、そのまま裏道を進んでいく。背後から掛けられた声に身を竦ませて振り返れば、顔なじみのそれに力を抜いた。


「ルダ…!」


「シフォンどした?寝てんの?」


ありゃ、爆睡。と肩を竦めたのは、リエフと同い年のルダ・サマラス。人懐っこい笑みを浮かべる彼は、商人の父譲りの社交性を持っている。そして、リエフの唯一無二の友だった。


「ルダ、頼む。ここで俺らに会ったことは忘れてくれ」


「なんでまた…」


「…詳しくは…」


悲壮感に似たそれを漂わせるリエフと、昏々と眠り続けるシフォンを見れば、問い詰めることなど出来ない。

無条件にリスクを負う事は商人として最悪だが、友を助けるのに理由はいらなかった。


「…わかった。絶対後で説明しろよ。

他に手伝えることは?」


「ありがとう。子爵に伝令を頼みたい。

ばば様が侯爵に連れていかれたんだ」


この地の災いを振り払った時から、メロウ子爵家はヒメリナへの信頼が厚い。何か手を打ってくれるかもしれないと、藁をも掴む想いでルダを見据えた。

理解が追いつかない様子のルダに、もう一度だけ、すまない、と言い置く。彼の頷きを確認する前に、リエフはその場を後にした。



「おばちゃん!」


「どうし…シフォン!」


シフォンの家の扉を勢いよく開ければ、アリアが2階から走り降りて来た。余裕のないリエフの声と、その背に眠る娘に目を見開く。

そのままシフォンを抱き締めるように引き取って、鋭い視線をリエフへ向けた。


「何があったの。リエフは無事?」


「俺は平気。詳しくは解らないんだけど…」


胸の澱を吐き出すように言葉を紡げば、時折止まりつつも先程の事柄が語られていく。リエフの中でも整理がついてないそれは、まとまりがなかった。

ヒメリナが拘束されてしまった事や、シフォンが”光の子”であるとされた事…それらを理解した時、アリアは大きく息を吐いた。


「…シフォンが、”光の子”…」


「ねぇ…”光の子”って何。

ばば様は…無事だよね」


アリアは心配そうなリエフの頭を撫で、目線を合わせるために腰を落とした。

大丈夫。2人が戻ってきて良かった。娘を護ってくれてありがとう。

そんな眼差しに、リエフも少しだけ身体から力が抜けた。


「お茶をいれようね。解る限りお話するわ」


「え、でも…」


椅子まで背を押され、リエフは戸惑ったようにアリアを見上げた。

そんな時間はなさそうに見えるのだと意図すれば、アリアは小さく首を振る。


「リエフに聞いて欲しいの。

ヒメリナ様は…絶対シフォンに害なす事はないし、メロウ様もすぐ動いてくれるわ」


私達が出来ることは、ちゃんと事態を把握すること。その後に、必要な対応をすることよ。


真っ直ぐなその瞳に、リエフは背筋を正した。

アリアはいつも通りにお茶を用意し、とある神話の物語を諳んだ。


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