ぼくのかんがえた、さいきょうのゆうしゃ!!!!こうげきするとあいてに1おくのダメージ!!「さいきょうのたて」であいてのこうげきはすべて0!
「魔王様、勇者が最初の森に来ました」
「レベルは?」
「3です」
「まあ、まだまだひよっこってところだな」
魔王は自分の城で勇者を待っていた。隣には悪魔の使用人がいて、その使用人の不思議な力で勇者の様子を見ることができる。今勇者がいる序盤の森ではレベル3か4ぐらいなら突破は容易だろう。
使用人の悪魔は何か言いたそうにしているが口籠っているようだった。魔王は「どうした?と尋ねる。
「それが...」
「なんだ?いってみろ」
「いえ、なんでもありません」
「そうか」
「あ、勇者が森を突破しました」
「は?早くない?」
その森にはライオンのボスがいてレベルが適正でも数ターンはかかるはずだ。こんなにもあっさりと突破できるはずがない。次なる場所は砂漠のエリア。ここには無限に湧くサソリの魔物が立ちはだかる。こうもいかないはずだ。
「さあ、どう攻略する?勇者よ」
「もう砂漠を突破しました!」
「は?さっき森出たばっかだよね?早くない??」
「それが...」
「どうした?先程から何か言いたがっているようだな。言ってみろ」
「あの勇者のダメージ、おかしいんです」
「おかしいとは?」
「その...一発で1億ダメージを」
「はっ?」
1億ダメージとかいう何だか頭の悪そうな数字に魔王は驚愕した。ナンダそれは。小学生が考えるような「ぼくのかんがえたさいきょうのゆうしゃ!!」みたいではないか。
「今のレベルは?」
「4です」
4では砂漠クリアはいかに1億ダメージでも難しいはずだ。先に攻撃をされれば勇者の方だってダメージを喰らう。そのダメージもレベルが低ければかなりのものになるはずだ。しかもそれぐらいのレベルなら先制で1億ダメージを与えるより一度攻撃を受ける方が多いはずだ。魔王は頭を抱えながら恐る恐る聞いた。
「その...攻撃受けるはずじゃないのか?」
「それが...全部ダメージが0になるそうで」
「はあ...」
何だか魔王は頭が痛くなってきた。もう発想が子供の考えるソレでしかないのだ。
「いやまだだ!ナイトウィスプがいるじゃないか!!」
「その手がありましたね!」
ナイトウィスプはこの先に出てくるお化けのような魔物だ。こいつは攻撃が効かない。魔法でしか倒せないのだ。魔法でしか倒せなければあの勇者も何もできまいと魔王は考えたのだ。
「早速突入しました!」
「よし!ナイトウィスプは?」
「いま、ナイトウィスプと遭遇して攻撃が効かないところで困っているようです!」
「そうだろうそうだろう!!さあどうする?」
「はっ??」
そう素っ頓狂な声をあげて悪魔は黙ってしまった。何だか魔王はそれだけで嫌な予感がしたが、一応聞いてみる事にした。
「えっと...何が?」
「ウルトラスーパーグレイトフレイムファイアー」
「はっ?」
ナンダその子供が考えてそうな名前は。もう何でもありなところがもうどうしようもない。
「いかが致しますか?」
「いやいかがもクソもないだろ!なんだそのひどい名前はフレイムファイアって炎2つあるじゃねえか!」
「あ、どうやら状態異常無効もついているようですね」
「もうなんでもありだ...いや元からそうだったけど」
「レベルは4...真面目にレベル上げすらせず突き進んでいます」
「そりゃそうだろうよ!あんな『ぼくのかんがえたさいきょうのゆうしゃ』を体現したようなやつなんだから!」
魔王はどうするかと考えるがどうしようもない。あんなのと対峙すれば攻撃は与えられないし、相手の1億ダメージとやらで一発だろう。と
「いうか1億ってなんだよ!この世界にそんなHPあるやつなんているわけねーだろ!裏ボスですら9万だぞ!」
「その裏ボスに接触を!」
「嘘だろ...?あそこは我を倒さないと通れないが...?」
「ウルトラスーパー...で扉を破壊しました!そして裏ボスも倒して..仲間に!」
裏ボスは倒せば仲間になるように設定されている。裏ボスというだけあって魔王よりかは強い。なのであのやばい勇者1人でもアレなのにそんな裏ボスが加わり手がつけられなくなってしまったのだ。
「はあ...まあとりあえずこちらに迎え入れよう。この調子で行くと後それぐらいだ?」
「3分もかからないでしょう」
魔王は無理だとは思うが向かうつ事にした。もうすでに考える事を放棄しなるようになるさのような感じで突っ込んでいくしかないと考えたのだ。そもそも何でもありのあの勇者に考えて勝てるはずがないのだ。とどのつまりはヤケクソ。
「さあ来い!」
「えっ!?」
「今度はどうした?」
「それが...魔王城にきたのですが裏のスイッチを押すっていうギミックがわからず帰って行きました」
その言葉に全ての力が抜ける。そして魔王はフーッと息を吐きながら天井を見た。
「ええ...本当に小学生かなんかなのか?」