第一話 “不吉な予感”
――瞬間。
皆が闘いの緊張から解き放たれ、笑い合っている刹那。
どんちゃん騒ぎの中というのも手伝って、誰もが気付かなかった違和感。
仮世界。奴を倒すためだけに創った、使い捨ての世界。
太陽などあろうはずもない。
なのに、我らが頭上には、煌々と輝く太陽が我らを照らしている。
我らが勝利を祝うように。
――そして、不吉な予感を知らせるように。
……誰かが、足りない。
この祝いの歓声の中、必要な人物が一人……いや二人足りない。
この違和感に、ひとり、気が付いて、スクと立ち上がった。
「総員、再び、戦闘準備だ……。対”しぃけーちき”よりも、強く警戒しろ」
ーーごちかわが再び戦闘準備の号令を掛けた。
「えっ……!?」
「オイオイ、ごちかわ、何だよ急に……」
「何を……ごちかわ、もう何もいないでしょ、何で……」
「ハハハ、また聖別戦とか言い出す気か?勘弁してくれよ、確かにもう力は万全だ。溢れ出る光が、この勝利の喜びが我らを癒してくれた。だが、もうちょっと浸ってようぜ」
「いいからっ、早く!!!」
皆に背を向けたまま、再び大声で鬨の声。
明らかに、冗談ではない張り上げ方だ。
「……まあ、そこまで言うなら……」
「わかった……」
「承知」
「おっけい、何が来ても、闘うよ!」
半数は渋々、半数は厳かに従い、戦闘態勢をとる。だが、まるで敵が見えてこない。
「えっと……ごちかわ……」
「皆、すっかり……忘れてたな…………。しぃけーちき三大幹部、最後の一人のことを…………!!」
ごちかわは上を見上げている。
……合わせるように総員も上を向き、
太陽のあまりの眩しさに目を細めた刹那……
「え……?!」
「……おい……」
「ちょっと……アレって………」
「…………!!」
そして、それらにタイミングを合わせるように、
ゆっくりと、そして仰々しく、
その太陽は降りてくる。
「ははは、参ったなあ。そんなに警戒するなら、正面から出てきてあげるよ」
声のみが響く。依然、逆光で姿は見えない。
聖騎士一同は、すっかり忘れていた三大幹部の最後の一人の存在を思い出す。
だが……あの大敵しぃけーちきを倒したのだ。
たとえかの“脳魔”レベルの敵でも、打ち破れるだろう。
そんな慢心があった。
だが、その姿が少しずつ顕わになるにつれ…………
総員の表情は、驚愕に……ある者は絶望に変わっていった。
そも聞き慣れた声。
そして見慣れた極光。
「ご、ごちかわさん…………!!三大幹部、最後の一人って……!!」
「……ああ。紛れもなく。アイツだ」
「……どうして……!!」
影が浮かぶ。影越しでも、優しく微笑んでいるのが分かる。
「となかわっ、さん…………!!!!!」
ついに判明する、最後の三大幹部。




