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MOZA-CHAN -モザちゃん-  作者: モザの者
第二章 ~蒼き世界アオタン~
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第十話 “過去”

「ぐっ…う、こいかわ!目を覚ますんだ!!君は…誰よりも愛にあふれる聖騎士だったじゃないか!!!」


「私は否定します。データにありません」


「フフフアハハ…無駄よとなかわ、もうあなたの声なんて届くわけないわ。それに、元“流星を纏う聖騎士”の権能は、あなたにとって相性最悪と言っていいでしょう?」


流星は、星々は、数多の滅びの果て、大きくなる。滅びに打ち克ち、強さを増す。

たとえ強大な敵に打ちのめされようと、諦めずに立ち上がり、闘い、勝ってきたこいかわ。


そんなかつてのこいかわの側面を知っているからこそ…いや、あるいはかつての旧友ならではの迷いゆえか、となかわは、決め手に欠ける。


そんな時、大きく膨れ上がったアオの背中に傷がつく。


「お前の相手は…この私よ!!」


「な…この…小娘がァ!!」


その場全体に響き渡るアオの咆哮と共に、無数の強大な蛇がモザちゃんを襲う。


「……!この蛇…私を……!」


「そう!!地獄の果てまで追いかけるわよ、覚悟しな!!」


「斬っても即座に再生して、私を追いかける…!ならば……!!」


モザちゃんがアオの周りに円を描くように高速移動し、()()違うように急旋回する。

追尾する蛇とモザちゃんの一直線上に、アオが居る。


「ハハ……こんな()()()()()が通用するとでも!?」


蛇がアオの身体を透過、すり抜けた。この蛇はアオには当たらない仕組みになっているようだ。


「ええ」


アオの身体をすり抜けた蛇がモザちゃんに着弾したかと思えば、モザちゃんはそこから消え、直後にアオの背後に現れた。


「なに…!?」


焦りその場から飛びのくアオ。しかし、腹にくっきりと光る傷がつけられていて、“悪球”を抜かれている。


まずい…まずいわ…

この女、“光の力”を使って分身を作っていたのか…!

それにしても恐るべきはその精度、完全に無機質に対象を追う我が邪蛇すらが騙されるとは…!こ、これ以上“悪球”を抜かれてはまずい……!


バッと、アオが左手を上げる。その手には禍々しい形をした“種”のようなものが握られている。不審に思い、モザちゃんがピタリと手を止める。


「な…何ですか、それっ、一体何をするつもり?」


「フフ…貴方も聞いたことがあるでしょう?“古代兵器”Kapppy(カッピー)。この種はそれを復活させることができるの…」


も…もちろんこんなの、ハッタリよ。()()()()()、ここで使ってしまったら取り返しがつかないわ。でも、こうまでしてでも…私は…私たちはここで終わるわけには…!!


「え…!?」


『な、ほほう、古代兵器Kapppyときたか』


『なるほど、妾の知らぬところであの女はそんなものを…、貴様程度の器には有り余るものじゃろうに』


『はは、あの女を甘く見るな。あれほどのモツモツを取り込んでヒトの姿を保っていることだけでも異例だ。そんな存在、モツモツの()()()()創生主、“モツモツババア”しかいないだろう。だが、Kapppyが今ここにある筈がねえ。あの女め、ハッタリだな』


「な…なんですって…!?Kapppyって…<“修羅の遺した裏世界(アノメ・ラドズパ)”>のこと…………!?!?ど、どうして今、ここにそんなものが…………!!とっ、となかわさんに知らせないと…でっでも…」


ちらととなかわの方を見る。となかわはこいかわを止めることに集中している。モザちゃんがどうなっているのかに気づいていないのか、いや違う。違うぞ、モザちゃんよ。となかわはお前を信じているんだ。活路を見いだせ。お前ならやれる。お前なら、きっと()()()()はずだ。


『ごちかわよ、そなたはあの二人を随分と信頼しているようじゃが、本当にどうにかなるかの?ああしている間にも“モツモツ”の力はますます増し、より与し難くなると共に助けられなくもなるぞ』


『ううむ…………そうだ。勝つだけじゃ意味がねえ。やつらを救って、“モツモツ”から解放して本当の勝利だ。こればかりは、奇跡に祈るしかねえ。』


『ほほ、奇跡に祈るしかないとは、そなたらしくもなく、弱気じゃな』


『何を言っている、それなら、簡単だろう。奴らは奇跡を起こす。奇跡がやつらのためにあるようなものだ、幾度も奇跡を起こしてきたあいつらの前には、些末なことだ。黙ってみているがいい』


「こいかわ…………思い出してくれ、あの日々を。アオに、君たちに、何が起こったのかはもはや、聞かない。だけれど、あの日守ると言ったみんなを、そして自分の心をも、傷つけるのはやめてくれ。………ごめんね、ちょっと痛いかもしれないけど…………」


<“光煌聖天心剛掌(スピアネルヴライト)”>


「……!!」


こいかわが声にならない悲鳴を上げる。金色に光るとなかわの右手が、ズブズブとこいかわの胸部を貫く。


「む…!!こ、これは…!!」


<“光煌聖天心剛掌(スピアネルヴライト)”>は対象の“魂”をその手で掴む技である。魂を浄化するためにとなかわが編み出した技であるが、昨今、魂そのものを攻撃する有効な手段として用いられていることに悲しみを覚えている。そんな技だが…………


…………あ…やっぱり…………やっぱり、か。いつから、こんなことが起きるようになったんだ…。


魂を掴んだ瞬間、夥しい数の情報が、アオの記憶、思いが伝わってきた。虚と戦ったときに似た現象が、またここでも起きた。無論、これはとなかわにとって想定外であり今までにないことだった。


『アオ…さん、もう、やめてっっ!!!』


こ…これは…この記憶は…………


『どうして?何度も言っているでしょう、魔物は絶対悪。そこに容赦はいらないわ。殲滅しなきゃいけないのよ』


『で…でも、その魔族はまだ何もしてないよねっ、もしかしたら、分かり合えたかも………それに、も、もう、死んでるよっ!』


『分からない子ね…』


こ…こいかわ!!間違いない………聖騎士として圧倒的な力を持ちながら、魔物達と分かり合おうとしてた、唯一の人間、こいかわだ…!!!


『ありがとう、アオさん、ピッタリだよっ!大事にするね、それにしてもこの靴、デザインが本当にかわいい…一生の宝物にするね!!』


『うわぁぁぁん、アオさん、ごちかわさんにひどいこと言われたぁぁぁ』


『やっぱり任務の後は甘いものに限るよね♪アオさんも、ほら、あーん』


………あの時の、こいかわの記憶だ。アオとのやりとりばかり、残っている…。やっぱり…アオは、こいかわが大好きだったんだ。じゃあ、…………じゃあ…どうして…………



……………………………………

……………………………………


一体、過去のこいかわとアオになにが————。

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