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MOZA-CHAN -モザちゃん-  作者: モザの者
第二章 ~蒼き世界アオタン~
19/53

第六話 "窮地"

「てっ、敵襲っ、敵襲だーーっ!!!!」


「ウウム、やはり来たか…。いつもどこから情報が漏れているのやら」


仕事をいったん取りやめ、手慣れた様子で防衛施設のスイッチを入れる。


大王の十字紋様の眼帯が光り、同時に、ガシャン、ガシャンと音を立つつ、その場の人造人間達が一斉に槍を構える。

槍にも同様に十字紋様があり、眼帯に呼応して緑色に光っている。


これがストガギスタ王国の誇る、据置型自動防衛ロボットだ。

普段は石油をくみ上げる装置として活用されているが、有事の際は防衛用ロボットへと成り代わる。


この王国の発展した技術と、ツーナ=シャーケ伯爵の知恵が合わさることにより発明された新たな元素、“ウ素”。


それによって簡単に、ダイヤモンドに匹敵する硬度の物質を創り出せるのだ。さらに、()()開もしにくい。


このウ素によって作り出された槍を、一心不乱に突き出す人造人間。

人呼んで、“ウ素突き人造人間(アンドロイド)”である。


その力はすさまじく、襲撃に来た多くの魔物達が、次々に倒れていく。


順調に撃破しておる。大したことはないな。この調子なら、奴らが居なくてもどうにかなりそうだ。

危険な感覚がしたが、杞憂だったか。

だが…だがだ。


「ストガー大王!!敵軍はもう壊滅状態です!!城に被害はありません、間違いなく、防衛成功です!!!」


「ガハハ、これが我輩らの軍の力よ!」


…弱すぎる。あまりにも弱すぎる、そして敵の数が少なすぎる。

こんな()()()少しの戦闘で、もう勝ちムードだ。


何かが…何かが引っかかる。おかしい。

いや、これは……!


「まさか、恐れていたことが…………!!い、いかん!!!」



……………………………………




ごちかわ本家、ごちかわとモザちゃん共に留守の場に、夥しい数の怪しい影がにじり寄る。

こちらが本命だったのだ。ストガギスタ王国を攻める舞台を囮にして、ごちかわとモザちゃんが不在の本家に攻めに入っていたのだ。


「こ…これはまずいですね…!」


「てっ、敵がいっぱいアルヨ…」


本家の警護にあたっているのは、本家直属のデザイナー兼メイド、上衛嗣 (かみえし)(つばめ)と、門番のムーズ・チェン。


本家をたくさんの魔族に囲まれ、どうやら、のっぴきならない状態の様子だ。


「ハハハア…、こんな、こんな脆弱なのを落とすだけか、楽な仕事だぜ」


髪の逆立った、人型の魔物を筆頭に、燕たちは取り囲まれる。


「く…!!」


「燕、こっちもモウ限界ネ…。」


「いや、まだだ、まだ勝機はある!!チェン、諦めちゃだめよ!!」


そう言うと燕は、トサカのような髪型をした魔族に背を向けて走り出したかと思えば、またも踵を返し、持っていた武具で、追いかけてきた魔族の腹を斬りつけた。


しかし、魔族には効いていない。それどころか、余裕を()()()()()()いる。


「ハハア…、今、何かしたか?無駄な足掻きを。逃げることも、俺達を倒すことも不可能だとまだわからないか…。お前たちはここでただ死ぬだけだァ」


最後の望みが潰えたのであろう燕とチェンに、とどめとばかりに魔族が突っ込む。その瞬間、辺りが虹色の光に包まれた。


「ふふ…かかったねッ!!!」


「何…?」


すぐにハッと気づき、足元を見る。


「な…!魔方陣か!いつの間にこんなものを…!!」


燕は、片手に持った七色のペンのような道具で、チッチッチ…、という動作をして、


「魔方陣?違うさ、これは私の作った<燕部屋(バメルーム)>!!逃げまどいながら、この“バメ・レインボーペン”で描いていたのよ!!」


「燕、頼んだアルヨ…!!」


「任しときな!!!」


チェンも同様に()()()()()()()のだ。シュタッと燕の元に寄り、詠唱する。


「邪悪な心の持ち主よ!!」


「とっとと、家に帰るんだヨ!!」


「「<ツ・バ・メ>!!!!!!!!」」


二人が叫ぶと、トサカの魔族の周囲が虹色に輝きだした。


「な…これは、何だ、これはああああッ!!!!」


「ふふふ…“ペンは剣よりも強し”…ってねっ!!」


ド ォォォォォォォォォオン!!!!!!!!!!!

トサカの魔族の叫び声の後、大きな爆発が起きた。


「…ふぅ、一件落着だねッ!!」


「…肝を冷やしたアルヨ…」


無事、リーダー格の魔物を倒し、二人は安堵した。

だが…


「ほほう。だが、これからどうするつもりだ?この状況を」


二人の顔が、一瞬にしてひきつる。

基本的には、魔物は集団では行動しないのだ。


…ならば?ならば襲撃の際の、大量の魔物は?


「………そんな…!まさかそんなことが……!!」


それらはいわゆる“使い魔”に分類される魔物である。必ずどこかにそれを使役する“魔族”が居る。使い魔も“魔物”の括りに入るが、多くの点で差異がある。


「まずいアル!燕、アナタだけでも逃げ…!」


使い魔はそれを使役している魔物が倒されると跡形もなく消失する。初めに魔物の大軍を見た燕とチェンは、それが多くの使い魔の集合だと思い、リーダー格の魔物を倒す判断に出たのだ。


「させねえよ?まだ逃げられると思っているとは、なかなかおめでたい考えを…」


「ククク」


「クハハハハ」


しかし。あのトサカの魔族を倒しても、消えた魔物はほんの少し。それは、この大量の魔物の中に、いくつかの魔族が居たことを示唆していた。


「な…なんでッ!魔族は…いつも単独で行動するはずなのに…!!」


「ハハハハハ、“あの方”の命とあればな」


あ、あの方…?いや、考えてる場合じゃない。ひとまず、この状況を何とかしないと…!


ちらりと横目でチェンを見る。だがふるふると首を横に振っている。打つ手はなさそうだ。


「ハハハハハ…、覚悟せよ、人間。魔族の恐ろしさを教えてやるぜ」




……………………………………

……………………………………




「カカカ、久しいな」


「…………!!!」


一歩引き、身構える。導星メソで見た、あの京そっくりの騎士?が話しかけてきた。

追憶の景色ではない、“本物”が、導星メソの向こう側に居たのだ。


「何だ?忘れちまったのかな?この顔を」


「……貴様は」


()()()。対峙してみて、より明瞭に理解(わか)る。

魂の波長が同じだ。つまり…、


「貴様は、私の兄者か」


「ハッ!話が速くて助かるな、そうだとも。兄の顔を忘れちまったのではないかと心配したが」


「兄者よ…貴様は…………」


“魔門 朱眼(しゅめ)”。兄との再会。本来は喜ぶべき場面なのだろう。しかし、京は眉を険しくしたままだ。それどころか、さらに険しくなりつつある。


「なんだ?」


「“魔”へと堕ちてしまったのか。そうなのだな。貴様、許してはおけん。この手で葬ってくれる」


京が怒りをあらわにする。自分の肉親が、忌むべき魔族へと変貌してしまった、自分が倒さなければいけない、と。


「お、おいおい、京よ」


少し焦りながら、朱眼は宥めるように話す。


「どうした。話などする気は毛頭ないが、仮にも貴様は私の実兄。言い残したことがあるのならば聞くが」


京は既に剣を抜いている。轟轟しいオーラが煌々と発せられ、今にも斬りかかりそうな勢いだ。


「…ハハッ、京、何か勘違いをしているぞ。まるっきり、逆だ」


「何…?」


「この場所、この景色、この匂い。思い出さないか?懐かしい、と感じはしないか?」


京は少し押し黙る。思い当たる節があった。何かに惹かれ、ここに来た。そして、この場に懐かしささえ覚えたのだ。


「……それがどうした」


「察しが悪いな。つまり、京。お前こそが()()()()なのだよ」


どういうことだ、とばかりに朱眼を見据え、直後、察したように首を下ろした。


「……私は」


剣を下ろす。首を下ろしたまま、自分の左手を見つめた。…、私は…。


「カハハ、やっと理解したようだな。そうとも、京、お前は魔族としてこの地に生まれたのだ。だが人間として育てられ、人間として闘ってきた」


「……」


…嘘のようには思えない。間違いなく、私は魔族なのだろう。この地にも見覚えがある。すべてが()()()()。…ならば、私はなぜ人として…。


「分かるぞ、京。お前が人間として、王国の兵士として生きてきた理由が、知りたいのだな」


しばしの静寂ののち、京はこくりと頷いた。

知りたかったのだ。目の前の魔族を捨ておいても。自らの生い立ちとその秘密が。


「ハッーハハハッ!素直だな!ならば再び、先程のように導星(メソ)の深淵を覗くがいい。我と出会ったことで、京の記憶と導星の記憶がより深く()()()()ハズだ。今なら、さらに明瞭に追憶できようぞ」


言われたとおりに、導星を覗く。すると…。


「……!!!」


朱眼の凶刃が、京に伸びた。


「<朱色ノ凶鎌(シュメール・グォルグ)>」


「な…!!」


「ハハハ!!!京よ、教えたはずだぞ、『たとえ肉親だろうと、自分以外を信じるな』とな!!!」



「……そうだ、確かに、教えてくれた」


朱眼の繰り出した大鎌での攻撃を、京は難なく受け止めていた。


「…ほう、あの一瞬にて、総てを追憶したか…!!」


朱眼の言う通り、京はその一瞬にすべてを理解したのだ。過去の記憶、なぜ人間界に放り出されたのか、朱眼との会話の節々まで。そして、()()()()()朱眼の一撃を受け止めた。


朱眼は一切悪びれていない。まるでこうなることがわかっていたかのように。京もまた、反撃を取ろうとはしなかった。


「私は…、ニヤ王国の人々を滅ぼすために、幼子のまま送られた。だが、兄者たちの期待とは裏腹に、私は魔族としてのその力を発揮することはしなかった。それどころか、その力を人々を助けるために使い、近衛隊長にまでなった」


「そうだ。そうだったな。まるで人間のように育てられたお前は、まるで人間のように人情深くなりやがった。正義と称して、沢山の我らの同胞(はらから)を打ち倒してくれたな」


朱眼が少し語気を荒らげる。京は再び身構えた。


「———って、怒っているとでも思ったか?残念、何とも思ってねえし、嫌な奴らが居なくなって嬉しいくらいだ。だってそうだろ?厄介な奴らが居なくなれば、我の序列も繰り上がる。それよりもだ、京。折角追憶してもらったんだ」


「……何だ」


「再び、我らの元に来ないか?また一緒に暮らそうぜ。人間としての暮らしはこの際スパッと切り捨てて、こちらに来いよ。楽しいぞ?自分以外のことを考えることも、自分以外のために戦うこともしなくていいんだ」


ごちかわ総本家の行方、そして、京の決断はーーー。



いろいろと考えた結果、展開や、話の順序を変えました。

二章が終了したら、場面や展開などの調整を行います。今は少し展開などに違和感があるかもしれません。

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