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MOZA-CHAN -モザちゃん-  作者: モザの者
第一章 〜彼女の名はモザちゃん〜
1/50

第一話 “出会い”

※この物語はノンフィクションです。実在の人物・企業・団体には一切関係あります。


「どうだ、見えるか?」


「…はい!見えます!!」


「あれが、あいつらが“(シャドー)帝狼(エンペラーウルフ)”だ。どこからどうみてもヤバそうな見た目してるだろ?ところがだ、実際には想像の何倍もヤバい。その爪、その牙、そして力強さ。どれもその辺の影狼(シャドーウルフ)とは比較もできない」


「…っ……」


「怖気づいたか?」


「…い、いえ、問題ありません!こ、これは武者震いですから‼」


……ったく、この期に及んで虚勢を張るとは、ほんとうに大した奴だ。


「そうか、そうか‼なら問題はないな‼行って来い‼」


「…………い、行きます‼行ってきます‼」



……………………………………………………………………………………………………



MOZA-CHAN -モザちゃん- 第一話 “出会い”







カッ、カッ


「はぁっ…はぁっ…」


カッ、カッ


「はぁっ…ふぅ…」


カッ、カッ…


ここは、とある洞窟の、奥深くのこと。

普段は人間の寄り付かない、薄暗くじめじめとした洞窟。ここには"魔物"がよく出没するため、誰も寄り付かない。


そんな薄暗闇の中を、1人の少女がおずおずと歩く。額にはうっすらと脂汗が浮き、ときおり、きょろきょろと警戒するように周りを見渡していた。


少女はハイヒールを履いている。洞窟のゴツゴツとした地形も相まって、高い音があたりに響いている。


「ど、どうなってんのよこれ…いつまで経ってもたどり着かないじゃない…暗くてじめじめしてるし…歩き疲れた~~!…ハイヒールで来るんじゃなかった…うぅ…」


かれこれ2時間は歩いただろうか。薄暗くて、足元の見えない中、洞窟を歩いてきたのだ。傍目から見ても、疲れ果てていることがわかる。


「うぅ……帰りたい…」


思わず、弱音を漏らしたその時。


「……?」


自分の少し先に黒ずんだ「(もや)」が見えた。

…明らかに自然のものではない。


毛先が()()()。闇色のその靄は、直視しただけで心臓が激しく脈動する。

言い知れぬ、禍々しさと恐ろしさを感じる…


「……?なに、あれ…?」


彼女が黒い「靄」に気づいたのもつかの間、それは急激に増え、彼女の周りを囲うようにだんだんと近づいてくる。


…あっという間に、周囲が黒い靄で満たれてしまった。


「え、な、なに!?こ、来ないでっ!」


身体が黒い靄に包まれる。身動きが、取れない。

視界も奪われた。あまりにも急な出来事に、どうすることもできない。


「な…にこれ…っ、なんで急にこんな…ダメ…動けない…」


逃げなくてはいけない、だが逃げられない。動け、動け、動け。


でも駄目だ。身体が理解してしまっている。もう逃げられやしない、足掻くだけ無駄だ、と。


「う…苦しい…」


吐き気がする。頭が割れるように痛い。


「は……ぁ…誰か……!」


助けて………!!!!


彼女は掠れた声で、必死に助けを呼ぼうとした。


_____________その時、


目の前に、"光"が見えた。


暗黒に包まれた視界、闇色に蠢く靄、そして薄暗闇に囚われた自らの心を照らしてくれるような、

一筋の"光"が。


…まるで、彼女の助けを求める声に呼応するように。


「~~~~~~よぉぉぉっし!!!!なんとか間に合った!!!!!!」


この場に突如現れたその男は、(おもむろ)金色(こんじき)に光る剣を振りかざし、なにやら“呪文”のようなものを唱えた。


「<“晴光を謳う翼(ヴァルフロッテライト)”>」


その瞬間、"靄”は全てはじけ飛び、洞窟内が暖かい光に包まれた。


まだ、状況はつかめていない…が、顔をわずかに上げた際、橙色の髪、巨大な金色の剣が特徴的に見えた。


「え…あ…………」


た…助け…てくれた…の?


その大剣を大きく弧を描くように回し、すべての靄が消えたのを確認すると、ハハ、と大きな声で笑い、こちらへ駆け寄ってきた。


「大丈夫か‼お前を覆っていた“もや”はすべて飛ばしたぞ!!怪我はないか!?」


「え…、あ、は、はいっ!だっ大丈夫ですっ!危ないところを、その…ありがとうございました‼」


「そーーうか!!!それならよかった!!俺もこの“呪い”は早々にどうにかしないとって思ってたんだ。……それに、危ないのはむしろこれからだしな!!!!」


「の、呪い⁉そ、それに危ないのはこれからって…」


し・・・しかもこの人・・・やたらテンション高い・・・

さっきは一瞬だけ明るくなったけど、依然暗くてよく姿も見えないし…


訳がわからない…。色々なことが矢継ぎ早に起きすぎて、頭が回らない………


「知りたいか!!!なら教えてやる、本当にここからが正念場だからな!……いいか?よぉ~く聞けよ?一度しか言わないからな!!」


顔を至近距離まで近づけ、あいかわらず大きな声でまくし立てる。彼女は少しギョッとしたが、その男のあまりにも仰々しい話し方に呑み込まれ、息を飲む。


「…は、はい……?」


「お前は、もうすぐ、死んでしまうんだ」


「……ぇ」


え…?


「ん、もう一度聞きたいか?お前は…


「えっ!?えっ、ええええええええええーーーーーーーーっ!?!?!?ど、どどどどーいうことですか!!!わたっ私がもうすぐし、し、死ぬだなんて・・・・!」


「ハハハ!!パニックになってしまったようだな!…まあいい、簡単に説明してあげよう!

お前が今が囲まれたのは、<“亡靄(ゼヌ)”>。…これはまぁ、なんだ、誰でもわかるように言うとな、高純度の“呪い”が詰め込まれたシロモノさ。あんなモノに捕まったら最後、無事になんて済まない!!」


「でっでもッでもしししし死ぬだなんててて…‼」


あまりにも突然の宣告。パニックになってしまうのも当然であった。


「少年よ、生き残りたいか?」


「いっいまそういうの良いですって‼少年じゃないですし‼」


「はっはっは、それはすまん、ここで亡靄(ゼヌ)によって死んだ奴があまりにも多いもんだから、感覚がマヒしてしまっていてな!…ところでだ、辺りを見回してもみろ、見えるか?辺り一面の白骨死体が。」


うす暗くてよく周りが見えなかった洞窟内。彼によって照らされた後に見ると、彼の言う通り、白骨死体が辺り一面に散乱していた。


「こいつら、大昔のやつだと思うだろう?残念、すべて最近のヤツさ。亡靄の()()()()()を狙う魔物がたくさん棲んでいるから、風化が()()()速い!」


「…っ……‼」


体中に悪寒が走り、恐怖が体に叩きつけられた。

謎の黒い靄。明らかに普通ではない洞窟。辺りに転がる()()()死体。そして、呪い…。


「う、うぅ………」


「お、おい、何も泣くことないだろ!!ほら、一旦落ち着け、な? で、なんだ、このままだとお前は呪いでアイツらの仲間入りしてしまうわけだが…ええい‼説明している暇もない‼」


そういうと謎の男は、何やら呟いたかと思えば、手を先程のような光で煌めかせたと思えば、その手で彼女の胸を貫いた。


「っ…‼が…な…何を…………」

な、何…?私の心臓辺り…えっこれっ手がっかっ貫通してる⁉なっ何これっ、でっでも痛くない…どうなってんの…⁈



<“光煌聖天心剛掌(スピアネルヴライト)”>


「いいか、今お前の“御魂(たましい)”を握っている。気を緩めると一瞬でお陀仏だぜ?分かったか?まずは魂に力を()めろ!この場所に魂があるということを意識するんだ‼」


「…え、あ…」


なっ何⁉一体…


「はやく!!!力を籠めるんだ!!!」


「う…あ…うぅ……」


「おお!!()()()!!呻きながらではあるが、()()()()()!!筋がいい!!そうだそのままだ、じっくり自分の魂を感じろ・・・」


「……くっ、う…た、魂…」

な、なに…魂って、何よ…でもとりあえず、今はこの人を信じるしかない…………


「集中しろ、集中だ」


「っはぁ、はぁ……………‼」


「…………()()だ。」


男の掌が魂を強く握りしめる。


「っ‼‼‼」


「行くぞ、最後のプロセスだ‼今お前は、集中のために固く目を閉じているが、目を開けるんだ。お前の意志ではない。()()()開く。開かれる。そうして目を開けた刹那、自分の魂から力を借りるようにして、<“甦生(モ・ザ)”>と叫べ‼!」


「く…っ、は、はいっ!」

も、もう何が何だか…でっでもやるしかない!!


………………………………


急に辺りが静まり返る。洞窟の不気味な音、水滴の音、彼の声、自分の声、体内の耳鳴りや体の呻きに至るまで、須くが静まり返った。

その次の瞬間、


「…………‼」パチッ



「「<“甦生(モ・ザ)”>!!!!!!」



………………………………

………………………………





「驚いたな」


「……はぁっ、…はぁっ…………………………」


「この洞窟の様子を見に来てから幾度も()()で死んでしまう人々を見てきた。だから()()()()()()()でやってきたが…成功したのはお前が初めてだ!!!」


「そっ、それは良かったです…‼何はともあれ、生き残れるなんて…本当にありがとうございます‼」


「…ん?」


「え…?」


「んー、生き、あーー…」


「な、何ですか?そんな歯切れの悪い…」


「死んでるんだな~、これが」


「………………………………え?」


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