第6話 フェンリル(後編)
フェンリルを今回で倒します。
右手の拳に火を纏わせ全ての魔力を集中させ、満月を観て強化されたフェンリルと対峙する。
「ほう、刃物が通らなければ魔法に頼るしかないよなぁ? やってみな、無駄な足掻きだがな。」
「言ってろ、あまりデカい口開くと後悔する事になるぜ? うらぁっ!!」
「何っ!?」
俺はフェンリルの左側に回り込むと脇腹を殴り魔力を暴走させる。 すると拳の先から炎が荒振り大爆発を起こすとフェンリルの巨体は爆風で遠くに吹っ飛んでいき、木々を薙ぎ倒し煙が立ち込める。
「はぁ……はぁ……やったか? 痛っ……慣れない事すんじゃねーな……これじゃしばらくは右手で物掴めねーや。 ん……、おい……嘘だろ………!?」
「フハハハハハハ! だから言っただろう、無駄だとな!!」
立ち込める煙にシルエットが映り、煙が払われると中からは傷一つ付いていないフェンリルがその姿を現す。
(くっ、無意識に魔力を手の事を考えて加減しちまってたか。)
「さぁて、次はどうする? 来ないならこちらから行くぞ?」
「くっ……。」
(万事休すか、いや……まだ手は有る!)
「逃げるか……賢明な判断だが遅過ぎたな!!」
俺は電流を身体に纏い身体能力を強化すると森へと入り、攻撃を躱しつつナルデナ洞窟へと向かう。
「当たるかよ!」
「何時まで持つかな?」
木々に跳び移りながら俺はフェンリルの爪を躱しながら巻き起こる暴風を利用し、速度を上昇させるとナルデナ洞窟が見えてきた。
(よし、あの中にさえ入れば!)
「!?」
そう考えた矢先、大木が俺の横スレスレを飛んでいきナルデナ洞窟の入口にズドーンと打つかり入れなくなってしまう。
「成程な……確かに俺様は満月の光が完全に遮られると元の姿に戻りパワーダウンしちまうが、その逃げ道さえ塞いでしまえばテメーも為す術もなくなるだろう?」
「お喋りな奴だ……、もう勝った気でいるとはな。」
(あんまやりたくなかったが、これ以外にこいつを倒す手段ら無いか。)
「再び鬼ごっこか? もう諦めて楽になった方が良いんじゃないか!」
「そこだ!!」
再び俺は木々に跳び移りながら攻撃を躱し、最後の手段を使うタイミングを見計らう。 フェンリルの爪と暴風で木々が倒れて行き、次にフェンリルが大きく口を開いたのを見逃さず俺は喉奥へと入る。
「バクン! あぁ? 何だぁ、自ら俺様に喰われやがった……そんなに爪で切り裂かれるのが嫌だったか?」
しばらくフェンリルはルーズベルトの行動の意図を理解出来なかったが、電流が流れていた事を考え次第に不安になり表情が青褪めていく。
(まさかこいつ! 今すぐに吐き出さなくては!!)
「言ったろ、デカい口開くと痛い目見るってよ………うらあああああああっ!!」
「うぎゃああああああああ!!」
俺はフェンリルの胃の中で電流を流し、内側からダメージを与え胃液の水分を利用し内側から焼いて行く。
「まだまだああああ!!」
「ぐわああああ! 止めてくれえぇ、死んじまう!! 謝る、謝るから許してくれえぇ!!」
フェンリルは内側から焼かれる痛みに耐え切れず、その巨体は地面をゴロゴロと転がり暴れ、命乞いをするが二人の命を奪った事を俺は許す気はない。
「くたばれええええ!!」
「あが……、ぐが……が………………。」
胃袋の中に居るからか、フェンリルの心音は次第に小さくなりズウゥンと巨体が倒れる音が聴こえると胃液も無くなっておりこんがりと肉の焼ける匂いがしてきた。
「はぁ……はぁ……、やっとくたばったか雑魚め!」
俺はフェンリルの中から、肉を食べながら外へと出ると周囲の木々が転がっているのが解る。
「こいつが暴れたせいだな、しっかし小鬼の肉は不味かったけどフェンリルの肉って臭みは有るけど食えなくはないな。」
フェンリルの肉を食べ終えて、囀り草の有る場所まで戻り、幾つか手に取りマガル族の郷へと帰る。
「おーい、郷長……取ってきたぞ囀り草。」
「…………!?」
「ルーズベルト! 酷い怪我ではないか、何があった!?」
「何だって良いだろ? そんな事より薬作ってくれ、俺は用が済んだし出て行くから……。」
俺が出て行こうとすると竜人族の少女に腕を捕まれ、振り返ると涙目でふるふると首を横に振って郷長と俺の顔を交互に見ている。
「はぁ……、しゃーないか怪我人を追い出す訳にもいかんしな今日は泊れ!」
「俺が居たら不都合じゃないのか?」
「構いはせんよ、他の連中は“幸福の國”などという胡散臭い話しを鵜呑みにして出て行きおったからな。」
「幸福の國?」
「何でもない、飯は適当に喰っとれ薬を作るのでな邪魔だけはするなよ?」
「分かってるよ、ん……どうした?」
郷長との会話を終えると竜人族の少女は俺の右手を心配そうな顔で見ていた。
「あーこれか、少し痛むけど大した怪我じゃねーから心配すんな。」
「…………。」
「え、何だ怪我が治って行く?」
竜人族の少女は俺の右手を両手で包むと火傷の痕がみるみるうちに治っていった。
「凄いな、有難うな治してくれて。」
「…………。」
一日で色々有り過ぎたせいか、急に疲れが一気に押し寄せ俺は深い眠りについた。
そして翌朝、布団がかけられており竜人族の少女が俺に抱き付きながらスヤスヤと眠っていた。
「すー、すー。」
(何で抱き付いてんだ? はぁ、昨日の疲労で起き上がれねぇ……おまけに全身筋肉痛だし。)
「ん……、チュッ……。」
寝惚けているのか竜人族の少女は右手で俺の顔を自分の方へと向きを変えさせ、キスをしてきた。
(寝惚けてんのかな?)
「…………。」
「おはよ……。」
竜人族の少女の目が開くとその顔はほんのり赤く笑顔を俺に向けていた。
「やっと起きたか、ほれ薬が出来たぞ苦いのは我慢しなよ?」
郷長の作った薬を飲み干すと竜人族の少女は自己紹介を始める。
「あー、あーアタシの名前はアイラ……竜人族です。」
何時も読んでくださり有難う御座います。