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無属性魔法使いゼロ  作者: クソラノベ量産機
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第5話 フェンリル(中編)

今回は中編です。

 マガルギ族の郷では、郷長が竜人族の女の子に昔話をしていた。


「そう心配するでない、ルーズベルトなら大丈夫だ。」


「…………。」


「しかし、何があったか知らんがルーズベルトは変わったな……昔は生き物を殺す事を嫌がって狩りもせずに樹の実ばかり食べておった少年が、あんなに血生臭くなっておるとはな……。」


「…………。」


「今はルーズベルトの帰りを待つ間にでも付き合うといい、材料が無ければ作れる物も作れんしな……あれは確か二年くらい前だったか。」


−二年前−


 一人の少年がトラバサミにかかった動物を逃して父親にゴチンと頭を殴られていた。


「よし!」


「何が良しだアホンダラ!!」


「痛ってえ! 何すんだ、殴らなくても良いだろ!!」


「殴りもするわ! 今晩の飯を逃しやがって!!」


 罠を外し動物を逃していたのはマガルギ族の村の問題児ルーズベルトである。 この少年は勝手に獲物を逃し周囲から嫌われている、やんちゃ坊主である。


「どうしてくれんだ、この馬鹿息子が! 今晩も樹の実だけになっちまったじゃねーか!」


「別に良いだろ! 動物が可哀相じゃんか、俺は死んでも動物は食わん! 一生樹の実だけで良い!!」


「屁理屈ばかりこねんな! 家だけならまだしも、他者様にまで迷惑かけやがって!!」


 ルーズベルトは親子喧嘩の絶えない事で周囲からは白い目で見られていたが友達も居た。 喧嘩した後は、しばらく森で膨れっ面になりながら木の根に腰掛け不満を愚痴る。


「なんだよ親父の奴、別に動物食わなくても死にはしないのに……思いきり殴りやがって。」


「うわ大丈夫? ルー、その大きなタンコブ!」


「ん、フィオか……ちょっとな。」


「どうせまた親父さんと喧嘩したんだろ?」


「ロディも一緒か、まあそんなとこ。」


 頭に出来たタンコブをフィオが擦ると次第に縮んでいき、元の状態に戻る。


「痛いの痛いの飛んで行け〜。」


「あー癒やされるわ〜。」


「どうなってんだよ、お前の頭は……そうだ樹の実取ってきたから三人で食おうぜ。」


「おう!」


−マガルギ族の郷−


「今となっては、遠い日の記憶の様だ……仲の良かった二人は何をしているのか。」


「…………」


「む、どうした? 雨が降ってきたな……山の天気は変わりやすいからな、ルーズベルトも暗峠くらがりで囀り草を探しに手間取っているだけだろな。」


 一方、フェンリルに鳩尾を強打され薄れ行く意識の中でルーズベルトは悔しさと憎しみで力を欲していた。


(死ぬのか……俺は…………、くそ…………力が欲しい…………。 そうだ、……力なら……有るじゃねーか………。)


 フェンリルは倒れるルーズベルトに背を向け、つまらなそうにその場を後にしようとしながら地獄犬ヘルハウンドに後始末を命令する。


「面白くねーな、てめえら喰って良いぞ。」


「「ハッハッ!」」


 地獄犬ヘルハウンドがルーズベルトに近付くと違和感を感じたのか後退る。 ルーズベルトの身体からは電流が一定のリズムを刻み、心肺蘇生をしていた。


「「ウウゥゥッ………ガウガウ!!」」


「ぐっ………くっ………、ロディと……フィオの………仇が………眼の前に……居るんだ! こんなとこで死んでたまるかあああああ!!」


 俺は近くのナイフを握ると全身に電流を流しながら立ち上がる。


「こいつは驚いた、だが立ち上がったところで苦しみが長引くだけだぜ? そのままくたばっていれば楽になれたものを。」


「その鼻っ柱へし折ってやる!」


「来な、無駄だがな。」


「うらぁっ!!」


 全身に魔力で電流を纏いフェンリルに切りかかるが爪で防がれるが、その表情には焦りの様なものが見えた。


(なっ、速い!? この子供ガキさっきまでと違う!)


「まだまだあ!!」


 電流により身体能力を無理矢理向上さナイフを何度も当てると焦ったフェンリルは地獄犬ヘルハウンドに加勢を指示する。


「くそが、調子に乗んじゃねえ! てめえら何ボサッとしてやがる加勢しろ!」


「「グルルル、ガウ!!」」


「邪魔すんな!!」


「「ギャン!!」」


 飛びかかる地獄犬ヘルハウンドに俺はナイフを横一線に振り二体の魔物を真っ二つにする。


「くそが! 何なんだよてめえは!?」


「そこだあっ!!」


「ぐわああああ!!」


 隙を見せたフェンリルの脇腹をナイフで切り付けると俺の纏っている電流でバリバリとダメージを受けている。

 フェンリルからはプスプスと煙が立ちこめる、その間に雨が止み月の光が指すとフェンリルは不敵な笑みを浮かべ高笑いをし勝利宣言をする。


「これでトドメだ!」


「くく、ははは……ふはははは!!」


「何がおかしい。」


「天は俺様に味方したあっ! 満月だ、恐怖するが良い俺様の本来の力をなあっ!!」


「な、何だ!?」


 満月を見たフェンリルの身体は巨大化し、今まで二足歩行だったのが四足歩行になり、瞳は紅く牙と爪は鋭さが増していく。


「終わりだ、最後に言い残す事はあるか?」


「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。」


「はっ、直ぐに死ぬんじゃねーぜ?」


 フェンリルは右腕を大きく振り上げ、軽く振り下ろすと暴風が発生し草木を揺らす。 俺は吹き飛ばされない様に横へと躱すが、踏ん張らなければ吹き飛びそうになる。


「なんつーパワーだよ!」


「当然だ、これがフェンリル様の本当の力なのだからなあ!!」


「けど、さっきより遅い!」


 俺はフェンリルのスピードが落ちてる事で、簡単に脇腹まで近付き再びナイフで切りつけようとするがナイフが弾かれてしまう。


「何! 弾かれた!?」


「残念だったな今の俺様の皮膚は刃物程度じゃあ、傷一つ付けられないぜ。」


「ナイフが通らねーなら、次はこれだ!」


 俺は火打ち石を取り出しカチンと右腕に火を熾し纏うと魔力を集中させる。


「火炎遊戯!」

何時も読んでくださり有難う御座います。

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