第2話 決意
復讐物っぽく序盤はなります。
俺は暗闇の中、肩を揺さぶられ気絶から目を覚ます。 眼の前には教育係のブラウンが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「うぅ……。」
「おい、しっかりしろ! 大丈夫か? 何があった!?」
「はっ、そうだ……ロディとフィオは?」
「分からない、私が来た時には君が気絶していた。 何があったか教えてく……。」
「ロディ! フィオ!! 退け!!」
兵士に連れて行かれた二人を追うように俺はブラウンを押しのけ地下から走って階段を駆け上がる。 すると二人を連れて行った兵士の声が聴こえて来た。
「なあ、良かったのか?」
「何がだよ。」
「俺達マガルギ族の子供置いて来ただろ。」
「ああその事か、大丈夫だろ。 運良くあの魔物を倒したとしてもこっちに戻って来るしかねーんだからな。」
「倒してくれてたら良いが、もし殺られてたら?」
「そんときゃそん時さ、結局使えないマガルギ族だったってだけだ。」
俺は二人の兵士の会話に“あの魔物”という言葉に嫌な予感が脳裏を過ぎった。
「なぁ……、今魔物って言ったのか?」
「何だよ、地下から出てきたのか? 教育係は何してんだ?」
「まあ良いんじゃね? どっち道、人質としての役目しか無かったし戦えなかったら要らねーだろ。」
「お前らまさか、あの状態のロディとフィオを置いてきたのか!?」
「仕方ねーだろ、お前らマガルギ族は俺達人類を護る為にしか存在してねーんだからよ!」
「そいつは違いねぇ!」
あまりにも身勝手な態度に殴りかかろうかと思ったが、俺は感情を抑えロディとフィオを連れ去った場所を訪ねる。
「ぐっ、何処だよ……ロディとフィオを何処にやった!!」
「タントルク村だよ。」
「タントルク村?」
「おい、良いのかよ教えて。」
「良いんだよ、どうせ直ぐに戻って来るさ。 因みにタントルク村は、この国からでて真っ直ぐ行った所にあるぞ。」
俺はロディとフィオの無事を祈りながらタントルク村へと向かう為にイシュタッド王国から外に出ると奴隷の印が反応し全身に電流が流れる。
「うわああああっ!? くっ、はぁはぁ……何だよコレ……ロディも……フィオも……こんな目に合ってたのかよ! 何で言わねーんだよ!!」
だが、俺はイシュタッド王国から離れる度に流れる電流を耐えながらタントルク村へと長い道のりを歩いて行く。 すると、遠くの方で何かが燃えてる様な光景を目の当たりにする。
「うわっ、ぐっ……こんな電流なんてへでも……ねえ! はぁはぁ、何だ……まさか村が……燃えてるのか?」
タントルク村に着く前に電流で体力も限界に近かった俺は流れる電流を我慢しながらロディとフィオを捜し、見つけた頃には二人共鋭い爪の様な物で切られた跡が有り絶命していた。
「お……い……、嘘……だろ………はは、何の……冗談だよ…………フィオ……目を……開けてくれよ…………ロディ……フィオを守るんじゃ……なかったのかよ…………。」
二人の身体を揺さぶっても既に冷たくなっており、一向に目を開ける気配が無い。 周囲は燃えてる家屋の消火活動を行っているが、ロディとフィオは放置しているどころか期待外れといった眼差しで死体を見ていた。
「何か、またマガルギ族の子供が来たぞ?」
「今頃かよ! あーあ、三人なら勝ててたかもしれないのにな。」
「ほっときなさいよ、どうせ魔物にビビって腰でも抜かしてたってのがオチなんだから。」
「……さねぇ……、ロディ……フィオ……借りるぞ……こんな世界…………要らない!」
俺はロディの近くに有ったナイフとフィオの服から火打ち石を取り出し、タントルク村を出て電流を浴びながら、森へと向かった。
「ぐっ……、くっ……て…………やる!」
森の中で大木に寄りかかり、怒りと悲しみの感情が溢れ出ると涙を流しながら、人間に対する憎しみが増大していく。
「ロディとフィオを殺した奴も殺させた奴も、皆殺しにしてやる!!」
その決意を胸に泣き疲れた俺は、その場で何時の間にか眠っていた。 翌朝、俺は早速ロディから借りたナイフで一匹の小鬼を仕留めに掛かるが気づかれた為、外してしまう。
「ギギャッ!? ギーギー!!」
「やべっ!」
俺は直ぐ小鬼が仲間を呼んでいる事に気付き、その場から離れる。
「はぁはぁ、そういや流れなくなったな……電流……。 くそ、はぁ……一度も狩りなんてした事無かったから勝手がわからねえ。」
「ギャー、ギギャッ?」
「ギギー!」
(さっきの小鬼か、まずいな俺を捜してんのか。)
斬りかかった小鬼が仲間を呼び俺を捜している様だ。 しかし、俺は隠れるのは得意な方なので樹の上の枝の隙間から小鬼の動きを観察する。
(危なかった、知能が低いのか? 俺に気付かないな、しかしロディの狩りの仕方を思い出せ……何かヒントが有る筈だ!)
ロディと狩りに行った時の事を思い出す、そして複数体の獲物が存在する時には逃げる獲物は一匹に絞り、向かって来る獲物は一体ずつ仕留めていた事を思い出した。
(そうだ、こういう時こそ冷静にだな……小鬼は五体か。)
俺は樹の上から小鬼が分かれて動くのを見計らい、こっそりと後ろへと回ると喉元を斬る事で声を出させずに殺した。
「ギッ!?」
「後四体。」
同じ様に繰り返して五体の小鬼を仕留め、森で開けた場所を見つけると周囲にある雑草を引っこ抜いていき、薪を集め調度良い大きさの石を円状に並べて火打ち石で火を付ける。
「さてと、こんなんでも焼けばマシになるだろ。」
俺は仕留めた小鬼をナイフで切り分けていき、食べやすい大きさまでカットし、長い木の枝に刺して焼いていく。
「身も白くなってきたし、そろそろ喰えるか? あむ……まずいな、けど生よりはマシだな。」
五体の小鬼を食べ終えたが、やはり自身の魔素の保有量が然程上がっていない事を実感する。
「こんな雑魚じゃ駄目か、次は小鬼王でも狩るか。」
何時も読んでくださり有難う御座います。