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ゲーマー少女は狂犬ヤンキーを懐柔させる  作者: 一瀨
5月の章 ~私たちの出会い~
1/4

課題0:私とヤンキーの出会い

初めて投稿します。

誤字、脱字があったらご指摘のほうお願いします。

「なぜ、お前が生徒指導室に呼ばれたのか…。わかるか西園寺(さいおんじ)?」


「いいえ、全く。見当もつきませんね」


コーヒーの苦い匂いで充満された、放課後の生徒指導室。

私、西園寺 御影(さいおんじ  みかげ)は不満そうな顔をして用意された椅子に座っている。


若き男教師でありながら生徒指導部を担当している江頭 博文(えとう ひろぶみ)に呼び出しを受けるということは、そう簡単に家に帰ることは出来ないのであろう。


奴は『説教の鬼』として、生徒の間で知られている存在だ。

なので、下手に刺激をして日が暮れるまでどっぷり説教なんてごめんである。


今日は珍しくバイトが休みで、帰ってゲームしようとしていたのに。

舌打ちをしたい気分を我慢して、呼び出しを受けた理由を真剣に考えてみる。


「私は遅刻も欠席もしていませんし、成績は常に一位。もちろん警察にお世話になるような素行不良もありません。自分で言うのもあれですが、優等生の部類に入ると思いますよ。何故呼び出されたかこっちが聞きたいものです」


むしろ、私以上に先生たちに迷惑をかけている生徒は大勢いるだろう。


「はぁ…」


自信満々に意見を言う私とは対象に、項垂れながらため息をする江頭。

生徒指導部は生徒と先生の中立を保つ位置だから、色々とストレス溜まるのだろう。教師というのは面倒だな。ここは生徒として先生をフォローしなければ。


「ため息を吐くと幸せが逃げると言いますよ、この調子に乗って桃瀬(ももせ)さんに愛想を尽かされて逃げられたら面白そうです」


「桃瀬さんをダシにして、説教から逃げようとしても無駄だからな。あと天使のような桃瀬さんは、絶対そんなことしないし」


「っち…バレたか。江頭(えがしら)のくせに」


「ボソッと言ったつもりだろうが聞こえているぞ…。あとその江頭(えがしら)と呼ぶのをやめろ!江頭(えとう)先生と呼べ!ったくこのクソガキ、ちょっとは真面目に考えろってんだ」


ぎゃーぎゃーと喚く江頭(えがしら)だが、桃瀬さんを目の前にするとコロッと態度を変わるので、私としては彼の生徒指導部の面子は丸潰れである。

ちなみに会話の途中から度々出てきている『桃瀬さん』という人物は、私のバイト先の店長だ。

江頭(えがしら)は桃瀬さんに一目ぼれして、毎日のようにカフェに来ている。桃瀬さんと話している時はそりゃーもう鼻の下をデレデレに伸ばし、誰だお前という状況。そのまま体もデロデロに溶けてしまえ。


「私はいつだって真面目ですよ」


あとその江頭(えがしら)というあだ名、大半の生徒が公認して呼んでいるからな。


「ほう、真面目ねぇ?」


私が抗議したら、江頭の目が細くなり笑う。

嫌な予感がして言葉を訂正しようとしたらがもう遅い。後悔先に立たず。


「西園寺、今日行われた三時間目の調理実習の時間。

 お前の行動のせいで周りが散々な目にあったと、教師からも生徒からにも苦情の報告を頂いたが…」


「…」


切り出された話のせいで状況が気まずくなり、私は目をそらす。


「くじで班決めをし、それぞれ決められた班で協力しながら料理をする。だが、お前は班のメンバーの意見やアドバイス無視し、独断で一人で行動した。

おかげで出来上がったクッキーは真っ黒に焦げて、危うく火事になりかけた。そう報告があったが本当なのか?」


「あれは、オーブンの設定を間違っただけです。誰だって失敗はあるじゃないですか」


全く誰にでもある失敗を、何故私が呼び出されてまで怒られないといけないのだ。

まぁ、確かに時間短縮しようと180℃だったオーブンの温度を最大に上げて、火力を強くしたのが火事の原因になったのだが。


「…一応聞くけど、お前飲食店のバイトしているよな?」


「やだな先生、飲食店と言っても私たちのところはカフェです。飲み物がメインですよ、それに大体の料理は桃瀬さんがやってくれます」


「つまり、お前は料理ができないと」


いらんことを言うな。

あと料理は苦手なだけで、できない訳ではないから。と心の中で反論する。


「あと補足として言っておきますけど、私同じ班の方からアドバイスなんて受けていません。むしろ、相手の方々が私を無視しているという情報の間違いなのでは?」


「お前の主張は聞くけど、信憑性が高いのは大半の生徒が目撃していたこの報告の方だからな」


江頭が半目になりながら、私を見る。


今日行われた調理実習。

くじで私と同じ班だった人は、明らかに嫌そうな顔をして私を遠巻き。


周りが役割を決めて作業している中、私たちの班は誰が何をするか話し合いをしておらず…いや、私抜きで話を勝手に進めており、どこか居心地の悪さを覚えた。


めんどくさいな。


一人何もしないという訳にはいかないので、私は一人で分量を量ったりかき混ぜていた。


たまに班の人が何か言いたそうに声を掛けていたけど、結局のところ何も伝えずにそそくさと逃げるのがオチで、そのままクッキーを焼くところまで一人でやった。


結果、オーブンから黒い煙がもくもくと上がり、現場は大パニック。


青い顔をした家庭科の先生が消火器を使い、事は大事にならず済んだのだが、残ったものは真っ黒になったクッキーのみ。


私と同じ班の人たちは、大半が涙目になっており周囲からクッキーを分けてもらっていた。

何故か周りは私にだけクッキーを分けてくれなかったので、仕方なく真っ黒になったクッキーを自分が全て頂くことに。


「他にも体育のバスケの時間。チームを組んだにも関わらず、お前一人だけでバスケを無双していたそうじゃないか。結果お前と一緒になったチームは特に何もすることなく棒立ちに、相手のチームは戦意喪失。…なにやってんだよ」


「試合に勝つことがバスケの目的だと思いまして」


むしろ足を引っ張る方が、迷惑だろう。


「西園寺!」


私が悪びれず答えると江頭が声を上げた。

彼の怒りが、肌からチリチリと感じられる。


「俺が言いたいのはそう言いうことじゃない…。どうしてこうお前は協調性がないのかと聞いている」


協調性。

その言葉は私にとって到底理解しがたいものだった。


「確かにお前は文武両道で合理的だ。成績だけ見れば誰もがお前を優等生だと思うだろう。…けどな、それだけじゃ駄目なんだよ。このままじゃいつかお前は社会に喰われてしまうぞ」


じゃあ、どうしろというのだ。

皆私が悪いみたいな言い方をするが、理解できないものをどう扱えばいい?

協調性は大事というけど、要は多数派の意見を採用すればいいだけのこと。


「じゃあ、どうしろというのですか」


思ったことが口に出してしまい、苛立ちを隠せなくなる。


私は今年で高校二年生になる。

しかし、この性格が災いして入学当時から友達が出来ない。いわゆるぼっちだ。

好きでぼっちになった訳ではない。他人を理解しようとして自ら話を掛けたりしたが、結局のところ周りは私から離れていく。

そして離れていく人は皆口そろえて私に言うのだ。


『もう少し、空気を読んだり融通効かせたりしてよ!』


拒絶されるのを怖がり、人に嫌われているのに慣れたせいか、私が人嫌いになるのに時間は掛からなかった。

努力してもダメだった、自分が傷つけるぐらいなら一人で行動したほうがいいのではないか。


自分なりの結論を受け止めた結果、皮肉なことに私自身に平穏が訪れた。


「私だって理解しようとしましたよ。人と関わろうとしましたよ。けど、ダメだった。最初から私に協調性なんてものはないんです」


怒りの感情をそのまま吐露した。

怒鳴られるかな?と内心思ったが、以外にも江頭は静かに私の言葉を受け止めていた。


「怒らないのですか?」


「まぁ、な」


頬をぽりぽり掻きながら江頭は答える。


「俺だってな、お前の協調性のことを考えているんだよ。…そこで提案がある」


江頭は人差し指を立てて不敵な笑みを浮かべると同時に、ガンっと生徒指導室のドアが勢いよく開く音が聞こえた。


「おーおー、来たか。光牙(こうが)!ナイスタイミングだ!」


ドアの方向に目を向けると、眼光が鋭く不機嫌な男子学生が舌打ちをしていた。

まるで猛獣のような青年だ。


「ぁあ!?俺を呼び出したのはお前だろ江頭(えがしら)ぁ!」


金髪に染まった髪に校則で禁止されているピアス。

喧嘩慣れしているだろうと、思わせるような引き締まった身体。

時折見える生傷。

教師である江頭に反抗的な態度に口調。


これはあれだな。

一言で表すところ、ヤンキーという奴だ。


ぶっちゃけると、私はヤンキーは嫌いだ。

私にとってヤンキーと言う存在は、感情で相手にぶつかり合理性の皆無、反抗しようとすると暴力で返す理不尽の塊。

要するにヤンキーは扱いにくいから、嫌いなのである。


「西園寺、紹介するよ。この金髪ヤンキーは、藤井 光牙(ふじい こうが)。見た目はあれだが、まぁ中身は良い奴だ」


江頭の紹介で私とヤンキーが目を合わせる。


こいつが、良い奴?江頭の頭は大丈夫なのか?どう考えても人を殺っている目だぞ。まぁ人は見た目が全てではないというし、よく見たら頼れるヤンキーかもしれない。ここは無難に挨拶でもして――



「んだぁ?このチビ?」



前言撤回。

失礼極まりない奴だ。やっぱり世の中、見た目が全てだと察した時である。


「ヤンキーに言われたくないのだが」


「ああ゛!?」


まさに一触即発。

私とヤンキーがお互い火花が出る睨み合いをし、横で江頭はニマニマと意地の悪い笑みを浮かべている。


「俺自身、お前の協調性のことを考えた結果、まずは自分と性格が反対な奴をパートナーにするのがいいのではないかと考えたんだ」


「「は?」」


江頭の言葉に私とヤンキーの声が重なる。


「お前ら二人、明日も生徒指導室(ここ)にこい。早速だが課題も出す。まぁ、まずは二人とも自己紹介しろ。これからお互いパートナーになる訳だし」


課題?パートナー?


「お前ら二人はこの一年間パートナーとなり、放課後俺が出す課題を受けてもらう。無論、片方が独自で課題をやるような真似をした場合、ペナルティを与えるからな。まぁ、二人でしか受けられない課題しか出さないけど」


ヤンキーとパートナー?一年間と?


「さ、最悪だ…」


口から出た本音。

それが私のパートナーとなる、藤井 光牙(ふじい こうが)の出会いだった。

もう一話、今日のうちに投稿します。

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