親切のわけ。
更新が遅れて申し訳ないです。
ここにきて三日ほど経った。まだ身体の節々が痛むがなんとか歩けるようにはなった。
どうやら僕は助かったらしい。彼曰く、
「あんな高さから落ちて、助かったのは奇跡中の奇跡だ。」と言っていたので、僕はそうとう天運に恵まれていんだなと感じた。まあ、何にせよ、僕は今この地で、息をしているのだ。生きているのだ。
そうそう、僕を手当てしてくれた恩人様は。
旅人。そう名乗った。どこへ行くへもなく、
何の目的も無く、ただ旅をしている。
長い間。ずっと。
随分、変わった人。変人って奴だ。
世間一般的に言うと。
まあ、今の僕はその世間って奴をほとんど知らないわけだが。(リウにいろいろ情報をシャットアウトされてた節があるので。)
その分、旅人さんはいろんなことを知っていた。この峡谷のこと。お金のこと。
食べ物のこと。この国のこと。そして、今戦争していると言っていた国のことも。
体が動けない間はこうした話を延々としてくれた。もちろん僕が尋ねたからだとは言ってもここまで親切に説明してくれる人は中々、いないだろう。
ある時、あまりの親切加減に僕は「見返りなら何も無いですよ。」と訝しげに言ったが、
彼は穏やかに笑って、「そんなもの求めて無いさ。ただ個人的に君に興味があるだけ。」
おい、おい一体問題それはどういう意味だ。
え、いやそういう意味なのか?
身体中に嫌な寒気を感じたが、あくまで人間としての僕への関心だろう、うんそうだ、と無理矢理自分を納得させることにした。
歩けるようになったその日、僕はあることを
確認するためにぼんやりと空を眺めていた旅人、そう恩人様に近づいた。
「ちょっと失礼質問が。
貴方はなんで、こんな峡谷の間のはずれみたいなところにいたんですか?」
「たまたまさ。言っただろう。私には目的地
なんてないんだって。」
「だとしてもですよ。限度っていうか、なんかもうちょっと旅に適した土地とかあるでしょう。」
「強いて言えば、人がいないところだなぁ。」
腑抜けた声で答える。
やっぱり、変わっている。常人ならば、いくら偶然とはいえ、こんなところには来ない。むしろ避けて、通るべき場所だ。
だが、今現在それよりも知りたいことは。
僕は本題を切り出した。
「この国ーエルネテが隣国ーシカレスと戦争しているって話ですけど、本当なんですか?ここじゃあ全くその風を感じないので。」
「まぁ、ここは戦争地帯からかなり離れているからね。爆撃や銃撃のうるさくて耳に触る汚い音が聞こえないこの場所は全然良いと思わないかい?」
「まあ、そうですね。」
適当に返す。
「それに…。」
「それに?」
「優勢みたいだよ。この国。なんかシカレス側に
問題が起きたとかなんやらで。だから、もう終わるんじゃないかなぁ。」
「問題って…」
「さぁ、そこまでは。」
僕は知りたかった。あの街での「戦争」
という言葉を聞いた時の胸の高鳴りの正体を。だが、結局謎のまま終わりそうだ。
「そういえば…僕は貴方にたくさんのことを
お尋ねしましたが、逆に貴方は僕に何も聞かないんですね。」
「まあね。こんな峡谷に来るような人だ。
何かしらの事情があるに決まっているだろう。」
それは貴方もでしょうが。と心の中で呟いた。
「しかも、空からこんにちはだなんて。君の
そのマントがたまたま崖の突起に引っかかって、さらにその下に池が無ければ君は確実に死んでいたよ。そこら中に内臓をぶちまけてね。」
「内臓って…。」
思わず、想像して身震いした。
「とにかく。君のその幸運に。そして私に
感謝するんだね。」
「ありがとうございます。本当に。」
感謝の気持ちで頭を下げた。
……。
すると、彼はちょっと間を開けて、言った。
「ところで…君。ちょっと服脱いでくれないか?」
「え...。」
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