約束の地
チュンチュン。小鳥のさえずりが聞こえる。
朝だ…。僕はゆっくりと身体を起こす…。
そうか僕はあの後…また眠って…。
じゃあ…ここは昨日言っていた宿屋なのか…
と今の状況を確認していると
「あ。起きました?兄さん…? 」
とリウがベッドのシーツらしきものを
畳みながら話しかけてくる…。
僕も何かしようかとベッドから出ようとした
その時…何か身体の違和感に気づいた…。
その正体を確かめようと自分の身体をなぞるように触ると…びっくりして声をあげてしまった。
「 な…何で俺は服を着ていないんだ…?
まさか…」
「こらっ!変な妄想しないで下さい…。
服が汚かったので脱がしただけですっ!
あと…傷跡も…」
「傷跡…?」
「な…何でもありませんっ!」
リウはそう言うと部屋の隅に行き、いつどこで手に入れたのかも分からないリュックサックに荷物を詰めようとしていた…。
僕は半ば理解していながらも彼女に尋ねた。
「どこかに行くの?」
「ええ私たちの目的地はメルナ…」
「メルナ?」
「そこに行けば…全て…」
まただ…またあの眼をしている…前とは違い表情に変化は無いが、何の像も映さない…彼女の蒼く淀んだ眼…。
なんとなく察するに…そこに彼女の求めている何かがあるのだろう…そして僕の記憶の鍵も…。
なら…今はそこに向かって進んで行こう。
ただ進んで行くしかないんだ…!
「では…早速ですが…これに着替えて下さい。すぐ出発しますよ…」
そう言って…リウは僕にシャツとズボン
を手渡してきた。僕はそれに素早く着替えると…
リュックサックを背負い、準備は出来ている…とでも言いたげに扉前で待っているリウの元に向かい、ドアノブに手をかけた。すると、
「ちょっと待って!兄さん!」
とリウがいきなりリュックサックから
何かを取り出した…。何だ…何だ …と彼女の動向を伺っていると
これを上から羽織って下さいと、あるものを
渡された…。
「マント…?それもフード付きの…」
「はい…そうです」
「何のために…?」
「いいから!」
なんか…こんなやり取り昨日にもしたような…
と思いながらも黙って羽織る…。
僕の動作を確認し終わったらしいリウは、コクリと無言で頷ずいた後、先程の僕と同じようにドアノブにその小さい手を乗せ、扉を開いた…。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
よろしければ感想等お待ちしております。