砂漠街にて
ここか...
僕らがやっとの思いでたどり着いたのはある砂漠街だった。
「兄さん、お腹がペコペコです」
そう言って、リウは街中の飯屋に目を輝かせる。
あの出会いから、僕らは日が暮れる前にリウが持つコンパスと地図を頼りに、なんとかこの街へと到着することができた。
道中、聞きたいことがたくさんあったが、
空腹と疲労感で身体を休めることが先だと思い、余計なことは何一つ話さなかった。
これからどうしようかと考えていると
「兄さん、こっちこっち」
とリウに腕を捕まれ、ある飯屋へと連れられて行った。中は、かなり繁盛しているみたいで大勢の食事やら談笑している人やらで、混み合っていた。
どこに座ろうかと、店内を見渡していると、
たまたま、右奥のテーブル席から人が立ち上がったことに気づき、ホッとしてそのテーブル席の椅子に腰掛けようとした時…
「おいそこのガキ、席譲れ」
なんだと思って顔を動かすと、派手な格好を
してこちらを見下すような表情で睨みつけて
来ている大男が立っていた。その後ろにも
同じような格好をしている男が2、3人こちらを見てニヤついている。おそらく大男の仲間
だろう。僕は今の状況から面倒ごとは避けたいと思い、
「すいません、無理っす。」
そう、笑って答えた。
すると、大男は何も言わずこちらに歩みを
進めてくる。彼の拳が震えていることに気づいた僕はやばい、地雷を踏んだ。と思って身構えていたその時だった。
ピョコっとリウが大男の前に飛び出して来た。
僕は何だ…?とハラハラした気持ちで見ていると…
リウが自分の手元をチラッとおそらく大男にしかわからないような仕草で示した。
その瞬間、大男は歯がゆそうな顔をして
「ずらかるぞ」
と後ろにいた仲間たちに言うやすぐに
店から出ていった。その仲間たちも
「ちょっと兄貴ィ!」
と、大男の後を追うように、急いで飛び出して行った。
ど、どういうことだ…あんな大男が少女の一挙動だけで…
「リウ…君は一体…」
「ちょっと話したら納得してくれましたよ。」
リウは何事もなかったように僕に語りかけてくる…。
「さあ、早く注文しましょう。腹ペコで死にそうです〜」
やっぱり、この少女は何か隠している…。
おそらく、小さなことでは無く、もっと重要な...いや問題はどうやって聞き出すかだ。
いかに自然な感じで彼女の口から...
そうやって思慮を巡らせていると
バチンッッ!
いきなり自分の顔に衝撃が走る。
「兄さんッ!」
どうやらリウが僕の頬を両方の手の平で挟むように叩いたらしい…。
突然の事に驚き、言葉が出なくなっていると
「難しいことは後で…今は食事を楽しみましょっ!ねっ?」
テーブルにはいつのまにか…リウが頼んだ
であろう様々な色鮮やかな料理と金色に輝く飲み物が置かれていた。
目の前の誘惑に僕は我慢できなくなり、
先ほどの出来事も忘れるぐらい一心不乱に喰らいついた。
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