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春、出会いと別れの季節。桜並木の道の中を眠たげな目を擦りながら歩いている少年がいた。少年は新しい制服を身に纏い、ある一つの場所に向かっていた。少年が歩いている先は、大きな門構えがある学校だった。日本で唯一の魔導を習うための学校、学園都市『天川学園』である。
「やばい緊張しすぎて昨日寝れなかったな。今日から俺もこの学園の一員になれるのか。思えばここに入るまでほんとに大変だったな」と呟きながら歩いていた。
この天川学園偏差値も非常に高く、元々あまり勉強が得意ではなかった少年が、ある試合をきっかけに半年間死に物狂いで勉強をし、無事合格し、今こうして制服に袖を通すことができている。少年がそのように独り言を言ってしまうのも納得ができるほど大変だったことがわかる。「お、もうすぐ着くな」といい、門をくぐっていた。
(ええーと俺のクラスは……)と門を抜けてすぐの所に、クラス分けの紙が貼られており、自分の名前を見つけ、クラスに向かっていく。
クラスに着くと自分の席を探す。出席番号順になっており、少年は窓際の席になっていた。席に着くとまだ始業式まで時間があり、春の陽気に誘われ、寝ていなかった少年は少し微睡んでしまい、そのまま眠気に負けてしまい机に突っ伏してしまった。
少年が少し寝ていると
「もう始業式の時間だよ。そろそろ起きた方がいいんじゃないかな?」と耳元に声が聞こえてくる。少年が頭を上げ、目を擦りながら声をかけてきた人物を見た。その人物は茶髪で、黒ぶちの眼鏡をかけており、以下にも眼鏡イケメンといった感じの人物がそこには立っていた。眠気がまだ残っている少年は
「あぁすまない……」といい起き上がった。
「起きてもらえてよかったよ。初日から寝てて怒られるとかあったら君も困るだろう?」と茶髪の少年が爽やかな笑顔を浮かべている。
「僕の名前は亘 誠一郎っていうんだ。君の名前は?」と茶髪の青年、もとい亘が聞いてくる。
「俺の名前は山本 亮っていうんだ。」と寝ていた少年も答える。
「山本君だね、これからよろしくね。僕中学の同級生もいなくて同じ学年に知り合いがいないんだ。よければ友達になってくれるかい?」と言い、
「あぁ、いいぜ。俺も同じ中学の奴とかいないしな。」と亮が答える。
二人が話している間に、始業式の時間が近づき
「そろそろ移動しようか?」と亘が話し二人は始業式の会場に移動した。
始業式では、校長が長めの話しをして亮は余計に眠気が誘われてしまい、始業式の間寝てしまっていた。気づけば式も終わっており、隣にいた亘に肩を揺すられ起こしてもらっていた。
「山本くんどんだけ寝ているんだよ」と笑いながら亘が話している。
「どうしても昨日の睡眠不足がたたってな……それと山本じゃなくて亮でいいぜ。」と亮が答える。
「そっかそしたら亮って呼ぶね。僕のことも誠一郎って呼んでくれてもいいからね。」と二人で談笑していた。
クラスに戻ると、HRだけで今日は終わりということですぐに解散となった。本格的な授業が始まるのは明日からとなった。
HRが終わると、日が暮れており、夕日が校内を照らし出すような時間になっていた。誠一郎は式に来ていた家族と一緒に今日は帰るとのことで、帰りは一人で帰ることになった。
夕暮れのなか並木道を一人で歩いていると、ふと風を切るような音が聞こえてきた。振り返るとそこには、黒の長い髪をまとめてポニーテールにしており、舞う様に空を駆けている一人の女性がそこにはいた。その髪が揺れる様子、楽しそうに笑っている整った顔に見とれてしまっていた。立ち止まって見ていると、女性の方が気づいたのか、急に慌てだしてしまい
そして……空から落ちてしまった。