【全年齢版】弟可愛い
人 物
仲村弘人(15) あやめの弟
仲村あやめ(18) 弘人の姉
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○仲村家リビング(夕)
仲村あやめ(18)は、ソファーに座りプリ
ンを食べている。そこに学生服姿の仲
村弘人(15)が入ってくる。
弘人「ただいまー……何食べてんの?」
弘人はリビングを横切ろうとして足を
止める。
あやめ「何ってプリンだけど」
あやめは不思議そうに首をかしげる。
弘人「それ俺のプリンなんだけど……」
あやめ「え、そうなの?」
弘人「名前書いてあっただろ!」
とぼけた態度のあやめに弘人は声を荒
らげる。
あやめ「名前? 書いてあったっけ?」
あやめはソファーの横にあるゴミ箱を
あさり、誰の名前も書かれていないプ
リンのふたを取り出す。
弘人「そっちじゃなくて器の方だよ!」
ソファー前の机に置かれたプリンの器
には弘人の名前が書かれている。
あやめ「あ、ごめん。気づかなかった~」
あやめは軽い調子で謝る。
弘人「気づかなかったじゃねーよ。これで何
回目だよ、そうやって俺のを食べるの!」
あやめ「うーん、何回目だっけ?」
弘人「23回目だよ!」
あやめ「わぁ、よく覚えてるね。すごい」
手を叩いて笑うあやめに、弘人はムッ
とした顔になる。
弘人「大体、姉ちゃんは注意力散漫すぎるん
だよ。今年大学受験だろ? そんなんで大
丈夫なのかよ」
あやめ「心配してくれてるの? やっさし~」
弘人「ごまかすなよー」
あやめ「私は今日推薦での合格が決まったか
ら、大丈夫だよ」
弘人「は!?」
あやめが笑顔で言えば、弘人は目を見
開く。
あやめ「てっきりお母さんがパート行く前に
お祝いで買ってくれたのだとばかり思って
たよ」
弘人「……どうせ俺は推薦枠にも入れねーよ」
あやめ「弘人あがり症で本番に弱いもんね~」
弘人「……」
弘人は急にうつむいて黙り込む。
あやめはソファーから立ち上がって弘
人の頭へと手を伸ばすが、途中でやめ
る。
あやめ「も~、プリン食べちゃったのはごめ
んって。代わりを買ってあげるから一緒に
コンビニ行こっ」
弘人の肩をゆすりながら、あやめは明
るい声で言う。
弘人「別に……」
あやめ「じゃあ出かける準備してくるから、
弘人も制服着替えちゃいなよ」
あやめはそそくさとリビングを出て行
き、弘人はその場に一人残される。
○住宅街(夜)
コンビニの袋を持った弘人とあやめは
半分にした肉まんを片手に二人並んで
歩いている。
あやめ「たまに食べたくなるよね~肉まん」
弘人「……別に、気使わなくていいから……」
弘人が立ち止まり、あやめが振り向く。
あやめは弘人の元まで戻ると静かに弘
人の頭をわしゃわしゃとなでまわす。
あやめ「私はやりたい事をやってるだけだよ」
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