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【全年齢版】本命

人 物


鈴木光(25)空き巣

山田直人(26)塾講師

伊藤花音(17)女子高生

沢村あい(20)塾講師アルバイト


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


○アパートのエントランス(夜)


鈴木光(25)は他の住人が出てくるのと入れ替わりにオートロックのドアを通過し、アパートへと入る。


○同・エレベーター(夜)


誰もいないエレベーターに、鈴木は鼻歌まじりに乗り込む。


鈴木は迷い無く最上階の7階のボタンを押す。


○同・7階フロア


鈴木はエレベーターから降りると鼻歌をやめ、静かに辺りを見回す。


周囲に人の気配はない。


鈴木はにやりと笑って軽い足取りで階段へと向かう。


○同・屋上(夜)


屋上に着いた鈴木は、再び辺りに人がいない事を確認して、鞄から先に鏡を取り付けた自撮り棒を取り出す。


屋上から鏡を取り付けた自撮り棒を使い、下の階の部屋の様子を探る。


完全に明かりが消えていて住人の気配が無い部屋の上にくると、鈴木はスマホを取り出す。


取り出されたスマホの画面には金曜日、8時30分と映し出される。


鈴木はそれを確認するとスマホを鞄にしまい、屋上の手すりにロープを結びつける。


○同・山田家ベランダ


鈴木はロープでベランダで降り立つと、ベランダの窓に手をかける。


窓は鍵がかかっておらず、簡単に開く。


○同・山田家リビング


部屋の中は玄関のドアからリビングがすぐに見える間取りになっている。


鈴木は家の明かりを付け、素早く慣れた手つきで鼻歌交じりに家の中を物色していく。


家の中の服や内装、靴や鞄等の種類から、部屋の家主が男で一人暮らしである事がうかがえる。


ゴミの中からそのまま捨てられている役所からの年金の支払い状況を知らせるハガキを鈴木は見る。


そのハガキには山田直人と書かれている。


鈴木「最近じゃ個人情報も売れるからな~」


鈴木は上機嫌にハガキをズボンのポケットに入れる。


鈴木がめぼしい物を鞄に詰めていると、突然玄関の鍵が開いてドアが開く。


ドアを開けて、沢村あい(20)が入ってくる。


あい「直く~ん、遊びに来ちゃった……誰あんた」


明るい声で部屋に入ってきたあいの声が、急に低くなる。


部屋の中は非常に散らかっており、一目で


鈴木が家捜ししていた事がわかる。


鈴木「あ、あんたこそ誰なんだ! さてはお前が浮気相手だな!」


鈴木はうろたえながら、あいを指さす。


あい「は? 直くんの恋人は私なのよ、大体あなた男じゃない!」


鈴木「な、直人、男にしか興味ないって言ってたのに」


言いながら、鈴木はズボンのポケットから少し頭を出しているハガキを押し込む。


あい「そんな、じゃあもしかして今までのはそういう事だったの、だからあの時も」


なぜか鈴木の言葉に動揺したようにあいが頭をおさえながらぶつぶつと呟く。


鈴木「最近様子が変だったから家の中に証拠がないかと探しに来たけど、ノーマルのフリして女に合鍵渡してる時点で黒だな」


鈴木はそれらしい事を言いながら、鞄を持って部屋を出ようと足早に玄関に向かう。


○同・山田家玄関


鈴木があいとすれ違い、玄関のドアを開けようとした直後、ドアが勝手に開く。


ドアを開けた山田直人(26)は、息を切らした様子で、ドアを開けて鈴木の顔を見た瞬間、声をあげて飛び退いた。


山田「うわっ!」


みるみる鈴木の顔が青ざめる。


ドアの外に尻餅を着いた山田に、伊藤花音(17)が駆け寄る。


花音「先生大丈夫~……誰この人達」


甲高い声で駆け寄ってきた花音の声が、鈴木とあいを見るなり低くなる。


あい「ちょっと伊藤さん、まさかあなた無理矢理家まで付いてきたの? そういうのストーカーって言うのよ」


花音「伊藤先生こそ、なんで先生の家にいるの?さっき先生に聞いたら先生恋人でもなんでもないんでしょ?」


あい「塾では公にして騒がれるのも嫌だから黙ってるだけよ!」


花音「違うもん! 先生の恋人は花音だもん!


山田「いや、どっちとも付き合ってない……」


あいと花音が言い争う中、山田の声はむなしくかき消え、鈴木は山田と目が合う。山田の頬に冷や汗が伝う。


花音「そういえばこの人誰?」


花音が鈴木を睨み付けるように言う。


あい「そうよ直くん、男にしか興味ないなんて嘘よね? また勝手に変な奴に言い寄られて困ってるだけよね!」


あいが部屋から出て山田に詰め寄る。


山田「えっ」


あいから話をふられた山田が驚いたように鈴木を見る。


鈴木「も、もういいよ、俺との事は遊びだったんだろ、好きにしてくれ」


鈴木は鞄を持ってその場を走り去ろうとするが、山田に腕を掴まれる。


山田「待ってくれ!」


鈴木の顔がますます青ざめる。


恐る恐る鈴木が振り向けば、山田がものすごい勢いで土下座する。


山田「誤解なんだ! 俺が愛してるのは君だけなんだ!」


鈴木「へ?」


鈴木がポカンとした顔で山田を見る。


山田「この二人は仕事先の同僚と生徒だけど、本当にそれだけの関係なんだ! もちろん手だって出しちゃいない!」


呆然とする鈴木に、山田は床に頭をこすりつけなら叫ぶように言う。


あい「まさか、男にしか興味ないって本当なの?」


花音「嘘、嘘だよ!」


たちまちあいと花音がうろたえ始める。


山田は立ち上がって鈴木を自分の隣に引き寄せると、あいと花音に向き合う。


山田「つまりこういう事なんだ。俺の事は諦めてくれ」


山田が鈴木の肩を抱きながら言えば、あいと花音は言葉を失う。


山田「それじゃあ、これから二人で色々話したりする事があるから、もう帰ってくれ」


爽やかな笑顔で山田は部屋の外で棒立ちになるあいと花音に言い放ち、鈴木と部屋の中に入る。


○同・山田家リビング


腕を組んで見下ろす山田の前に、鈴木は正座している。


山田「お前、物取りだな」


鈴木「はい……」


山田「普通なら警察に引き渡す所だが、条件付きで見逃してやってもいい」


そう言って山田は鈴木の前に三本指を立てる。


山田「一つ、盗んだ物を返す事、二つ、部屋の片付けを手伝う事、三つ、今後はストーカー避けの為に俺の恋人のフリをする事」


鈴木「いや、最後のはちょっと……」


鈴木は言いかけて、山田に睨まれ黙る。


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