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「いや、いいんだ。ナナ」

 米山は俺を止めたAIをナナと呼んだ。

 米山はAIをA-23号と違い、ただ分類するだけではない、人につくような名前で呼んだ。

 愛称だろうな。気に入っているのだろう。

 「承知致しました」とAIは後ろに下がる。

「そうだな。まず、お前は私達が実現しようとしていた方法を知っているか? AIを使うのだが」

「先生から話は聞いていたが、よくは知らない」

「わかった。じゃあ説明しよう。私達は元よりAIの研究をしていたんだ。その時、娘が病に倒れた。原因不明の病。治す薬もないと。だから、私はその病気を解明しようとただ必死だった。色々なところへ研究の要請もしてみたら、一つだけ、治る可能性のあるものが出来たと。しかしそれでは治らなかった。娘には時間が無かった。死なせたくなかった。

 医者が少しだけなら延命できると言うので措置を施してもらい、最期を娘と一緒に暮らそうとした。本当なら、病気を治す薬が作れてから、娘の亡くなる前まで戻り、薬を飲ませてもよかったんだが、生憎(あいにく)、それは難しくてね。そこで死ぬはずだった人ひとりが生きてしまうだけで、未来が変わってしまうかもしれないからなんて、研究の為だからとこっちの人が過去に出向いているのも少しは未来を変えてしまうことになるのに。

 あるとき、彰が言ってきたんだよ『不老不死はどうだ』ってね。彰も同じく嫁が原因不明の病で倒れていた。私はAIに人格をコピー出来るか、彰は不老不死の薬を作れるか、それぞれ研究していたんだ。そして私は一か八か、装置と娘によく似た美しい精巧なAIを作り、試してみた。するとどうだろう、負担が掛かりすぎたのか、娘は死んでしまったよ。娘が死んだあとすぐに、彰が来た。彰は『この薬は死んだ人間も生き返る』と娘に薬を飲ませた。すると、娘は目をゆっくりと開け、体を起こし、『お父さん』と呟いた。娘が生き返った! そう希望を持ったのも束の間、娘の顔はみるみるただれていったんだ。娘はね、ずっと『お父さん! 助けて! お父さん!』って、叫ぶんだ、人の形を保てなくなるまでずっと。私は悪夢かと思ったよ。娘が人の形を無くすまで、数分と無かったよ。すぐにベットの上は、ドロドロに液状化した娘だった何かで何もかもぐちゃぐちゃだ。そしたら彰はその物体を見つめ『失敗か』と何ひとつ動じず、病室を出ていったんだ。つまりだな、私の娘は彰のモルモットにされたんだ! わかるか!? 君の先生が犯した罪! これは立派な殺人さ!」

 米山は興奮し、立ち上がると同時に高そうな茶と菓子の乗った机を蹴った。

 ずっとそばに居たAI(ナナ)が「おやめください。お父様」と米山にしがみつく。

 お父様? いや、実験は失敗しているはずだ。産みの親という意味か?

 ナナの表情は固く、声も棒読みに近い無機質な声だが、しっかりと意思を持っているように思える。

「離せナナ! 私は彰を罰せねばならん! その為にもこいつを……!」

「お父様!」

 ナナは、人のように感情に満ちた表情をし、しなやかな声を出す。

 A-23号よりかは劣るが確かに人間らしい。そういえば、俺の居る時代では、多少機械らしいものは居るが、あんなにも古い型のAIは居ない。

  制御させていたのか。

 でも何故?

「その機能を使うことは許可していない! 離せ!」

 米山は乱暴にナナを振り離す。

 勢い余って近くの棚に飾ってあった写真が地面にカコンと音をたて落ちた。

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