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「追われているって、誰に? やっぱあいつら?」
どうやら、自身を追っている犯人の検討はついているそうだ。
追われるって、一体この人達は何をしたんだ。
「ああ、俺も詳しくは知らねえが、多分例の滅びの美学云々ほざいてる自然世界のクソ宗教か、フェニックスのやつらか、はたまた両方か」
その二つの組織の名前は聞いたことがない。いや、フェニックスという名前の組織はよくあるんだろうが。
「その二つの組織って、具体的に何をしているんですか?」
これがわからなきゃ話は始まらない。場合によっては、明さんと高橋さんの敵になるかもしれないんだから。
「自然世界はなんか地球を元ある姿に戻すだの、死という終わりがあるこそ人生は美しいだの言ってるやつらで、フェニックスは人工知能の研究をしてるやつら。両方不老不死反対」
自然世界はいいが、フェニックスが不老不死反対? フェニックスという名前自体、不死鳥という意味なのにおかしな連中じゃないか?
「しかも、クソ宗教の方は、もうすぐ実現しそうだからかわりと過激派になってきている」
「ねーねー」
と堀。
「フェニックスって、不死鳥でしょ? 不老不死で死なない。なのになんで反対なの?」
堀も僕と同じことを考えているようで、僕の代わりにそう訊いてくれた。
「それはだな……」
「元々は、不老不死の研究してたんだよ。AI使ってね。あとちょっとで実現出来そうだったんだけど、ほんと、なんで止めたんだろう。いい線行ってたのに」
高橋さんを遮り、明さんがそう言った。
「なんで、そんなに知ってるんですか?」
不思議だ。そんな情報、どこで仕入れてくるんだ?
「そりゃあもちろん、俺元々そこに居たからだけど……」
「あっなるほど」
そりゃこんなに情報を持ってる訳だ。
「説明はこんぐらいでいいか? そろそろ本題に入りたい」
「うん、いいよー」
堀の軽快な返事と共に話は始まった。
「まず、お前は現代へ帰れ。ここに居たって無理矢理帰らされるのは事実。身分偽ってこっちに来てんだからな。しかも、話は全て聞かれている。研究は俺が進めておくから」
「いや、大丈夫さ」
大丈夫な訳が無い。
「いや、全く大丈夫なんかじゃ……」
明さんはグーにした手を机の上に出し、手を開いた。
すると、黒く、粉々になった何かが落ちてきた。
「お前、これ!」
「ああ、盗聴機と発信機だ」
そういえば、初めて僕と会ったときも言っていたな。会話は聞かれていると。
でも、僕の居る時代でも使うこんなただの盗聴機で聞かれているとは、思いもしなかった。
「これでしばらくはこっちに居られる。見つかったばあい強制送還待ったなしだけどさ」
「お前、余計罪重くなんじゃねえのか?」
高橋さんは、僕の思ったままを代弁してくれているようなことを言った。
「ゲームはスリルがあったほうが面白いでしょう?」
「いや、今でも十分スリル満点なんだがな……」
明さんはニコニコ微笑んでいる。
「さ、俺は帰るよ。ゲームありがとうね、ひなたちゃん」
明さんは、この部屋を出ていった。
ひなたちゃん呼びを直す気は更々無いらしい。
「全く」と高橋さんもそれを追うように、部屋から出ていった。