表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/27

5

 彰さんは「秋山彰だよ」と、やっと口を開けた。

 普通ならそれ以外の答えは無い。でもそうじゃなく、その質問の意図は別にあるのだろう。

「ちょっと、あなたこそ誰? まず最初に、自分が名乗ったらどうなの?」

 堀がそう言った。全く正論である。

 あの人は誰だ。彰さんの知り合いか? また未来人か?

 いや、知り合いなら、なんでこんな質問をしているんだ?

「ほんとそうだよねえ~」

 と、彰さんはすっとぼけた声を出した。

「ねぇ? 相原直樹(あいはらなおき)くん」

 あの人の怒りのボルテージが上がっていく。

「てめぇ、それ以上なめた口利ぃてっとぶっ殺すぞ」

 目が本気だ。

「はいはいこわいこわい」


「で、あなたは誰なんですか?」

 僕は彰さんとやっと落ち着いたあの人を席に着かせ、そう訊ねた。

「コイツは高橋直樹(たかはしなおき)っつって、彰の弟子的な存在」

 変わりに彰さんが説明する。高橋さんはずっと貧乏ゆすりをしている。

「じゃあ、彰さんの弟子ってことですか?」

「いんや」

 と彰さんは否定する。

「俺は本当は、秋山彰じゃなくて、平井明(ひらいあきら)っつーの。コイツが怒ってたのは俺が彰に成り済ましたからかな、多分」

 なるほど、それってつまり……。

「平井……いえ、どっちにしろ“あきら”ですね。明さんは、偽名でこっちに来たってことですか?」

「そうだよ」

 あっさりと認めた。

 ああ、なるほど、だから、高橋さんはそう訊いたのか。

「で、お前は何しに来たんだよ。(せんせい)のふりまでして」

 高橋さんは、まだイラついているようだ。

「彰に、研究を託されてね」

「……それは本当か?」

 高橋さんの目付きが変わった。

「ああ、本当さ」

「なんで、なんで俺じゃないんだ?!」

 高橋さんは机を拳で思いっきり叩く。

 堀のストローを刺してあるパックジュースが倒れ、少し中身が(こぼ)れた。

「それは君が無能だからに決まってるじゃないか」

「んだとジジイゴラ!」

 乱暴に席から立ち上がる。椅子がガタッと音を立て倒れた。

「君より有能な俺に研究を託した。それまでだ。全く、死ぬまで彰の側に居なかった人間が今更何を」

「それはてめぇが……!」

「ちょ、ちょちょ、あたしをおいてけぼりにしないでよ、話が見えない」

 堀が二人の喧嘩を止める。確かにそうだ。僕でも話がよくわからない。

 堀なら尚更じゃないか?

「……わかった、話すよ。君も、一旦座って」

 高橋さんは舌打ちを一つし、席に着いた。

「えっとねえ、まずおじさん達は、こっちで言う未来から来たんだ」

 それだと僕のときのように混乱するんじゃないか?

「へぇ~、そーなんだ」

 堀はすぐさま理解したようだ。

 いくらなんでも早すぎる。まるで身近な人に未来人が居るように当然としている。

 何故だ? 堀の考えていることはいつもわからない。

 彰さんは既に亡くなっていること、高橋さんと彰さんはいわゆる師弟関係にあること、明さんは彰さんに救われ、慕っていること、こっちに来た目的は彰さんより託された不老不死の研究を最後まで進めることであること、彰さんと明さんは体格から顔まで双子のようにそっくりなことを話した。

 そして「俺と彰が似てるのはどうでもいいかな」と付け加えた。

「話は戻るけどさ」

 と堀。

「偽名でこっち来るとかやばくないの? 追われたりしないの?」

「鋭いなあ。もちろん、身分詐称してるから強制的に未来に帰らされるよ」

 そりゃあそうだよな。普通に大問題だ。

「そのことなんだが」

 高橋さんは話を切り出す。

「お前、追われてるぞ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ