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「あっ、そうだ高橋さん」

 高橋と呼ばれた金髪で眼鏡を掛けた男は、欠伸(あくび)をしながら「何?」と答えた。

「さっきね、未来から人が来てましたよ、確か、秋山彰(あきやまあきら)って言ってたかな。あなた、担当でしょう?」

 高橋はさっきの眠そうな顔つきから、一気に真剣な顔つきになった。

 そして「今なんて言った?」と、その女の肩を掴み、問いただした。

「だから、未来から人が来たって」

「そこじゃない、名前だ」

「だから、秋山彰が……」

 女が全て言い終わらぬうちに高橋は、肩から手を退け、部屋を出ていった。

 畜生、こんなことなら上からの書類にちゃんと目ぇ通しとくんだった。

 そのことと、どこに行ったか訊き忘れたことに後悔しながら、どこか、その人が行きそうな場所を頭の中でリストアップし、手当たり次第探して行った。

 僕の幼馴染みである、堀ひなたから「研究室に来て」という旨のメールがゴリゴリの絵文字と共に来た。

 相変わらずだなあと微笑みながら、僕は言われるがまま堀の居る研究室へと向かった。

 研究室の扉を開ける。「綾小路くん!」と彼女が近づいて来た。

「よっす、堀」

 と、身長の低い彼女の頭に手をポンッと置く。

「ねーねー、あの人って、綾小路くんの知り合い?」

 堀が示した方向には彰さんが居た。

「なんかねー、ここに綾小路くんを呼んでって言われたの」

 彰さんは、ポータブルゲームではしゃいで遊んでいる。

 彰さんはこちらに気がついたようで、顔をこちらに向け、手をひらひらさせている。

 堀が僕の服の裾を引っ張った。

「てゆーかあの人さー、今あたしが持ってるあのゲームのこと、古いって言ってくるんだよ。(ひど)くない? もう」

 堀は、彰さんの方を指す。

 彰さんが使っているゲーム機は、どうやら堀のものらしい。

 あのゲーム機は、新しい方だとは思うが確かに、未来から来た彰さんにとっては、古いものなんだろう。いつの時代から来たのかわからないけど。

「ねー、とりあえず中に入らない? 扉開いてると空気が逃げる」

「わかった」と僕は研究室の中へ入り、扉を閉めた。堀に案内されるがまま、席に着いた。

 席に着くや否や、彰さんは「ねえひなたちゃんって綾小路くんの彼女?」と訊いた。

 水分を口に含んでいなくてよかったと心底思う。


「そんなわけないでしょ。ってゆーかひなたちゃんってやめてよ、おじさん」

「違うのか。ってちょっと酷くない?」

「そんなことは置いといて、彰さん。あなたはなんでここに居るんですか」

 僕はその話を打ち切る。

「研究のため」

「はあ」

 それ以外にも目的はありそうだが、この大学に、そんな不老不死に関わるような研究をしている人は居ただろうか。

「おじさ……じゃなくて、あきらさん、でいいのかな? 研究ってどんな研究してるの?」

「不老不死の研究をしているんだ。興味ある?」

「あるある!」

 堀は、さっきの態度とはうって変わった、子どものように純粋な目を向けた。

 確かに、いかにも堀が食い付きそうな内容だ。

 「あっそうだ!」と堀は席を離れ、ホワイトボードに何やら書き出した。

 その内容は、僕は専門外、というか専門であっても僕にはちんぷんかんぷんな内容であった。

 全く、小学生の頃から堀はそうだった。

 科学が大好きで、他の人からはバカじゃないのとか、気味が悪いとか、罵られていたこともあったが、僕には天才というものを感じずにはいられなかった。

 「出来た!」と堀は、数分にして、何も書かれていなかったホワイトボードを文字という文字で埋め尽くした。

 堀は「どお? あきらさん。不老不死じゃないけど、近くない?」と彰さんに訊く。

 彰さんは「そうだなあ……」と(ひげ)を撫でながら考えている。

「俺の居るとことはちょっと違うところもあるけど、まあ大体はこんな感じさ」

 堀も同じくホワイトボードを眺め、眉間にシワを寄せながら考えている。

「違うって、もしかしてここかなあ」

 と堀は書き直す。

「いや、どっちかっていうとこっちだぞ」

 どっちって何だよ。

 こんな風な会話が三十分ぐらい行われた。僕はすっかり蚊帳(かや)の外だ。

 堀の「あーもうわかんなくなってきた」の声でその会話がストップした。

 ようやくかと、安堵した刹那、研究室の扉が勢いよく開いた。

 現れたのは、三十代ぐらいの金髪で眼鏡をかけた人だ。

 そしてその人は扉を閉めずに、彰さんの方へ鬼の様な形相で近づく。そして彰さんの胸ぐら思いっきりを掴んだ。

 堀の「ちょっと、閉めてよ!」という怒りの声をよそにその人は「お前は誰だ」と言い放った。

 彰さんは答えない。その人は掴んだ手を思いっきり揺らし「誰だっつってんだよ答えろジジイ!!!」と怒鳴った。

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