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さて、箱の中から人が出てきたは良いものの(いや、良くはないか)、この人は誰だ。
「いや~ほんとありがとうね。俺首ずっと痛くてさあ~」
おじさんは、陽気に話始める。
ちょっと待ってくれよ、あなたは誰だ? どこから来た? そもそも、何故ダンボールに入っていた?
っていうか、人って郵送出来たのか?
おじさんは、僕の顔色をうかがっている。
「何が何だかよくわからないって感じかな~」
僕を混乱させたのはあなただ。
「いや、無理もねえよ。俺、こっちでいう未来から来たんだから」
おじさんは衝撃の事実をサラッと述べた。
最初は冗談だろと思ったが、伝票に書いてあった住所は存在していない地名であったのを思い出した。それだけではまだ、この人が未来から来た人だという裏付けにはならないだろう。
けれど、この人が嘘を吐いているようには到底思えなかった。
いや、なんだよそれ、未来から来たなんて、聞いてないし。
僕は更に混乱した。
今の僕の状態を絵で表すことが出来るなら、目がぐるぐると渦巻きになっていることだろう。
「あら、更に混乱しちゃった? ごめんよ、ちゃーんと全部話すわ」
「そうしてくださいお願いします」「じゃ、まず名前ね、俺の名前は秋山彰、あきあきか、あきっちって呼んでくれ」
「は、はあ」
語尾に星マークがつきそうな口調で喋った。
直感的にもうついていけないような気がした。
「じゃあ彰さんで」
「冷めてんねえ~過去人~」
なんとなく現代でもこういう人居るよなぁ、という印象だ。未来にも居るのか。
とにかく、話を聞くに越したことはないので、聞いてみることにした。
それをまとめると、彰さんは未来から今、僕の居る世界へ研究の為に来た。過去へ行くには相当お金がかかるが、研究者や学生等には、半額や全額免除にしてくれるという。
そして、過去に行ける条件として、行きすぎた行動をしないようここで喋ったことはすべて聞かれているとか、過去の人として混じっている監視員に行動を監視されているとか。
ちょっとやりすぎではないかと思うことを強いられるという。
行動を監視するのは、まだ良いとするが、そんな盗聴じみたことをするのは、どうかと思う。
これは最近できたものらしく、反発している人も多いらしいが、これを良いように利用して問題を起こした馬鹿が居るんだろう。
そして、そんな嫌な条件付きでも尚、彰さんがここに来た理由は、不老不死の研究の為だという。
なんでも、彰さんの居る世界では、不老とまではいかないが、ある程度の美貌を保つことは出来、不死とまではいかないが、ある程度なら延命することが出来るという。
そしてだいたい百二十歳まで生きられるらしい。そんだけ生きたら充分だろう。
実はこの時代でも、人間の体は百二十歳まで生きられるとは言われているらしい。
僕はそんなこと初耳であったが。
そして、医療もかなり発達し、がんも、こっちでいう盲腸ぐらいのもんらしい。それはうらやましい。
でも、不老不死だけはまだまだ実現出来ないという。
しかし、僕の研究が、不老不死に一歩近づく。もしかしたら、実現することも夢ではないかもしれない!
「さあ少年! 私に協力してくれたまえ!」
ということだそうだ。
不老不死、と言われましても。もちろん僕はそんな研究、したこともない訳で。
「どうした少年」
彰さんは、子どもみたいに無邪気で希望に満ちた目で僕の方を見る。
「いや、その……」
「ん?」
「僕、そんな研究したことないんですけど……」
彰さんは、口をポカーンと開けた。わかりやすい。
そして眉間を摘まみ、少し考えたあとこう言った。
「マジかよ」