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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

*短編*

【短編】呪いのインスタントカメラ

作者: 小坂みかん

 これは「兄が実際に体験した話」と、ある友人から聞いた話です。


 ある年の夏、お兄さんが所属する旅行サークルの仲間のひとりがインスタントカメラを購入しました。リサイクルショップで売っていたそれは、未使用にもかかわらず驚くほどの安値でした。

 購入後、さっそく試し撮りをしました。お兄さんが撮影者で、被写体は購入した彼です。カメラから排出されたフィルムをはたはたと扇いでいた彼は、現像が終わった写真を見て呻きました。何故なら、彼を写したものだけ、不気味な赤い斑ができていたからです。しかし不思議なことに、風景だけを写したものは綺麗に撮れていました。


 その翌日、彼は死体で発見されました。暴行でも受けたのか、腹部が赤黒い痣だらけでした。しかし警察が現場の監視カメラを確認しましたが、犯人らしき者の姿は確認できなかったとか。

 事件を受けて、旅行を中止しようかという話が出ましたが、サークルメンバーは結局出かけていきました。お兄さんは旅先で、彼の遺したカメラでメンバーを撮影しました。被写体となった彼らはフィルムを扇ぎ、現像が終わるのを心待ちにしました。しかし、彼らは写真を見てとても落胆しました。ある者は腕の二の腕から下の部分が真っ赤に染まり、ある者は顔に赤斑が浮かんでいたのです。


 数日後、彼らは〈写真の中で赤く染まっていた部位〉を失いました。いよいよこれは何かがおかしいと思ったお兄さんは霊能師に相談しました。霊能師によると、インスタントカメラが呪われているとのこと。何でも、前の持ち主は恋人の浮気を苦に自殺した女性で、このカメラは彼氏との旅行のために用意されたものだとか。そして、仲良く旅行に行きたかった彼女が災難に遭った彼らを彼氏代わりにし、抱きついたり腕を絡ませるなどして彼らと一緒に写真に収まったから、このようなことが起きたのだろうということでした。

 即刻供養せよとのアドバイスを受けて、お兄さんは呪いのカメラと一緒に旅行に出かけました。そして、彼女が被写体になるような構図で写真を撮りました。現像は、胸ポケットの中に入れて温めるようにして行いました。しばらくして、写真の中に美しい女性が浮かび上がりました。お兄さんと旅をして満足したのか、はたまた〈胸に抱かれた〉ことが嬉しかったのか、写真の中の女性は満面の笑みを浮かべていました。それを見たお兄さんが驚いて声を上げると、写真もカメラも消えてなくなったそうです。


 ところで、インスタントカメラの正しい現像方法は、胸ポケットに入れるなどして温めることだそうです。扇いでしまうと一気に急冷されて、色むらができるとのこと。もしかしたらカメラに呪いなんてかかっておらず、たまたま写真を扇いでしまった者の身に災難が降りかかっただけかもしれません。――でも、もしものことがありますから。現像の際は正しく、胸に抱いたほうが良いかもしれませんね。

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