ああ青春終焉
「式島!そこは左サイドじゃない!一度落とすためのポストプレーだ!」
コーチが声を荒げ、10数メートル離れた僕に興奮気味に、ジェスチャー混じりに言っている。
(……分かってるよ)
18の真燈には既にやりたいプレースタイルがあった。しかし、現在のチームでは4-5-1の守備中心のプレースタイル真燈の積極的な攻めの姿勢と大胆な攻撃展開はこのチームでは力を振るえずにいた。
「式島、あそこはディフェンスを引きつけてから一度落とすってのが何度も練習でやったろ??」
「はい」
俯かず、目をしっかり見てはいるが返事には何処か誠実さがない。
「お前、ほんと分かってんのか?レギュラーから落とすぞ??」
コーチが真燈の態度に苛立ちを爆発させる寸前のことだった。
「別に良いですよ、今日でここ辞めるので」
青天の霹靂
まさかの一言にコーチもチームメイトも息を飲んだ。
そして話し始める。
「前から決めていたことなので、後で事務所に寄って退団手続きします。
今までお世話になりました。」
「ちょ、おま…」
コーチが全てを言い終わる前に真燈が答えた
「自分の為の時間は終わったんです、これからは守ってあげなきゃいけない人の為に生きていきます。夢を諦めたわけじゃないけど、一度休憩を貰います、ありがとうございました」
そう言い残すと、磨り減ったポイントの深いスパイクを脱ぎ、青々とした芝生をなんの迷いもなくロッカールームへ歩いて行くのだった。
ロッカールームでユニホームを脱いでいると駆け寄ってきたのはチームメイトの香田瞬だった。
「真燈!お前辞めんのか??何ふざけたこと言ってんだよ!」
剣幕が感情を伺わせる
「ああ、悪い瞬。けどあと2年は戻れない。」
淡々と服を脱ぎシャワーを浴びる準備をする真燈。
「2年なんかサッカー離れたらプロになれるはず無いだろ!今からでも良いから考え直せよ、一人で言うのが何なら俺も一緒に行くから!」
何かを悟ってそれを確信したくない気持ちで必死に真燈に言い寄る。
ああ、なんてこいつは良いやつなんだ。他人のために熱くなれる奴とチーム組めて良かったな。できれば最後までやりたかったのが唯一の心残りかな…
「瞬、時には大切な物でしかかえられない大切な物があるんだ。」
「そんなもんあってたまっか。絶対認めねえぞ。俺はそんな人生認めない!」
「……悪い」
2人の会話はそこで終わってしまった。
溝が埋まらないまま




