思考迷宮
朝からドタバタな日であったが授業が終わり、部活の準備をしていると、
「黄金崎さん、今日学級委員会があるからよろしくね?…あれ、忘れてた?」
申し訳なさそうにもう一人の学級委員の下山 俊がいそいそと準備をしている志帆に声をかけた。
志帆にしては珍しくど忘れをしていたようだ。
「ごめんね、急いで行くから先にいってまってて。」
「わかった、3-bだからだからね!」
そう言い残すと、足早にその場を後にした。
私は香織に部活を遅れることを言い残し、筆記用具を片手にいそいそと職員室の前を通り北校舎へ向かっていた。
さすがに一年生が三年生のテリトリーに入ると空気が重くなり、妙な緊張感に襲われる。
「中学の時みたい…」
独り言を呟きながら緊張感が相まって半ば小走りになりながら歩いていた。
「みんなまーちゃんみたいだったらいいのに。」
そう呟いていると、
「なに?」
「!!まーちゃん!びっくりした!」
「驚きすぎだろ、っていうかもう委員会始まってるぞ。」
「うん、ごめんね。すぐいく。」
遅れてきた一年生に上級生は少し口を尖らせながら待っていた。
なぜなら彼ら彼女らは早く塾へ行きたいのだ。
ここ都立山寺高校はソコソコの成績で、大学進学を目指す人が殆ど。
高校のカリキュラムは大学受験の範囲内全部を対象にしておらず、一部分は専攻分野を学んだり、底上げ目的で殆どが塾へ通う。
先輩方にとっては惜しいのだ。この青春の有終の美を飾るため、このかけがえの無い高校生活の最後を殆どの生徒は勉強に費やすのである。
そんな先輩方の中でひと気は目立つのがまーちゃんである。
半ば進路が決まっているようなもので、同級生からも一目を置かれているのは間違いない。
彼の一言で大きく話が変動することは珍しくは無い、逆に言葉を発せば注目をされるのが至極当然である。
言葉の力、私からしたら何も変わらない言葉。
けれど他の人はその言葉に感銘を受ける。
私はまた不思議な気分を体感した。
「おい、志帆」
「…何?」
「また考え事してるだろ、また髪触ってたぞ」
「んー、何か今日は色々とおなか一杯みたい。」
「?まあなんだか分からないけど、あまり深読みするなよ。お前が考えているほど周りは難しく無い。単純に生きてるだけなんだから。」
「こらこら、そこの二人、まだ始まって間もないのにお喋りはやめなさい」
………んー私は考えすぎなの?
そしてまた髪をいじる。
真燈は大きくため息をついて今度は注意することなく、中庭を見たのだった。
今回は会話描写が薄めです。
しかも恋愛と書きながら殆どのここまで書けていません。
もうしばらくお待ちください。




