たくさんの想いを乗せて全力で駆け抜けていく。青春全開な物語。
キミはどこへ行くのだろうか。
僕の知らない所へ追いつけない程の速さで…
日の光が閉じた瞼の中に眩しく目を覚ます。
部屋の換気を良くするために空いているドアの隙間から目玉焼きの香ばしい匂いがする。
もう6年も朝食のメニューが同じ。
それは僕の拘りだけど。
毎日作ってくれる小柄の女性。制服から見える華奢な肘から手先にかけた腕と冷えた部屋でも潤う肌が年齢を垣間見せてくれる。
「まーちゃん、起きてるんでしょ?早く来て、冷めちゃうから!」
「おは……よ…ぅ」
ハッキリとしない声で部屋からリビングに向かいながら絞り出した声で言った。
昔の反動で朝一の挨拶がこっぱずかしくもなくめんどくさくもなく、どうにも表せない感情で発した。
でも、キミは何も気にせずいつもの様に応える。
「おはよう〜、今日は部活の後病院に行ってくるから冷蔵庫にあるものを温めてたべてね!それじゃあ朝練があるから先行くね!」
「わかった、いってらっしゃい…」
会話少なく、定型文そのまま引用した様な文と、朝の乾いた喉から絞り出した声。
その後も1人で黙々と、ごはんに半熟の目玉焼きをのせ、ソースをかけそれを箸で割りそこから流れ出る黄身とソースを混ぜ口にかきこむ。
我ながら飽きずに6年もこの朝食、最近気を利かせてくれてビタミンサプリとソイのプロテインも出してくれる様になった。
彼女はいつも僕の先を行く。
年下なのにしっかりしている。というかしすぎている感覚が否めない。
年は16、関係は従兄妹。名は黄金崎 志帆。
部活はテニス部。ソフトテニスかと思ったが有望株らしく朝からトレーニングに励んでいる。
成績も良く、学年で10人までには必ず入る。テスト前になると家庭教師をしてくれる余裕さえある。いや、わざわざ時間を割いてまでやってくれているのかもしれない。
そう彼女は世話焼きなのだ。いや、親切の塊なのだ。
それは彼女の母親の影響なのか、遺伝したのか。
バファリンよりも優しさが多くできているのではないかと思う程。
そんな彼女と僕の青春の清純な甘ったるく、青春を駆け抜ける2人とその2人に彩りを添える人々達の話。
そう駆け抜けて行く。