後編
「え…」
男の人がにやりと笑いながら額に手をかざした。
怖いっ
そう思い、目をぎゅっと閉じた。
「あなたが望むもの…それは…楽しい人生!ちがいますか?」
あぁそうだ。人生が楽しかったら・・・そう思った。
「では私がかなえてあげましょう」
「出来っこない、そんなこと」
「いいえ。ですが一つお願いがあります。」
お願い?なんだろう
男の人は私の心を読み取ったように
「べつに大変な事ではありません。その変わった人生の中で、欲を出してはいけません。欲を出したらあなたは一生後悔する」
「何を?」
「知らなくていいことです」
「では」といい、男の人が手を上げた瞬間、身体がふっと軽くなった。
・・・ん?
気がつくと学校の保健室にいた。
あれは夢?
「あぁ、気がついた?あなた校門の前に倒れてたって友達が泣きながら教えに来てくれたのよ」
保健の先生がいった。
「友達によっぽど好かれているのね、あなた」
夢じゃなかったんだ!今までだったら私のために泣いてなんかくれなかった。逆にうっとうしい存在って感じだった。
「禰穏!なんともない?よかったぁ」って泣きながら友達が入ってきた。
あ、忘れてたこの感じ、友達がいるって凄く幸せなことだって・・・・・・・・でも、プレゼントとかも持ってきてくれたらよかったのにな。
「欲を出しましたね」
男の人の声が聞こえた。
あれ?しゃっべてないのにどうして欲を出したのわかったんだろう?
ここはどこ?
冷たいし寒い。気がついたらここにいた。
「やっと起きましたか」
「ここはどこですか」
声は聞こえるのに男の人の姿が見えない
「そうだろうね」
また私の心を読んだように答えが返ってくる
「教えてあげようか?ここは土の中。でもただの土じゃない。君のような子が何人も埋まってるんだ。なぜって、美しい花を咲かせるためさ。その花はね、桜だ。君はこんな言い伝えを知っているかい?美しい桜の木の下には死体が埋まっているっていう・・・その言い伝えは本当だったのさぁ。それも限られた種類でね、ソメイヨシノしかだめなんだ。昔の人はそれを知っていたんだろうね。花言葉は死だ。」
ずぅっと話し続けていた男の人はパタッと話すのをやめた。
「静かにしてて、君の養分を上手くすえないって言ってる」
桜の気持ちまでわかるの?
「あぁもう君もしゃべれなくなってきただろう。最後に教えてあげよう僕の正体を、僕は、悪魔だ。人間には知られてないだろうが、僕たちは本来人間の願い事をかなえて喜ばせていたんだ。だけど先祖の一人が僕たちはよくしてあげているのに人間は何も僕たちに恩返しをしてくれないことに気づいたんだ。人間は自分を一番に考えるものだからね。そこで条件を作ったのがこれさ、欲張ろうとした人間を木の養分として使おうってね。君も本望だろう美しい花の一部になれるんだから、大丈夫誰も心配しやしないさ。気づかなかった?僕たちは昔からこの仕事をしてきたんだよ?それなのに一度も事件として取り上げられてない。それは、昔は神隠しということにして、今はその人の存在自体忘れさせてる。まぁここにたどり着くのは大体いなくなっても誰にも心配されない人たちだけどね。」
「バイバイ」
「そういって悪魔は消えたんだってさ」
「へぇ」
「でもサ忘れられてるんでしょ。何でこの話が出来たの?」
「いなくなっても心配されないような人の記憶は別に消さなくていいと思った悪魔がいたからなんだって」
「ふぅん」
ちょうどそのころ、教室の隅でこの話を聞いている少女がいた。
「どうしよう。あんな話聞いちゃったら・・・でももしあったらいじめられないようにしてもらうのに・・・」
そのとき見慣れないお店が目に付いた。
その中で若い男が静かに優しく笑いながら手招きしていた。
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