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女騎士(バーサーカー)とオークと、時々バイク  作者: 高城拓
第2章 冬までにあったこと
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Poison(6)

 競技者たちが愕然とするさまを見て、エドゥアルドは苦笑を深くした。笑みの成分のほうが多い。

 

「これによりアンネリーゼ、ミシェール両名は45点減点、ミィナとべルキナは15点減点。アンネリーゼ、君は手癖が悪い。これまで”引っ掛け”は黙認しておったが、次はキッチリ減点するぞ」

「にゃーん……」


 引っ掛けとは防具の隙間などに指を入れて押し引きし、相手の姿勢を崩す技術だ。言うまでもなく高等テクニックの一つだが、全身甲冑を着込んで行われるプロ選手による試合以外では減点対象だ。

 アンネリーゼ宣いて曰く「スリより簡単」だというから、彼女がこの技を非常に好んでいたことは明白である。

 そのことを指摘されたアンネリーゼは妙な声を出して妙な姿勢を取ってみせたが、周囲の呆れたような視線を浴びるだけに終わった。


「中佐殿」

「何かな、ベルキナくん」

「道具の変更はできますか?」

「そりゃ構わんが、30点減点となるぞ? 君も後がなくなる」

「構いません。常在戦場、行住坐臥常に武と在り、などと申します。戦場(いくさば)に後などありますか?」


 先程までとは打って変わって引き締まった表情で訴えるベルキナ。とぼけた様子もない。

 その有り様を見て、ミシェールとミィナは緊張感を露わにした。


「ふむ。では何を」

「大太刀、あるいは長巻など有りましたら」


 エドゥアルドは合図してシャルルに幾つかの武具を持ってこさせた。ベルキナが選んだのは刃渡り4尺5分(約122cm)、全長1.6mを超える大野太刀風の木刀だった。刀身の部分は分厚い発泡ゴムのカバーがかかっている。

 べルキナは2~3度素振りして感触を確かめ、エドゥアルドに頷いてから元の位置に戻り、得物を頭上に掲げるかのように構えた。

 周囲にまた重圧が戻ってくる。試合冒頭でべルキナが見せた巨岩や地底湖のような重々しさではなく、今度は真綿で首を締めるかのような息苦しさだった。

 それに触発され、ミィナは素早くコンパクトに、ミシェールは大きく鋭く、アンネリーゼはゆったりとしなやかに構えを改めた。


「ミィナくん、君も武器を変えることはできるが?」

「お気遣い誠にありがとうございます、中佐殿。私は自分の身の丈を存じております」


 ミィナは額に油汗をにじませながら、それでもはっきりと辞去した。

 これを受けエドゥアルドは孫娘が生意気を言ったときのような顔をした。心からの笑みを見せたのである。

 右手を掲げる。


「各人よろしいか。では、はじめ!」

「エクレール!」


 勢いよく振り下ろされる右手。

 再開の合図とともにミィナが早口で叫ぶと、並び立つアンネリーゼとべルキナの前に小さな光球が現れ、脳まで焼けそうな閃光と大音響を発した。



 ミィナとミシェールは目を伏せてそれに耐えていた。

 アンネリーゼは面の上から目を左手で押さえ、よろめきながらうなっている。 

 べルキナは頭上に大野太刀を掲げ持ったまま、きつく目を閉じて耐えていたが、やはり視界は失ったようだった。

 観客たちはそこまでの影響はなかったものの、やはり顔をしかめてそらしているものが多数。結界で効果は減じられているものの、それほどに強烈な光だったのだ。

 ミィナは素早く飛び出す。アンネリーゼが獣じみた何かでそれに気づいたが、ミシェールが放った殺気によって金縛りにあったかのように体を硬直させた。

 ミィナは勝利を確信しながらゴムでできた銃剣を突き出した。アンネリーゼは「魔法力はほとんど尽きた」と言ったが信用できない。どれほどの加護魔法をひっそり使用しているか知れたものではない。しかし混血とはいえ獣人は獣人。ミィナが防具の上からでも全力で水月を突き込めば、大抵のヒトは気を失う。


 突き出された銃剣がアンネリーゼの防具に達しようとするその刹那、べルキナの何気ないひと振りによりミィナの首が飛んだ。

 視界を失ったアンネリーゼとべルキナ本人以外のすべての者が、はっきりとそれを見た。

 バランスを失ったミィナの体はよろめいてアンネリーゼに激しくぶつかる。

 二人は絡み合って転倒した。

 ボトリという音とともにミィナの首が地に落ちる。



 ザボスは腰を浮かし、目をきらめかせて口角を吊り上げた。

 王宮警護局長マリア=マンテガッツァは艶然と微笑んだ。

 アッシュは新しいおもちゃを見つけた幼児のような態度のザボスに釘を差し、案の定と言うか予定通り、差し出口を挟むなと注意された。額には大量の汗が吹き出している。武を誇れぬ彼にでさえ、ベルキナのやったことの凄まじさがわかるのだ。



 ベンチに座って試合を眺めていたエミリアは思わず飛び上がりこぶしを握った。

 周囲の観客どもも似たような反応をする。

 救護所でリヴニィは口元に手を寄せてすくみあがった。

 傍らのイズモラは恐ろしい顔をして口元を引き結んだ。

 仕事を抜け出してきたドゥーシュが干したイカの足を咥えたまま、手を額にかざして感心したような声を出した。

 彼女の視線の先のベルキナは、頭上で得物を掲げ持ったまま佇んでいる。



 審判たちは目を合わせあった。いずれも首を横に振る。今のは反則ではない(・・・・・・・・・)

 ただ、自分たちより遥かに若い混血のおんなに、これほどのことができるのかという驚きがあっただけだ。



 観客たちの低いざわめきを破ったのはアンネリーゼだった。


「ぬあー! 重い! まだ目がチカチカする! ちっくしょう、やってくれたわねミィナ!」


 アンネリーゼの罵声とも怒声ともつかない声が響き渡り、彼女にかぶさったままだったミィナの体がゴロンと横に転がった。飛んだはずのミィナの首は、きちんとその体にくっついている。

 イテテとうめいて身を起こし、審判たちを見回したアンネリーゼは、待ての合図が出されていないこと、ミィナが気を失っていることに気がついた。

 どっこらせと年寄りじみた声を出しながら仰向けになったミィナの体にまたがり、防具の上からミィナのほっぺたをぺちぺちと叩く。

 それで気がついたのかミィナはうめき声を出しながらゆっくりと目を開け、それから目を見開いてパニック症状を起こした。アンネリーゼに跨がられているというのに、防具を外そうとする。

 あ、駄目だわと声を出したアンネリーゼは直ちにドクターストップを要求し、それは認められた。ドクターストップ中は防具を外しても減点にはならない。

 

「はっ、はっ、はぁ、はっ」

「大丈夫……首はしっかり繋がっとる」


 恐怖で顔を真っ青にしたミィナは何度も首をさすり、軍医も優しい声をかけた。

 介助士を買って出たリヴニィはタオルでミィナの顔面の汗を拭いてやっている。


「ねぇ、何があったの?」

「ベルキナさんがミィナさんの首を刎ねたんだ」

「え? でも死んでないじゃない」

「正確には、僅かな身じろぎと殺気、と言うより剣気だ。それだけで観客にはそう見えた。我々も危うく勘違いするところだった。本人に至っては見ての通りだ」

「確かに尋常じゃない気配はしましたが……」


 イズモラとヤナギダの解説を受け、アンネリーゼもようやく事態が飲み込めた。

 振り返ると、大野太刀を頭上に掲げ持ったままピクリとも動かないベルキナが目に入った。ベルキナの表情からは何も伺えない。

 それは彼女が本当の本気になったということだと、アンネリーゼは即座に理解した。

 一方でミィナは自分の肩を抱いてガタガタと震えている。無理もない。彼女が死線を潜り抜けたのはもう何年も前、その時の覚悟や死生観など本人の知らない間に蒸発してしまっている。

 放っておいてよいのか。アンネリーゼは迷った。今の出来事は彼女の精神に恐ろしく深い傷を付けてしまった。このままではミィナはだめになってしまう。まず前線勤務などできないだろう。軍隊ではこういうときどうしたか思いだそうとし、すぐに思い至った。ベルキナに呼びかける。


「べルキナ」


 相変わらず構えを解かないままのべルキナは、まっすぐミシェールを見据えたまま低い声で答えた。


「ミィナ。そのまま聞け。王宮警護局特殊警護隊(スペツァルス)に入るということは、こういうことだ。そして実戦はこんなものでは済まない。そのことを頭に入れて、自分に何ができるかよく考えなさい」


 べルキナは良く通る声でそう言ったが、果たしてミィナは理解できたのか。ミィナはまだ肩を抱えてふるえている。

 ミシェールにアンネリーゼが視線を合わせると、ミシェールもわずかにうなずいたようだった。

 ヤナギダたち審判団がミィナの戦意喪失を宣言しようとしたとき、アンネリーゼがひときわ大きな声で吠えた。


「んーで? 尊敬する大大大大大先輩が有難くも畏くも、直接の指導をしてくれたのに礼の一言も言えないの?」


 ミィナがおびえた目でアンネリーゼを見上げた。


「こんなんじゃべルキナが可哀そう! ミシェールさんも可哀そう! 王宮警護局が可哀そう! なんなのミィナ? 結局あなたは私にケンカ売ったはいいけどいいとこ無しで帰るだけなの?」


 ヤナギダがアンネリーゼに注意しようとするが、チョウとパヴェルが押しとどめた。


「そんなんじゃべルキナは返せないわ。色恋沙汰は勘弁だけど、私のべルキナがあなたと同じ宿舎の空気を吸うだなんて、絶対に許せるもんですか。この恥さらし」


 ミィナの目に怒りの火が灯る。


「それともなぁに? 特殊警護隊(スペツァルス)はアンタみたいなのでも入れるの? そんなわけ無いわよねぇ」


 ミィナの目の怒りの灯火が更に大きくなる。


「この、半人前以下の出来損ない。アンタのカーチャンもどうせ出来損ないだったんでしょ」

「なんだと!」


 ついにミィナは立ち上がった。それを見てアンネリーゼの顔面に嘲笑が浮かぶ。


「はっ、膝笑ってんじゃん。そんなんでやれんのぉ? さっきは期待してるって言ってあげたけどさぁ、取り消そうかなぁ?」

「ぶっ殺す……!」


 ミィナはアンネリーゼを殺気もあらわに睨みつけながら、リヴニィに防具をつけるよう手振りで要求した。リヴニィは非難のこもった目をアンネリーゼに向けた。

 イズモラはよくやるよと言わんばかりの態度をとり、ドゥーシュやパヴェルたちは親指を軽く突き上げてみせる。

 戦場でのショックに対する療法は基本的に1つしか無い。怒りで恐怖を紛らわせてやることだ。

 それでも心的外傷は残るが、ショックを受けて立ち上がるまでの時間で予後は随分と異なる。


 すべての状況を確認したヤナギダとエドゥアルドは、あらためて試合再開の合図を出した。



 競技場にどっしりと根を張ったかと思われたベルキナとミシェールだったが、互いにうなずきあうと構えを解き、互いのまわりをスタスタと歩き、ときおり牽制の一撃を軽く繰り出し、払われていた。寸止めではなくなったが、動きは先ほどまで以上に丁寧で細やかなものになっていた。


 一方でミィナの動きは激しく燃え盛る炎のような攻めを見せていた。彼女の怒りはアンネリーゼに対してだけではなく、自分に対するものもあったのだが、それらの矛先はすべてアンネリーゼへと向けられていたのだ。

 ではその動きは怒りまかせの力まかせかというとそうではなく、異常を通り越して凶気すら感じられるほど繊細なものだった。斬りつけ、突き穿つその動きに1つとして同じ軌道を描くものはなく、アンネリーゼの防御をすり抜け、彼女の体力を着実に減らしていった。

 もちろん合間合間に先ほどの閃光を発する魔法も使うし、2度3度ほどミシェールが殺気でアンネリーゼを牽制したりもした。

 お陰でアンネリーゼは全く反撃できないわけでもなかったが、前半とは打って変わって精彩に欠ける動きとなってしまった。

 こんなことならミィナの心を折らせたままにしていればよかったのではないかと思ったリもしたが、それだけはしなかっただろうなとも思うアンネリーゼだった。




「くっそ……いい加減に! 倒れろ!」


 アンネリーゼのドロップキックは確かにミィナの真芯をとらえたはずだが、やはり手応えが妙だった。事実ミィナは軽く後ろに飛んで受け流し、ふぅわりと着地した。

 アンネリーゼは転がって飛び起き、模擬刀を正眼に構えて相手を見据えたが、その肩は激しく上下している。


「はっ、はっ、はぁ、ふぅ……」

「もう終わり?」


 アンネリーゼの攻撃をいなす間に頭を冷やしたミィナが素早く間を詰める。

 上段への攻撃をかろうじて防いだアンネリーゼの眼前に小さな光の玉が浮かんだ。瞬きする間もなくそれから発生する閃光と大音響。


「ぎゃっ?!」

「ふっ!」


 アンネリーゼが怯んだところにミィナが連撃を加える。それも銃剣でではなく、徒手でだ。

 ズン、と腰を落として踏み込んでみぞおちに中段突き、反撃の左拳を踏み込んで肩と腕で反らし、体を入れ替え腹に打拳、顔が下がってきたところをえぐりこむような掌底打ち上げ、さらに中段突きで僅かに距離を開け下がってきた顔面を膝で打ち上げ、アッパーカットのような軌道の左右の蹴りを連続して顎に叩き込む。アンネリーゼの体が宙に浮いた。

 崩し、手繰り寄せ、引込み、打ち、穿つ。

 いずれもただひたすらに重量感のある打ち込みだった。

 観戦している者たちの何人かがミィナの勝利を確信して拳を握った。マンテガッツァも例外ではない。

 アンネリーゼのかかとが地面に戻るのと、ミィナの次の踏み込みは同時だった。


「喰らえ!」


 地面がビリリと震えるほどの踏み込みから4分の1回転し、肩甲骨を瞬時に深く押し当てる。体を肉の塊ではなく水の詰まった袋と考え、限りなく短い時間で彼方から此方へ、此方から彼方へ移動させる。目的とするのは相手の体内の水分に巨大で周期の短い”波”、すなわち衝撃波を発生させること。

 はるか昔、まだ魔王領が成立する前に存在し、いつしか途絶えた民族が伝えていた技術体系。メルが去った王宮警護局が、うずたかく埃の積もった歴史から掘り起こした伝説の技。

 その名を八極拳と呼ぶ。

 それこそがミィナの隠し玉。

 先ほど牽制に使った光球の魔法などは飾りに過ぎない。

 僅か17歳でこれほど深く八極拳を理解し身につけたことが、ミィナもまたある種の天才であることを示している。

 ドン、という衝撃波とともに砂埃と千切れた芝生が宙を舞った。



「すごいな、ミィナは。八極拳(バイ・ジー・クァン)をあそこまで使えるとは、知らなかった」

「すでに六大開を習得し八大招式まで進んでいます。槍も本当は私以上に使えるんですよ。ただ、銃剣やナイフが性に合うようで」

「うん、よく似合ってるし良いんじゃないかな」


 しばし動きを止め、アンネリーゼとミィナを見るともなく見ていたベルキナとミシェール。ベルキナの唇からは賛嘆の言葉が溢れた。


「それにしてもミシェール、よく見ているな。私は成績とか、そういう上っ面までしか見てやれなかった」

「来年度には彼女たちの幾人かは特殊警護隊(スペツァルス)、そうでなくても一般警備隊に配属されます。私達現役との相性も考えてやらないと」

「……なんだ、心配ないな」

「え?」

「そこまで考えて周りを見てるなら大丈夫だよ。ミシェールは。さて、そろそろこっちも決着をつけよう」

「……はい。では、参ります」


 ベルキナに褒められ、僅かに頬を赤らめたミシェール。彼女は膨れ上がるベルキナの剣気に賞賛と感謝の念を抱いた。

 ベルキナは自分のすべてを、ただ一撃に乗せて伝えようとしてくれている。そう感じたからだった。




 舞い上がった土煙に、観客の幾人かが咳き込んだ。

 その土煙もしばらくすると晴れてくる。その中から姿を表したのは、アンネリーゼから8mほども離れた場所で気を失って倒れているミィナと、両の拳を上下に突き出した格好で固まるアンネリーゼだった。

 わっと沸き返る観客たち。リヴニィは涙目で口元を抑え、イズモラは胸をなでおろし、ドゥーシュは飛び上がり、エミリアはふっと微笑んだ。

 誰もがアンネリーゼの勝利を確信したが、審判団の判断は違った。



 ベルキナとミシェールの間の剣気は今や最大限にまで膨れ上がった。誰かが僅かに触れただけで、はじけ飛んでしまいそうなほどに。

 その極限の緊張を解いたのはミシェールだった。ベルキナがフェイントをかけようと僅かに身じろぎしたその瞬間、一足飛びに3mの間合いを詰め、ボッという音とともに棒を突きこむ。

 タイミングは完璧だった。

 棒の先端がベルキナの顎先を捉えると思われたその時、ベルキナの大野太刀が瞬時に振り下ろされた。

 はらりと幾筋かミシェールの前髪が宙を舞い、わずかに間を開けてからミシェールは直立の姿勢に戻って礼を述べた。それから彼女は戦意を喪失した旨、審判団に伝えた。


 ベルキナは柔らかい発泡ゴムでできた大野太刀で、鉄でできた防具の面を叩き切ってみせたのである。



「アンネリーゼ、ミィナ両者ともに意識喪失。ミシェール戦意喪失。これにより、アンネリーゼ・べルキナ組の勝利!」


 ヤナギダが宣告すると、観客共は歓声を上げた。

 結界が解かれ、観客たちが競技場内になだれ込む。

 ややあって始まったのはベルキナの胴上げ。彼女は屈託なく笑っていた。

 ミィナはミシェールによって助け起こされ、ミィナに反撃した姿勢のままで意識を失っていたアンネリーゼには容赦なく冷水がぶっかけられた。

 気を取り戻したアンネリーゼが何かを叫び、観客たちは何がおかしいのかそれで笑った。


「良いものを見た」


 ザボスは満足した声を出した。

 彼でさえ把握しきれていなかった王宮警護局の実力の一端を垣間見れたこともさることながら、単純に試合として大変に面白いものを見れたからである。

 執務室に集ったものたちは皆一様に頭を垂れた。

 と、そこへエリカが扉をノックして入ってきた。夕食の用意が出きた旨を伝えに表れたのだ。


「さて。座興はここまでとするか。あとは食事でも楽しみながら、ほかではできない話をするとしよう」


 一同はふたたびザボスに頭を下げた。

 彼らにとっては、ここからが本当の今日の仕事となるのだ。

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