鶴折りの少年
俺は噓つきだ。いや、真実隠しと言ったほうがいいかもしれない。
真実を隠し、偽り、薄くする。これからも、その生き方を変えることはないだろうし、変えるつもりもない。ただ、今回の事件で俺の真実がすこし濃くなったのかもしれない。まあ、それは大した意味を持たないだろうし、持たせるつもりもない。今から始まるのは、そんな話だ。
無隠真駄 15歳
高校一年生
第1章
4月9日、高校に入学し、クラスにグループが出来始めた時期、俺はグループに属さず、
黙々と大量の鶴を折っていた。
「おーい、無隠~」
後ろから、クラスの男子の声がする。
たしか……早川哀太くんだったかな?
「ん、なんだい?」
「いや、無隠って別に暗くもないし、人当たりもいいのに、何で誰ともつるまずに、一人でいるんだ?。 あとその大量の鶴は…何?千羽鶴でも作ってるのか?」
「この鶴は…うん、気にしなくていいよ。ちょっとたくさん必要なんだよ、それとグループに属さないの は、人と長く一緒に居るのが苦手なだけだよ。」
「ふーんそうか。」
哀太くんは少し不思議そうな顔をした。
「じゃあ、別に人を避けてるってわけじゃないんだな。これからよろしくな。」
「うん、よろしく哀太くん。」
すると、哀太くんは自分のよく居るグループに戻っていった。哀太くんのよく居るグループはいわゆる、体育会系のグループで、男女含めて8人くらいのグループだ。
他にもいろいろなグループがクラスにある。
成績優秀者がたくさん揃っているグループや、芸術センスが優れているグループなど、いろいろだ。
普通の学校なら、なぜそんなにいろいろな人がいるのか不思議なところだが、まあそれについては追々、説明していくとする。
そして放課後。部活にも入ってないので、帰ろうとすると、
「無隠くーん」
と、後ろから女子の声が聞こえてきた。誰だろう?どんな用だろう?
僕にそんなに親しい女子はいなかったはずだから、何かクラスの用事だと思うけど。
「一緒にかーえーろー」
思ったよりかなり親しげなことを言われた。
「いきなりどうしたの?そんなに俺達って仲良かったっけ?」
「うっ、ひどいよ無隠くん私とあなたの仲じゃない!」
どんな仲だよ。
「そんなことは置いといて、とにかく一緒に帰ろーよー」
「まあ、いいけどその前に一つ聞いていい?
君、なんて名前だっけ?」
「ははは、ジョークはやめてよ無隠くん。」
素で言った他意はなかった。けど、そんなこと言えるわけなく。
「ごめんごめん。じゃあ、行こうか」
「うん。」
どうしよう、名前を憶えてなくても問題はないと思うけど。
考え事をしていると、女の子が、話し始めた
「ねえ無隠くん、無隠くんって私のことなんて呼んでたっけ?」
いきなり厳しい質問だ。この子、実は僕が名前を憶えてないことに
気が付いているんじゃないんだろうか。
「なんて呼んでたっけ?僕、名前の呼び方こだわってないからさ。
そうだ、なんて呼ばれたいか言ってよ それで呼ぶからさ。」
「なんて呼ばれたいかかぁ~」
よし、これで名前の問題は解決したぞ。あとは何て呼ぶかだが、
テンションが高いこの子の事だからすごい名前で来る気がするな~
「もう、めんどくさいから、適当に思い付いた会長でいいよ」
意外と適当な子だった。
その後会長と少し話した後、僕の家の前で会長が
「あ、もう無隠くんの家だね。ばいばーい」
と言って帰って行った。
「あれ、何で僕の家の場所知ってるんだ?」
不思議な子だった。
「まあいいや。」
会話の内容から会長とは、同じクラスだということが分かった。
「明日から会長絡んでくるんだろーなー。」
少し気が重いが頑張ろう。
そう言いながら僕はまた鶴を折り始めた。
会長の名前は考えてません。