仕事って何
第三話 仕事って何
救急車がきて、おばあちゃんが病院に運ばれた
救急車が来るまでの間、救急車が来てから病院に運ばれるまでの時間、死ぬほど長く感じた
いいから、早くおばあちゃんをなんとかしてくれよ!!!
焦りとどうしようもない感情が混ざって爆発しそうだった
落ち着かない時間が続く、
俺はおばあちゃんに付き添って病院に一緒に行くことに
お母さんがすぐに帰ってくるとのことで
さなと一緒に後から来てくれるそうだ
お父さんも病院に来てくれるらしい
俺は病院の待合室でずっとまっていた
お父さんがきて
俺の頭を優しくポンポンと叩いて
「良くやった、ありがとう」
と言ってくれた
おばあちゃんが死んだわけではないのに
我慢の糸が切れたようにほっとして泣いてしまった
お母さんとさなもくる
樹は習い事の後そのままお母さんの方の実家で
預かってもらってるそうだ
4人になり状況を説明していると
中から先生が出てくる、
おばあちゃんは虚血性腸炎というものらしい
高齢者に多くあるもので安静と点滴ですぐによくなるものらしく、とりあえず良かった、とみんなで安心する
今日は一日入院させてもらえるらしい
「明日お母さんの迎え行けるか?」
「……ちょうどコンサートの練習時間と被ってて難しいかも……タクシーじゃ無理かな?」
家に帰るとお父さんとお母さんが話をする
おばあちゃんがこんなことになってるのに
2人とも仕事、仕事で……!!
疲れも溜まって
「おばあちゃんがきつい思いしてんのに仕事が優先かよ」
いつもは言わない反抗的な言葉で伝えてしまう
「……寛樹、お前お母さんに謝れ」
「竜樹くん、いいの!今のは私が……」
「寛樹!謝れ!!!」
「…………」
「謝れないなら出て行け、頭冷やしてこい」
黙って家を出た
深呼吸しても、冷たい冷気に当たっても
心のモヤがとれない
気付いたらもなの家の近くまで来ていて
21時か……ダメ元でLINEしてみる
[今もなの家の近くにいる、少し出てこれない?]
10分経って返信もなかったので
帰ろうとしていると
「寛樹くん!」
もなが走って出てきた
「…っごめん、遅くに」
「どうしたの?、……なんかあったって顔だね」
街灯しかないけどいつもの眼鏡に少しいつもよりボサボサの髪、いつもと違う楽な格好の部屋着姿だった
急いで来てくれたんだなと申し訳ない気持ちと
嬉しい気持ちが混ざり合う
「おばあちゃんが今日救急車で運ばれて…………」
おばあちゃんが、倒れたこと、
家族のことを少し話すとフッと気分が軽くなった
「……そうだったんだ…」
「なんか話聞いてもらえたら少しスッキリしたわ
ありがとう」
「え、私本当に聞いただけなんだけど笑」
「なんか久しぶりに見たわこの髪の毛も笑」
ぴょんと跳ねてる髪の毛をツンツン引っ張ってみる
「あ!もうやめて、いきなりだったから
ボサボサしてるの、!笑」
「……帰るね、ありがと」
「うん、気をつけてね?」
バイバイと手を振って帰る
家に帰るとリビングのテーブルで
お父さんとお母さんが待ってる
「お母さん、ごめんなさい」
「……寛樹、なんで怒られたか、わかるな?」
「うん」
「もう寝ろ」
「うん」
次の日からお父さんとお母さんは普通だった
お母さんが忙しいのでお父さんが仕事を抜けて迎えにいくことになった
おばあちゃんが帰ってきて、
「絶対、安静!」
とお父さんがおばあちゃんに強く言い放つ笑
次の日曜日にお父さんと俺と樹とさなで
お母さんのコンサートを見に行くことに
お父さんが珍しく隣にこいと言うのでお父さんの隣に座る
「見ろ、ここにいるお客さんみんなが金を払ってきてる
ここの照明、会場の管理、スタッフ、そして演奏者
全てが揃ってないとこのコンサートは成り立たない
お母さんはそんな仕事をしている、わかるか?」
「……うん」
「俺みたいな警察官は俺がいなくても代わりはいくらでもいる、だけどお母さんが抜けたらどうだ?」
「……大変なことになる」
「……だな笑、それがわかってれば大丈夫だな」
コンサートが開演してお母さんが演奏する
お母さん、楽しそうでなんかかっこいい
こちらを見て目が合うと微笑んでくれる
お母さんはすごいな、、
お母さんを見るお父さんを見つめて
なぜかもなのことを思い出す
なんでここでもなが出てくるんだろう
演奏が終わり、会場を出る
樹とさなと俺はお菓子をもらいお父さんと車で帰る
次の日学校でたまたまもなとすれ違う
パッと見つめていると向こうも気付いて
グータッチをした
もうすぐ文化祭が始まる
早くもプログラムが配られ目を通していると
昼休みに中庭でダンスやバンド演奏などがあるみたいだ
へぇ〜と思って見ていると
ダンスのメンバーにもなの名前が
は?と思い何度か見返すけど
あの、もな?違う、もな?半信半疑だったが
当日、それがあの、もなだったことが発覚する
昼休み、中庭に出てダンスの発表を待ち構える
出てきた人数は5、6人ほどだったが
もなが1番目立っていた
生徒会室で会っていた時より少し伸びた髪をアレンジして、いつものメガネではなくコンタクト、
メイクや衣装まで、別人だった
ゴリゴリのヒップホップを踊っていて、
楽しそうな表情で、生き生きとしてて、
目が離せなかった。
あんなにいつもは見た目も地味なのに…
正直、ブッ刺さりまくった
恋の矢が
今まで自覚していなかったこともあり
かなり衝撃だったけど
ギャップにやられたとはこんな状態のことを
言うんだなとむしろ客観的な目線だった
ダンスの時間が終わり、メンバーがステージから捌ける
もなに声をかけようとしたけど
その日は一回も会うことができず、
そのまま文化祭が終わってしまった――――――――




