7 決意
こうして、リサリーは自室へと戻った。
そこで絶句したのは、リサリーだけではない。
先ほどは気が付かなかったが、そこは家探しされたかのように荒らされている。
引き出しが開かれ、服が散乱し、下着が出され、カバンの中の財布も無くなっているようだ。
「……なんてことを」
近くで聞こえた憤る声に、リサリーは目頭が熱くなるけれども、心の中で頭を横に振る。
結局、リサリーの大切なものも、その場では見つからなかった。
そしてそれは、警備兵達から事情聴取を受けている男子生徒のポケットから見つかった。
破損し、透明な袋に入れられたそれをリサリーに見せたのは、外からやってきた警吏だ。
「これは、君の物で間違いないかな」
「はい、私のものです。返してください……」
「すまない、それはできないんだ。これは証拠品だ。捜査が終わった後に、返却することができる」
そう言って、破損したそれは、警吏が持ち帰ってしまった。
リサリーが肌身離さずに大切に着けていた物。
風呂に入るからと言って、外すべきではなかったのだ。
憔悴しているリサリーが当直室の椅子の上でうずくまっていると、ノックが聞こえ、次いでダリアの声が聞こえた。
「リリーベルさん、入っていいかしら」
「……はい」
ダリアは、椅子の上に居るリサリーを見て苦笑した後、その向かいの席に座った。
当直室は、割と広いいい部屋だった。
さすがは、貴族の子女が通う学園の備え付けといったところだろう。
寝台も、1人用のものが一つ、二段になったものが一つ設置されており、飲み物を用意する給湯室やトイレまで内側に設置されている。
その中央に設置された4人掛けのテーブルで、リサリーはダリアから事情を聴かれることとなった。
「つらいことは言わなくていいのよ。ただね、学園としても、あなたからの話も聞いておかないといけないから。何度も同じ話を聞いてごめんなさいね」
ダリアとこうして話をする前に、一応、警吏からの事情聴取も簡単に受けている。
「……こんなふうに、普通に話ができる人が、この学園には居たのですね」
「あら。すごいことを言うのね」
「この学園はおかしい。みんな頭がおかしいです」
「……そう。私はその学園側の人間だから、なんともコメントしがたいけれど」
そう言いながら、ダリアは手に持ったバインダーに、色々なことをメモしていく。
リサリーはそれを眺めた後、ダリアの顔を見た。
ダリアは優しい笑顔を浮かべている。
けれども、その緑色の瞳には、違う色が浮かんでいる。
「――それで、お話はできそうかしら?」
頷くリサリーに、ダリアは安堵したそぶりを見せた。




