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改識機関 ロンデル  作者: Z4n
ロンデル
4/11

第4話 捜索

 期限付きで協力関係となった3人は、早速ファノの仲間の捜索に向かっていた。


「その逸れた仲間は、何人いるの?」


「3人いる」


「その仲間の居場所の目処はついてる?」


 少女の問いにファノは首を横に振る。


「うん。前に少し話したけど、逃げてる最中に的を散らすために、各自で行動することにした。ただ、行動範囲は極力絞って、万が一危機に陥った時のための避難ポイントも事前に決めてある。だからまずはそこに向かう」


 少女は、この広大な貧民街やその周辺を闇雲に捜索するとなると手間がかかると危惧していたが、そこの段取りもファノたちが取り決めていたらしい。


「ねぇ」


 ファノは、2人にずっと聞こうと思っていたがタイミングが合わずなかなか切り出せなかった話題を振る。


「そう言えば君達の名前ってなんなの?」


「名前?」


「暫くは私たちも協力関係になるからお互い知っておいた方がいいと思って」


「そう言えばずっと自己紹介してなかったね」


 少女は思い出したかのように、隣を歩く少年を見る。


 そう言えば、彼の名前も聞いてなかったな。


「私の名前はファノ。門番とのやりとりでもう知ってるかもしれないけど。好きに呼んでいいよ」


 協力関係になったからか、少し砕けた態度で2人に接する。起伏の少ない表情には、少し彼女のマイペースさが映っている。


「私はアキナ。これからよろしくね」


 友好的に自己紹介をする少女とは対照に少年は、顎に手を添え考え込む。


 そう言えば、今まで生きていた中で考えたこともなかった。自分の名前なんてずっと決めてなかったな。何にしよう?


 少年の自己紹介の順番が回ってくるも、少年は口を開くことはできなかった。


 取り敢えず今は、即興でもいいから適当に名乗っとこうかな。


 少年が咄嗟に考えついた名前を名乗ろうとしたその時であった。

 何処からか何かが崩れ落ちるような物音が響いた。


「何の音?」


 気になった少年は、物音がした方へ向かう。


「ちょっと、何処に行くの?」


 少年が真っ直ぐ歩いていると、路地裏から屈強な男が飛び出てきた。その男は、焦ったような、高揚したような息遣いで何かを片手にそのまま走り去ろうとする。


「待て……!」


 その後に路地裏から出てきたのは、とある少年だった。左の頰に少し赤みがかかり、膝頭の部分のズボンが破け擦り傷が見える。息も絶え絶えでまるで必死に抵抗した後のようだった。


「絶対に逃さない……!」


 路地裏から出てきた少年は、唇の端をかみながら痛めつけられた体に鞭を打って大人に飛びつく。


「この!離せ!ガキ!」


「うるさい!さっさと返せ!」


 服にしがみつく少年に大人は何度も殴りかかる。しかし少年は決してその掴んだ手を離すことはなかった。決して怯むことのない少年が睨む先には、大人が左手に握っている袋にある。少年の尋常でない気迫から、少年にとって非常に大切なもので、盗まれたそれを取り返そうと必死になっているのだろう。

 少年は、何度も降りかかる拳を振り払うとその袋に向かって手を伸ばす。


「鬱陶しいってんだよ!」


 しかし、痺れを切らし激昂した大人によって、易々と蹴り飛ばされてしまう。


「ッグ!」


「へ!子供が大人に逆らうもんじゃねぇぜ!こんな身の丈に合わねぇモンぶら下げてよ!」


 地面に倒れ込んだ少年は、歯を食いしばり蹴られた腹部を手で押さえながらも何とか、立ち上がる。その目には、自分の命を懸けてもあの袋を取り戻すという執念が映る。

 それを見た大人は、これ以上付き合いきれないと、逃亡を図る。が、


「へ!あばよ!これはいただ───うッ!」


 振り向く直前に、大人の後頭部に衝撃が走る。突然の不意打ち。意識外からの強烈な一撃によってその大人の意識の糸は、音沙汰もなく切れることとなった。


「大丈夫?タリマ?」


「ファノ!?」


 タリマと呼んだ少年が、大人に対抗しているのを見たファノは脇目も振らず助走をつけて、大人の後頭部に飛び蹴りをかましたのだ。


「随分とボロボロになって……」


「は!こんぐらいなんてことねぇさ。んなことよりさっさとアレを回収しねぇと」


 タリマが袋を取り返しに大人の方に、振り返る。


「はい。これだよね?」


「!?誰だ!」


 アキナが袋を持ってタリマに渡そうと近づくと、見知らぬ者に接近されたタリマは驚いて臨戦形態に入る。そしてアキナが手に持つものを見て、上手いとこどりをされた勘違いしたタリマは怒りを露わにする。


「テメェ!漁夫の利なんて狡い真似を!」


「あっと!急にごめん!」


 アキナは咄嗟に両手を上げ、悪意がないことをアピールするが今の余裕を失ったタリマには効果がないようだ。


「待って!タリマ!落ち着いて!」


 ファノは、アキナに牙を向いたタリマの肩を急いで掴んで制止する。


「何を悠長なこと!」


「彼女は味方だから安心して」


 ファノに宥められたタリマはピタッと動きを止める。そして訝しむように少女をジロリと覗いた。

 少女は、不用意に近づいてしまったことに申し訳なさそうに顔を俯かせる。しかし、下手な言葉を発することで彼の怒りをさらに触発し、事態を混乱させてしまうことを恐れ、ファノに説明を任せることにした。


「何を言い出すかと思えば……味方だぁ?」


「話せば長くなるけど2人とは今、協力関係を結んでる」


 ファノは、2人との出会いから今に至るまで事の経緯を全て説明する。


「お前……!何バカなことを!」


 話を聞いたタリマは決して良い顔をしなかった。やはり初対面でこの複雑な事情を口頭で伝えられただけでは、本質的な状況を飲み込めず信用を得るに至らなかったらしい。


「仕方ないでしょ」


「それにしたって、もっとやりようがあっただろうが!」


「タリマが今納得できていないのも理解できるけど私にとっては、間違いなくこれが最善手だった。もし私たちの計画が全て失敗したら私の責任にしてもいい。だからとにかく今は私を信じて欲しい」


 ファノは当たって真面目に考えた結果であると、タリマに言い聞かせる。その真剣な眼差しと普段と変わらない冷静な態度に感化されたタリマは、ひとまず自身を無理矢理宥めながらも、苛立たしげに舌を打ち2人の方を見る。


「おい!テメェら!もし、妙なこと企んだり仲間に手出したりしたら承知しねぇからな!」


「勿論そんなことしないよ。これからよろしく」


 少女は努めて気さくに振る舞い、タリマに敵意がないことを示す。それを見たタリマは、フンと鼻を鳴らしてアキナから袋を奪い取った。


「それで?タリマの方は、首尾よく行かなかったみたいだけど?」


「……お前ほどじゃねぇよ」


 タリマはファノに対して皮肉げに返すが、その口調は弱く、申し訳なさが表れていた。


「外から追っ手を振り切って、家まで戻ろうとしたのはいいものの、あの金に群がる蛆虫に目をつけられちまったんだよ。矢鱈しつこくてこのザマだ」


 そう言って自分のみっともない姿を見たタリマは、自虐気味に笑う。


「いや、タリマはよく頑張った。自分の責任を全うしようとしてくれたんだから」


「そりゃな。死んでもこれを取り返すつもりだったが、お前が来てくれて助かったよ」


 ファノのねぎらいに対しタリマは、素直に感謝を伝える。性格的に気が強く、他人に対しての当たりが強いが仲間思いな一面もあるのだなとアキナは考える。

 

 これで幸先よく仲間の1人目が見つかった。残るは2人。今回みたいに順調に見つかればいいんだけど。


 そう考えていたところ、タリマが丁度その話題について切り出す。


「んで?他の奴ら探しにいくんだろ?急いだほうがいいぜ。多分あいつらまだ外にいると思うからよ」


 タリマは、靴についた汚れを落とすように地面を軽く爪先で突く。


「俺たちが追い詰められた時、お前が殿を務めてくれただろ?そして追っ手が分散するようにしてくれた。おかげで俺はここまで逃げ切れた。でもあいつらは、回り込まれて街への進路から外れちまったからな。俺もお前もここまで帰ってきたということは、手分けした追っ手も合流した可能性が高い」


「徹底的にマークされて帰還が困難になってるかもってことね」


 ファノは貧民街の向こう側を見るように視線を上げる。少し考え込んだ後、タリマに指示を出す。


「外への探索は私が出る。タリマは、家に戻って休んでて」


「は!?何で───つッ!」


 ファノの言葉に反発するタリマであったが、言いかけたところで頭に激痛が走る。

 さっきまでの興奮状態が収まり痛みが堪え切れず再発したのだ。自身の体の様子を改めて気に留めたタリマは、無力さを覚えながらも大人しく従うことにした。

 その様子を見たファノは優しく語りかける。


「もしかしたら2人が戻ってくるかもしれないから……頼んだよ」

 

「ックソ!俺が同行しても足手纏いか……!」


 不貞腐れたように地面の石ころを蹴り飛ばすと、力なさげに振り返る。


「ハァ……じゃ、頼んだぜ」


 そう言って帰路に着く彼の背中は、まるで萎みこむようだった。


「心配だな」


 アキナは、タリマの今の状態を眺めて一人ごちる。


「確かに。別の輩に襲われたり、もしかしたら報復もあるかもしれない……アキナ。タリマのこと頼める?」


 ファノは、アキナの方を見ると彼の護衛を頼み込む。


「勿論いいけど……」


「こっちは二人で大丈夫。タリマも気は難しいけど、頑固な人ではないから事情さえ話せばわかってくれるはずだから」


 そう伝えられても自分が本当に適任なのか自身のないアキナだったが、去っていくタリマを見て悩む暇はないと判断し、走ってタリマを追いかけていった。


「彼のことは任せて!二人も頑張ってね!」


 振り返り際にそう叫ぶアキナを見届けて、少年らは反対側に歩き出すのだった。


「じゃ、私たちも急ごう」


「こいつはどうするの?カルネスト組の治安維持組織とやらに引き渡す?」


 少年は、倒れ伏した大人の横腹を足で突く。未だグッタリと気絶して目覚める気配がしない。


「ほっといていいよ。犯罪の取り締まりも十分な証拠がないと有罪と認められないから」


「ふーん。ならいいけど」


 少年は、しゃがみ込み男の懐を弄ると財布を引っ張り出す。

 白々しく我が物顔で、自分が身に纏う借り物の外套のポケットにしまうとファノを追いかけていった。


 

 一方、タリマに追いついたアキナは、自身を見て身構えるタリマに事情を説明する。


「なんだよ?」


「君一人で行かせると心配だからって、私を同行させるようにってファノが送り出したんだよ」


「だったら俺の後ろに立たないでくれるか?得体の知れない奴に背後に立たれると、薄気味悪くて仕方ねぇ」


「アハハ……ごめんよ」


 早速警戒心を露わにして、強めの語気を吐かれるもアキナは嫌な顔一つせず返事をする。

 アキナは、自分が彼の護衛に選ばれた理由の一つとして、彼と打ち解ける必要があったからと考えていた。なので、なるべく心証を悪くしないように友好的な態度を示し続ける。


「ファノもどうしてこんな奴なんか……いや、いいさ。護衛って言うからには腕が立つんだろうな?」


「任せてよ。さっきみたいな大人が出てきても、けちょんけちょんにのしてやるからさ」


「口先だけでないといいがね」


 彼はかなり皮肉屋らしく、素っ気ない対応ばかりされてしまう。

 アキナは少々気まずい思いをしながらも、護衛として周りを警戒しながら歩いていた。



 少年とファノは、フードを被り街の裏門までたどり着く。

 ファノは、門番に軽く会釈すると門をくぐり抜ける。

 その道中で貧民街に訪れる人たちと次々にすれ違う。


「仕事帰りだね。多分土木業者だと思うけどそうか……もうそんな時間か」


 洞窟を出て外に出てみれば、空はさっきまでの茜色から深い紺色へと変化している。


「この時間帯だし、完全に日が沈んだら捜索が困難になる。早く見つけ出さないとまずいんじゃない?」


「うん。早急に仲間を探さないと。幸い今仕事帰りの貧民街出身者たちが溢れてる最中だから、外の大人たちも余計出歩きづらくなってる。急いで所定のポイントに向かおう」


 二人は早足に、様々な場所を巡る。ファノの言う所定のポイントは、木々や草花に身を隠しやすい場所や、岩山が集積した見通しの悪い場所、街の外れの見つかりにくい抜け道の先など様々であった。しかし、いずれの場所にもファノの仲間と思しき人物は見当たらなかった。


「まずい。これで最後の隠れ蓑だったんだけど……まさか行動範囲外まで行った?それとも考えたくもないけど……大人たちに捕まってしまった?」


 最悪の可能性を想像したファノは、急激に悪寒が走るのを感じた。どうしようもない不安に駆られ、思わず震えを抑えようと腕を組むように自身を抱きしめる。


「別に本人を探そうとしなくて、いいんじゃない?」


 少年は、このままでは埒が開かないとある提案をする。


「アンタの言う事前に取り決めた場所にいないなら、二人が大人たちに捕まったにしろまだ追われてる最中にしろ、未だに危機的状況にあるかも知れないんでしょ?なら、こっちから姿を現し、大人たちを炙り出して居場所を聞けばそっちの方が楽だと思うけど」


 その提案にファノは言葉を詰まらせる。逡巡の末に自分を納得させるよう頷く。


「……危険だけど、それしかないか」


 ファノは意を決して次の行動に移る。

 あえてフードを取り衆目に晒される道を堂々と歩き始める。

 すると、3人の大人がコッソリと二人の後を尾け始めた。


「うまく釣れたみたいだね。後は、人目のないところに誘い込むだけ」


 ファノは、少年に念を押すように言う。


「私は、家に硬貨を置いてきたから身軽だけど君は違うでしょ?くれぐれもそれ無くさないでよ」


「なら俺の分まで必死に動き回ることだね」


 二人が人気のない場所に入ると、後ろを振り返る。3人の大人はまんまと二人の前に躍り出た。


「チッ!気づかれたか。しかしまさかまだ外を出歩いていたとはな」


「関係ねぇさ。わざわざこんなとこにやってきたんだ。お前たちを引っ捕らえて私たちの報酬を返してもらう!」


 ファノは、大人たちに顔が割れてる上、相当恨みを買ってるらしく一人の大人は少年より真っ先にファノに襲いかかる。


 ファノは、その襲いかかってきた大人を余裕の表情で迎え撃つ。次々に振り下ろされる拳を軽々躱し切ると、攻撃が大ぶりになったところを見計らい鳩尾にストレートを叩き込んだ。


「ぐぇ!」


 想像以上の衝撃と激痛に大人は、耐え切れず地面に膝をつく。


「リザン!よくもやってくれたな!」


 仲間が苦悶の表情を浮かべて、地面に這いつくばってるのを見て激昂した大人が追撃を行う。しかしあまりに実力がかけ離れてあるせいで、呆気なくファノに懐に潜られてしまい先ほどと同じように同じように鳩尾を強打され、相手は呻き声を上げることもなく失神してしまう。


「ふ、二人とも……」


 取り残された女は信じられないものを見たかのように、倒れ伏した二人の仲間を見る。しかし無情にも子供相手に二人の大人が情けなくダウンさせられてしまったと言う事実に変わりはない。

 

「全員私に恨みがあるみたいだね。心当たりはあるし、そちらには悪いと思ってるけどこれ以上の被害を被りたくなかったら、大人しく私の質問に答えてほしい」


「ガ、ガキが!調子に乗って……!」


 女は威勢よく口を開くも、目の前の相手の実力をまざまざと見せつけられた後で、彼女に向かって行く勇気は湧かなかった。

 そんな臆病な女は、ファノの後ろに立つ少年に目線を映す。


 女はやぶれかぶれに一か八かをかけて飛び出す。ファノは、内心ため息をつきながら迎撃のため構えをとる。

 女がファノの前まで走ると、ファノは蹴りの間合いを取るため一歩下がる。そしてその動作を途切らせぬまま、足を振り抜こうとしたところで女は、突如立ち止まって方向転換しファノの横を通り過ぎて行く。


「あ」


 自分が標的になっていると直前まで思い込んでいたファノは、自分の横を通り過ぎる女を見てすぐさま意図を理解する。同時に先入観とそれに伴った油断を反省しながら、少年の方を振り返る。


「喰らえ!」


 ファノに挑んでも勝てないと悟った女は、それでも子供相手に逃げ出す屈辱と仲間の仇を討ちたいという一種の自己陶酔から退避できずにいた。後ろに立つ少年を目にした時、せめて一矢報いる為にと勝ち筋が残されている少年に敵意を向けたのだ。


 少年は、飛びかかるように繰り出された拳を掻い潜って躱すと相手との密着状態から相手の右の脇腹にフックを突き刺す。


「ウッ!」


 そのまま悶絶して下がった顎にアッパーを叩き込むことで相手は脳震盪を起こし意識を失った。女は慣性の勢いが残ったまま地面に追突する。


「ありがとう。手間かけさせた」


「ちゃんとしてよね」


 最後の一人が倒れ伏したその瞬間、ファノの背後に忍び寄る影。

 しかしファノは、事前に察知できていたようで、その人物に足払いをかけるとあっという間に無力化する。 

 最後の一人が倒れた際、気絶をしたふりをしていた仲間がファノがこちらを視認してないと判断したその時に襲いかかったのだ。

 しかし、それはファノが情報を聞き出す為にあえて一人だけ手心を加えたに過ぎなかった。


「クッソ!なんなんだお前!私たちから報酬を奪っといて!」


「確かに私から奪われた報酬を取り返す正当な権利はあなたにあるかもしれないけど、そんなものこの街じゃ通用しない。あなただってそれを知りながらもここにいるはず。だったら弱いから悪いんでしょ?」


 少女にあっけらかんと突き放された大人は、反発する気概も失せ、もう打開する術はないと項垂れる。


「私の仲間二人を見てない?」


 せめてもの抵抗としてファノの質問に口を噤む女。


「答える気がないならもう少し痛い目を見てもらうけど?仲間がどうなってもいいの?」


 ファノは大人に一歩歩み寄り、威圧的に見下す。


 ファノの冷酷な脅迫に大人は、恐る恐る顔を上げる。そして自分自身の情け無さに苛まれながら口を開く。


「……同じくお前たちから報酬を横取りされた連中に追われてるよ」


「どこで目撃したの?」


「あっちの方角だ」


 そう言って女がある方角を指で指し示す。その方角を見たファノは、険しい表情で目を細める。


 明らかに指定した行動範囲から逸脱している。何か想定外の出来事でもあったのか……?


「まさか嘘ついてないよね?」


「は!この後に及んでそんなセコイことはしない」


「そう。じゃ、ご苦労」


 尋問により聞きたいことを引き出せたファノは、今後の障害とならないように女の顎を掌底で狙い撃ち失神させた。


 今の発言が罠の可能性もあるけど……考えても仕方ない。


「行こう」


 2人は、ぴくりとも動かない大人達を置き去りにし、指し示された方角に向かって走り去っていった。




 


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