エピローグ
人は生きている。そしてどんな人にだって青春が、いつだって青春が待っている。初夏の少し暖かくて新緑が際立って見える。そんな青春が。―ムクゲー
目の前の扉を開けると体育館中に、響く声が飛び交っていた。
「こっちだ。」「引き返せ、引き返せ。」「そのまま、突っ走れ。」「負けんな、邪魔しろ~」
お互いのチームが一歩も譲らない、接戦だった。スポーツタイマーが試合終了の合図を知らせるまで、止まることなく素早い手さばきで車イスを動かしている。圧巻だった。見たこともない世界だった。僕は、高校二年の春、車イスバスケットボールに出会った。好奇心がそそられる最高のスポーツに、出会ってしまった。
もともと車イスバスケがあることは知っていたし、車イススポーツの中でも有名であることも、知識として頭に入っていた。でも、僕自身が車イスバスケットボールに夢中になるなんてこの時は、思ってもいなかったんだ。
「なーなー浩介、車イスバスケットボールのボランティア一緒にいかね?俺のとーちゃんの知り合いがやってるらしいんだけどさ、ボランティアの人手がいなくて困ってんだって~。」放課後の合図を知らせるチャムが鳴り響く頃、友人の拓磨が誘ってきたのが始まりだった。
皆様にとって今日が心安まる1日となりますように。