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準備

 さて、それからの二か月間はなかなか忙しかった。お母ちゃんは毎日せっせと衣装を作っていた。とは言え一から作るのは時間的に無理だから(ただお姉ちゃんの衣装だけは丸々お手製)、基になる適当な既製品を選んできてそれを加工することにした。それをお母ちゃんはお父ちゃんの昔買ったアニメ雑誌の別冊みたいなのを見ながら器用に作って行った。車道の布地屋さんからどっさり布生地を仕入れて来るとそれにすいすいと線を引いて裁断していく。しかも内側に保冷剤を入れるためのポケットまで付けているようだ。設計図も何もない、なのに見事に仕上がって行く。実に大したものだった―――確かにそう、大したものなんだけど、でもこんなにすごいんなら職業にすればよかったんじゃなかろうか。

 お姉ちゃんも、花嫁修業になるであんたも手伝いんよと強要され、ぶつぶつ言いながらも体験クラブ活動から帰宅すると、お母ちゃんに教えてもらいながら衣装作りに精を出していた。けれど折角の水泳部への体験入部もあまり効果は上がっておらず、結局は日焼けサロンで帳尻合わせというオチになりそうだった。お兄ちゃんはシャアのヘルメットを作らされることになり、ほんなもん自分でせんとかんわ、なんてぼやきながらも部活動やバイトから帰ると夜遅くまでせっせと励んでいた。おまけにお母ちゃんからキシリア・ザビのヘルメットの追加注文まであった。お母ちゃん、始めはヘルメットなんかいらんわと言っていたのに、例のアニメ雑誌を毎日見ているうちに、やっぱりあった方がいいじゃんか、ということになったんだ。お兄ちゃんは、一つも二つも一緒だわ、ついでだでええよ、と快く引き受けていた。案外気のいい男だ。

 ところが言い出しっぺのお父ちゃんはほとんど何もしようとしない。お兄ちゃんから、やることないんなら手伝ってちょぅでぃあすゎせ、とかやんわりと注意されても、いや俺はそういう工作は苦手でな、と逃げる。あんた物作りの仕事をしとらっせるんでしょぅ、と追撃を受けても、なに、物作りのための設計とかが仕事だから、とかわす。そうしてさっさと逃げてしまうんだから、やっぱりこちらは相変わらず怪しからん男だ。

 と、お父ちゃんの悪口を言っていたら天に唾することになる。なにせ僕自身、何もしていないのだから。黒子の衣装作りはお母ちゃんにやってもらうしかないし、ハロの模型製作はそんさんの手にゆだねられている。ただこれが来ればその操作の練習と称して、自分も一生懸命準備しているんだというアピールができるだろう。だから申し訳ないけどそんさんに頑張ってもらうしかない。だからそれまでは、僕はお父ちゃんと同じ穴の狢ということなるわけだった。――――ハロの模型はその後案外早く出来上がって、そんさんがわざわざ持って来てくれた。出来栄えは素晴らしく、元はアニメのキャラなんだけど、まるで本物のようだった。ただし操作は難しく、アピールとかなんとか言うより、本当に真面目に練習しなくてはいけなくなった。けれどその代わり、お父ちゃんと同居していた穴から目出度く脱出することができた。


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