プロローグ5
剣とは一悶着あって今は鞘に収めて距離を取っている。
まあ、その鞘に収める動作ですら一苦労であり、目の前にいるタチ悪女神の笑いのネタにされたのだが、そこは置いておこう。
「では、次にスキルの付与です。」
この女神はどんな心理で丁寧な言葉を発しているのだろうか。とかいうのは置いておこう。
「一応、確認。スキルってどういうもの?」
「個人特有のものであらゆる場面で活用できる力となります。あちらの世界では魔法は当然のものとして存在する上に、生まれつきスキルも個別に備えている人間が多く存在します。」
「なるほどね。俺はその生まれつきのスキルが今、貰えるというわけね。」
そう言って納得していると、女神は俺を指差した。
急に指を差してきたことに困惑していると、どうやら俺ではなく俺の「後ろ」を差していたようで、俺は後ろに振り返った。
「な...なんだこれ...?」
俺の後ろにあったのは虹色に光り輝く箱...いや、アイテムボックス...?
箱には「?」が描かれており、某レーシングゲームに出てくるような...。あれ?なんか箱ボヤけてね?
「大人の事情です。」
女神が俺の心を読んでなのか、すかさずカバーを入れてきた。
「まあ、いいか。」と俺は流しながら女神が「アイテムボックスを殴れ」というので、思いっきり殴ってみた。
「オラ!」
パリン!と箱が弾けて、俺の頭の上でクルクルと絵が回り始めた。絵は、何か動作を連想できるものが影のような形で黒塗りで描かれており、それをただ俺は見つめていた。
しばらくして俺の頭の上ピッタリで一枚の絵が止まった。
絵は...右手で何か丸いものを掴んでいるような...。
「スキル1つめ。貯蔵です。」
「ん?貯蔵?貯めておくことがスキル?一体どう使うんだ...?」
「それくらい自分で考えてください。」
「え...冷た...」と思ったが「あ...こいつそういうやつだった。」と1人で納得。
とりあえず貯蔵というスキルだが...これは当たりなのかハズレなのか...というか...
「そういえばスキル1つめって...。」
「はい、私からスキルをもう一つ差し上げます。」
といってベルスースは自分の手から、先ほどのような動作の書かれた絵を生成した。
一人でに俺の方に飛んできた絵は、俺の中に入っていった。
それは丸い物体が大きな穴に入り込んでいくような絵。
どういう意味だ...?
「2つ目のスキルは収納です。」
「え、貯蔵に続いて収納?何か似すぎてない?」
「では、可哀想で愚かなあなたにはこれだけ教えてあげましょう。」
腹立つ。
「先ほどの剣を、左手で触れてみてください。」
言われるがままに剣に触れる。
「そのまま、まばたきを素早く8回行ってください。」
「え?まばたき?」
「早くしろよ。」
ついに本性表したな。この女神。なんて思ったが、言われるがままに、まばたき8回。
1,2,3,4,5,6,7...8。すると...
「え...?!剣が消えた。」
なんと、先ほどまで触れていた剣が消えたではないか...!
「次に左手を開いた状態で先ほどの剣を連想しながら8回まばたき、はいどーぞ。」
言われるがままに1,2,3,4,5,6,7...8。
ガッシャーン!!
「え?!え?!さっきの剣が出てきた!!!!」
鞘に収まったバカでかい剣が再び目の前に...。
「それが収納です。限界はありますが、大きいものや重いものなどを自らのスキルで生み出す空間に入れることができます。」
「すげー便利じゃねーか!」
と言って感動も束の間。
「wwwこれで大剣引きずらずに冒険できますねwww」
この女神への天罰はよ。